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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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追い詰める影

 路地を抜けても、足は止めない。


 ミリアは前を見る。


 迷いはない。

 最短を選んでいる。


 背後。


 遠い。


 だが、確実に近づいてくる。


 車の音。


 複数。


 速い。


 タケトシが短く言う。


「この先、開ける」


 ミリアは頷く。


 言葉はいらない。


 わずかに速度を上げる。


 角を曲がる。


 視界が開ける。


 広い通り。


 光が強い。


 その瞬間。


 前方で音が重なる。


 エンジン。


 急停止。


 ドアが開く。


 人影が出る。


 挟まれる。


 ミリアは止まらない。


 前へ出る。


 タケトシが低く言う。


「右に抜ける」


 ミリアは軌道をわずかに変える。


 正面衝突を避ける。


 だが――


 横から影が出る。


 近い。


 銃口が向く。


 撃つ前に。


 ミリアが踏み込む。


 距離を潰す。


 腕を押し上げる。


 銃口が逸れる。


 発砲。


 音が跳ねる。


 当たらない。


 そのまま崩す。


 一人、落ちる。


 止まらない。


 次。


 後ろから来る。


 振り返らない。


 足を引く。


 位置をずらす。


 腕を取る。


 投げる。


 地面に叩きつける音。


 ミリアは走り続ける。


 止まらない。


 止まらない動きを選ぶ。


 それが、一番生きる。


 前方。


 残りが構える。


 距離がある。


 だが、撃たせない。


 ミリアは踏み込む。


 一気に詰める。


 速い。


 対応が遅れる。


 懐に入る。


 崩す。


 連続。


 倒れる。


 音が途切れる。


 だが、終わらない。


 背後。


 さらに来る。


 数が増えている。


 ミリアは止まらない。


 振り返らない。


 ただ前へ。


 その時。


 横から手が伸びる。


 引かれる。


 タケトシ。


 進路が変わる。


 狭い路地。


「こっちだ」


 短い指示。


 ミリアは従う。


 迷わない。


 足音が反響する。


 距離が近い。


 追いついてくる。


 だが――


 狭い。


 数が活きない。


 タケトシが止まる。


 一瞬だけ振り返る。


「ここで削る」


 ミリアは頷く。


 短く。


 それで十分だった。


 先頭が飛び込む。


 ミリアが前に出る。


 迎える。


 動きは最小。


 無駄がない。


 腕を取る。


 崩す。


 後ろが詰まる。


 連携が乱れる。


 その隙。


 ミリアが動く。


 最短で。


 一人。


 また一人。


 落ちる。


 呼吸は乱れない。


 焦らない。


 確実に削る。


 タケトシが横から動く。


 補う。


 隙を埋める。


 二人の動きが重なる。


 ぶつからない。


 噛み合う。


 最後の一人が止まる。


 迷い。


 恐れ。


 その一瞬。


 ミリアが踏み込む。


 終わる。


 静寂。


 短い。


 だが、完全だった。


 ミリアは動かない。


 呼吸を整える。


 視線は前。


 まだ終わらない。


 分かっている。


 タケトシが言う。


「……次が本隊だ」


 低く。


 確信を持って。


 ミリアは小さく息を吐く。


 恐怖はない。


 ただ、準備する。


「……行く」


 短く言う。


 迷いはない。


 二人は再び動き出す。


 追われながら。


 だが、逃げているわけではない。


 選んでいる。


 次の場所を。


 次の戦いを。

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