表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第4章 蝿の王女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
130/131

見えない場所

警備が増えた。


 廊下の角。


 階段の前。


 面会室へ続く通路。


 昨日まではなかった人影が、そこに立っている。


 職員たちの足音も増えていた。


 建物全体が少しだけ張り詰めている。


 ミリアは面会室へ向かった。


 タケトシが隣を歩く。


 ノアは少し後ろで端末を見ている。


 面会室の前で。


 タケトシが足を止めた。


「無茶はするな」


 ミリアは小さく頷く。


 扉を開ける。


 ユナは机のそばに座っていた。


 けれど。


 今日は落ち着かない様子だった。


 膝の上で手を握っている。


 白くなるほど強く。


 ミリアはいつもの場所に座る。


 少し離れた距離。


 ユナが顔を上げる。


「……人、増えた」


 小さな声。


「うん」


 ユナは少し黙る。


「何かあった?」


 ミリアは考える。


 嘘はつきたくない。


 でも。


 全部を話すこともできない。


「外を見てる」


 短く答えた。


 ユナは少しだけ眉を寄せる。


「私を?」


 ミリアは頷かなかった。


 首も振らなかった。


「まだ分からない」


 その答えに。


 ユナは俯く。


 紙コップの水面が揺れている。


 震える指先が触れているからだ。


「……見つかる?」


 小さな声だった。


 ミリアは答えられない。


 分からないから。


 だから。


「今は」


 一度言葉を切る。


「ここにいる」


 ユナは顔を上げる。


 ミリアは視線を逸らさない。


 それ以上は言わなかった。


 ユナも聞かなかった。


 廊下から足音が聞こえる。


 ユナの肩が跳ねる。


 ミリアは動かない。


 近付かない。


 ただ。


 そこにいる。


 しばらくして。


 ユナはゆっくり息を吐いた。


「……そこにいて」


「うん」


 静かな返事。


 それだけで十分だった。


 部屋はまた静かになる。


 雨音だけが窓を叩いている。


 ミリアは何気なく窓の外を見る。


 灰色の空。


 濡れた庭。


 誰もいない。


 それなのに。


 ほんの一瞬だけ。


 誰かの視線を感じた気がした。


 振り返っても。


 そこには誰もいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ