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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第4章 蝿の王女

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残された足跡

面会が終わったあと。


 ミリアは廊下へ出た。


 雨音はまだ続いている。


 窓の外は暗い。


 昼なのに。


 夜のような空だった。


 タケトシが壁にもたれている。


 腕を組み。


 難しい顔をしていた。


「終わったか」


 ミリアは頷く。


 ノアが静かに近付く。


 手には一台の端末。


「調査結果が届いた」


 画面を開く。


 映し出されたのは山の写真だった。


 雨でぬかるんだ地面。


 踏み荒らされた草。


 折れた枝。


「ユナが保護された場所だ」


 ノアが言う。


「広い範囲に足跡が残っていた」


 タケトシが画面を見る。


「複数か」


「少なくとも四人」


 ノアは写真を切り替える。


 同じ方向へ続く靴跡。


 途中で消え。


 また現れる。


 誰かを探すように。


 山を歩き回った跡だった。


「子ども一人を探すにしては」


 タケトシが低く言う。


「人数が多すぎるな」


 ノアは頷いた。


「それだけじゃない」


 さらに画面を送る。


 木の幹に残る浅い傷。


 刃物で刻まれたような痕。


「この傷も見つかっている」


 ミリアは黙って見ていた。


 胸の奥が少しだけ冷える。


 ノアは端末を閉じる。


「断定はできない」


「でも」


 一拍置く。


「普通の失踪事件じゃない」


 廊下が静かになる。


 ユナが言っていた。


『戻される』


 震えた声。


 怯えた目。


 眠れない夜。


 靴音。


 全部が繋がり始めていた。


 タケトシは短く息を吐く。


「目的はまだ分からない」


 ノアも頷く。


「だから調べる」


 ミリアは黙っている。


 拳を握ることも。


 走り出すこともしない。


 ただ。


 面会室の扉を見る。


 その向こうにユナがいる。


 まだ全部は話せない。


 だから。


 待つしかない。


 話せる日まで。


 雨はまだ降り続いていた。

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