証明
サクが消える。
次の瞬間には。
目の前だった。
速い。
ミリアは反射で腕を上げる。
衝撃。
骨が軋む。
身体が後ろへ押される。
床を滑る。
警報が鳴る。
赤い光が流れる。
サクは追ってこない。
立ったまま。
静かに見ている。
「弱くなった?」
穏やかな声。
ミリアは立ち上がる。
腕が痛い。
でも。
まだ動く。
「……違う」
息を整える。
サクが少し笑う。
「じゃあ」
一歩。
踏み出す。
「証明して」
床が砕ける。
今度はミリアが動く。
低く。
速く。
懐へ潜る。
拳。
腹。
肘。
連撃。
サクは躱す。
でも。
全部ではない。
拳が肩を掠める。
サクの目が少しだけ動く。
「へえ」
初めてだった。
感心したみたいに。
ミリアは止まらない。
追撃。
でも。
次の瞬間。
サクの膝が腹へ入る。
呼吸が詰まる。
身体が浮く。
後退。
距離が開く。
強い。
やっぱり。
強い。
その時。
タケトシが撃つ。
発砲音。
三発。
連続。
サクが後ろへ跳ぶ。
弾丸が床を穿つ。
「よそ見してんじゃねえ」
タケトシが前へ出る。
銃口を向ける。
サクは少し首を傾げた。
「頑張るね」
「うるせえ」
再び発砲。
サクは走る。
速い。
壁を蹴る。
着地。
死角。
タケトシの横。
ナイフが閃く。
タケトシが受ける。
火花。
後退。
だが。
崩れない。
「ミリア!」
叫ぶ。
「後ろ見ろ!」
ミリアが振り返る。
子供たち。
震えている。
泣いている。
島の日々が重なる。
違う。
今回は違う。
まだ終わっていない。
まだ失っていない。
サクが見る。
静かに。
楽しそうに。
「その顔」
少し笑う。
「やっぱり綺麗だ」
ミリアは前へ出る。
一歩。
子供たちを隠すように。
「……違う」
サクが目を細める。
ミリアは構える。
もう迷わない。
「私は」
小さく息を吐く。
「ここにいる」
短い言葉。
それだけだった。
でも。
十分だった。
サクの笑みが深くなる。
本当に嬉しそうに。
まるで。
待っていた答えを聞いたみたいに。
羽音が響く。
地下施設の空気が震える。
そして。
二人は再びぶつかった。




