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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第4章 蝿の王女

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証明

サクが消える。


 次の瞬間には。


 目の前だった。


 速い。


 ミリアは反射で腕を上げる。


 衝撃。


 骨が軋む。


 身体が後ろへ押される。


 床を滑る。


 警報が鳴る。


 赤い光が流れる。


 サクは追ってこない。


 立ったまま。


 静かに見ている。


「弱くなった?」


 穏やかな声。


 ミリアは立ち上がる。


 腕が痛い。


 でも。


 まだ動く。


「……違う」


 息を整える。


 サクが少し笑う。


「じゃあ」


 一歩。


 踏み出す。


「証明して」


 床が砕ける。


 今度はミリアが動く。


 低く。


 速く。


 懐へ潜る。


 拳。


 腹。


 肘。


 連撃。


 サクは躱す。


 でも。


 全部ではない。


 拳が肩を掠める。


 サクの目が少しだけ動く。


「へえ」


 初めてだった。


 感心したみたいに。


 ミリアは止まらない。


 追撃。


 でも。


 次の瞬間。


 サクの膝が腹へ入る。


 呼吸が詰まる。


 身体が浮く。


 後退。


 距離が開く。


 強い。


 やっぱり。


 強い。


 その時。


 タケトシが撃つ。


 発砲音。


 三発。


 連続。


 サクが後ろへ跳ぶ。


 弾丸が床を穿つ。


「よそ見してんじゃねえ」


 タケトシが前へ出る。


 銃口を向ける。


 サクは少し首を傾げた。


「頑張るね」


「うるせえ」


 再び発砲。


 サクは走る。


 速い。


 壁を蹴る。


 着地。


 死角。


 タケトシの横。


 ナイフが閃く。


 タケトシが受ける。


 火花。


 後退。


 だが。


 崩れない。


「ミリア!」


 叫ぶ。


「後ろ見ろ!」


 ミリアが振り返る。


 子供たち。


 震えている。


 泣いている。


 島の日々が重なる。


 違う。


 今回は違う。


 まだ終わっていない。


 まだ失っていない。


 サクが見る。


 静かに。


 楽しそうに。


「その顔」


 少し笑う。


「やっぱり綺麗だ」


 ミリアは前へ出る。


 一歩。


 子供たちを隠すように。


「……違う」


 サクが目を細める。


 ミリアは構える。


 もう迷わない。


「私は」


 小さく息を吐く。


「ここにいる」


 短い言葉。


 それだけだった。


 でも。


 十分だった。


 サクの笑みが深くなる。


 本当に嬉しそうに。


 まるで。


 待っていた答えを聞いたみたいに。


 羽音が響く。


 地下施設の空気が震える。


 そして。


 二人は再びぶつかった。

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