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煌彩  作者: ヒラ
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9/33

9話

今日は鶴ヶ城を目指して大体十一時くらいに出発した。

「昨日の最後入ったBAR良かったね」  

「人が温かかったね」

「あういう雰囲気大好き」

「なんかわかるよ。旅先で人の温もりに包まれる感じ、すげー良いよね。あの旅先でしか味わえない感じ」

 僕達は城に向かうまで昨日楽しかったことや、嬉しかったこととか、のんびり話しながら車を走らせた。ふと横を見ると菜摘は昨日からずっと笑顔だった。

久しぶりの旅行っていうのもあるかもしれないが、好きな人とどこか遠くの街に行って遊ぶのは聞いただけでもワクワクするのに実際しているんだから楽しくないはずがない。菜摘の笑顔な横顔を見て僕も気づいたら自然と笑みが溢れていた。


 冬の鶴ヶ城は迫力が凄まじかった。雪に覆われた大きな建物というだけでも迫力があるのに晴れていたおかげか照らされ方が映画のワンシーンに出てきそうな雰囲気で心が躍った。中学、高校と研修旅行や修学旅行という名目で歴史建造物を見た時には沸かなかった感情が今溢れ出す形で沸いている気がした。

 着いた時の興奮は程々に、とはいっても一時間近く興奮していたが、そろそろ内装を見たくなり料金を支払い中に入った。

 内装は一層から五層までのある城でざっくりと、一層から三層までは城の魅力や戦争の紹介、四層は先人たちの紹介、五層が昔の風景を知り、更に上から眺望ができる形となっていた。昔から歴史教科は暗記することしか頭になかったが、一つ一つの歴史があり詳しく記載されている文を見ると、その時代の背景やその頃生きていた人たちのことを詳細に記されていて、城巡りや寺巡りが趣味ですって言う人を小さい頃は何が面白いんだと思っていたけど、今なら少しわかる気がした。

それでも、なんだかんだ言っても頭で理解するより視覚を使って楽しむ方が全然好きなのは変わりそうになく、一番楽しかったのは五層からの眺望だった。

高いところから一気に街を見下ろせるこの感じは昔から好きだ。旅先の展望台があったら必ず見てしまう。

 鶴ヶ城からの眺望で見た広がった街並みの景色は雪も相まってとてつもない美しさだった。菜摘も目を通すなり感動していた。

「優弥くんすごいよすごい綺麗。本当にすごい」今の一瞬で何度すごいと言ったのだろうか、菜摘のテンションが上がって自分でもどう伝えていいのか分からず結局すごいを連発したと言うことは容易に想像できたので吹き出してしまった。

 城を見るだけで三時間も楽しめるなんて思っていなかった。時刻はすっかり昼を過ぎ十五時を周っていた。もはやおやつの時間だ。変な時間にご飯を入れると体のリズムが狂うからなるべくしたくはなかったが、僕も菜摘も空腹なのはお腹の音が同時になった時点で隠しきれていなかった。少し早いけどご飯を食べに行こうと菜摘の方から言ってくれたので、元々行く予定だった喜多方ラーメンがある方へ車を走らせた。

 店に着き食券を買い席に着く。十五時の店内は貸切状態だった。僕達しかいないからラーメンはすぐに届いた。喜多方ラーメンはもちもちしてて独特な食感だと思ったが、これはこれで美味しいなと思いながら食べた。でも、正直東京に有名なラーメン屋はいくつもあり今まで食べた中で一番美味しいとまでは言えなかった。菜摘も同じ感想だったらしい。

 二人ともお腹が満たされ早々に店を出た。

まだ日も落ちていない空を見上げ僕達は、「せっかくだからドライブしよう」と言う僕の提案により、未知の土地でマップを開かずのんびり車を走らせた。その間も僕達はたわいもない会話で盛り上がった。

「お城、すごかったね」

「本当にね、冬に来て良かった」

「でもラーメンは東京美味しいとこ多いから凄く美味しいって感じじゃなかったね」

「期待し過ぎてたのもあるかもね」

「期待し過ぎない方がいいね。何事も」

 いつもの何気ない会話。ああ、好きだなあ。ふと溢れそうになる言葉を唾液に変えて飲み込む。僕はあまり好き好き言葉に出したくない。若い僕のポリシーなんてとてつもなくちっぽけなんだろうけど言葉を安く使いたくないと昔から思っている。本当に伝えたい時、いつも言っているからという理由で流されたくないのだ。言葉には発した側も聞く側も大小あるが何かしらの影響があると考えてしまう僕は、昔から返答がみんなより遅くなってしまう。そんなことを気にせず楽しく話せる菜摘への想いは付き合ってからも増すばかりだ。

 冬の日没は早く車を小一時間程走らせたところで夕陽が見えたのでコンビニで休憩を挟みホテル方面へと車を走らせた。

 二泊目のパセオ通り、飲屋街は昨日と同じか、それ以上の熱量を感じる。僕達は昨日教えてもらった飲み屋へと足を運ぶ。確かに勧めようと思うほどの美味しさの一品料理がテーブルに並ぶ。特に馬刺し、ほっぺが落ちそうなほど美味しく感動した。美味しい料理に美味しいお酒、僕達はたらふく飲んで二軒目は昨日と同じBARへと足を運んだ。マスターに昨日おススメしてくれた店に行ったことを言うとすごく喜んでくれてお酒を一杯サービスしてくれた。一軒目の店はマスターの友達が経営している店らしく、すごく人気なんだとか。昨日の常連さんも何人かいて二軒目も昨日同様、いや、それ以上に盛り上がっていた。

世間はクリスマス。僕達の一年目のクリスマス記念日は温かい人たちに囲まれて終わりを迎えた。

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