8話
お互い高校を卒業する少し前に免許を取っておいてたから、東京でレンタカーを借りて交互に運転しようと決めて向かった。
二人で話し合った結果、クリスマスの日中の道路は混むだろうと予想して夜に家を出た。普段は公共交通機関しか利用しない僕達にとっては、二人だけで移動するのはなんだか新鮮でワクワクした。運転中僕達は車の中で好きな音楽を流し合った。
僕は一曲目に 「L'Arc〜en〜Ciel」の 「Drivers High」を流して深夜とは思えないノリノリな曲でスタートした。
菜摘は「渋くてかっこいいね」と褒めてくれて嬉しかった。
菜摘は「LOVEPSYCHEDELICO」の「I will be with you」を選曲して、凄く夜が似合っていてなんだか不思議な世界に連れて行かれるような感覚だった。
お互い親の世代の曲に影響を受けていて、最近の曲はあまり聴いていないのが分かり、それもなんだか少し嬉しかった。
「優弥くんは旅行いつぶり?」運転中、急に菜摘は聞いてきた。
確かに思い返せば数年は行ってない。高校二年生が最後だった気がする。ちょうどそのくらいの時期に反抗期が一年ほどきて、受験勉強を終えて、そのまま進学して逃げるように僕は家を出ていたのだ。
一人暮らしを始めたからは、旅行なんて考えてる暇が無かった。今は一人暮らしを始めて一年も経っていないのに、親のありがたみを感じた時期が何度もあって普通に話すし、仲も元通りだ。だけど、恩返しはできてないなと思った。
僕は、今度バイトで貯金して近場の温泉くらいしか出せないけど少し両親に恩返しできれば良いなと思った。
「全然行ってないよ、高二の時が最後だった気がする」
「私もそのくらいかも、毎年言ってたんだけど高校三年生から受験勉強忙しくて行かなくなって以来だなあ」
なんだか似ているなと思ったけど、大体みんなそうだよなと変に納得した自分がいた。
「菜摘は実家帰った時どこか行かないの?」
「んー行かないかな。なんか、帰る場所っていうかゆっくりしたいんだよね。友達と少し会って親と近況話せるだけで満足しちゃうからさ」
「ふーん、そういうもんなんだね」
「うん、そういうもんだよ」
車の中でも変わらず何気ない会話が続いていく。この何気ない時間が最近は慣れてきたけど僕の中でずっと大切にしていたい、そんな時間。ずっとこれが続けば良いのにな。
パーキングで何度か休憩を挟んでも朝七時頃には福島県へ着いた。まだ結構時間に余裕があるのを確認してから僕達は、朝マックに行こう、と話が決まり向かった。朝マックを食べ、マックに着いてからは小一時間程休み、朝イチであぶくま洞へ向かった。
冬の福島は東京より寒く感じる。多分結構上まで来たからだと思うが、東京に馴染んでいる体で他県の寒さに包まれるといろんなところが縮みそうだ。あぶくま洞の入場料金を支払い入場しててまず驚いたのが温度だ。すごい綺麗な空間なのはグーグル先生で少しカンニングしてしまっていたから、それよりも先に暖かい空間に驚いた。
後で調べてわかったのだが、年中温度が15度ほどに抑えられてて、夏は涼しく冬は少し暖かく感じるらしい。調べた中でもなかった冬限定のイルミネーションは、凄く幻想的で神秘的だった。菜摘はこの空間に癒されたのか終始顔がニヤけてて可愛かった。写真もたくさん撮って後で現像して二人で見返そうと思った。
一通り見歩き敷地内を散策していると、ワインが売られていた。二人とも飲んだことが無かったから、特別な日に一緒に飲んでみたいねということで一本だけ買った。
あぶくま洞から出て、外の空気に頬が痛みを感じて僕達は車へ逃げ込んだ。ホテルに着いたのは一時くらいでチェックインまでまだ時間があったため近くの飲食店で昼食を摂った。
「あぶくま洞すごかったね」
「神秘的だったね」
「冬なのが良かったのかもね。イルミネーションすっごい素敵だった」
僕達はご飯を早々に食べ、二人で小さな画面の中に映る写真を見る。イルミネーションをバックに撮ったツーショットが二人の一番のお気に入り写真になりお互いの待ち受け画面になった。
飲食店を出て良い時間になっていることを確認し、荷物だけ入れるためにチェックインを済ませた。外に出てから僕達は適当に雑貨屋や服などいろんな店を周った。
雑貨屋ではお互いにということで可愛らしいキーホルダーを購入し、スマホカバーの下横にあるストラップとしてつけた。
まだ結婚なんてわかんないし、考えることはもう少し先なんだろうけど、お揃いの物を身につけた時、少しだけ結婚して生活している僕達の姿が見えた気がした。
服は僕は古着が好きで、菜摘は綺麗めカジュアル系の服が好みなのを、今回の旅行で知った。せっかくだしとお互いの気になった服屋に入り、こういうのが好きなんだとお互い気に入ったのを見せ合った。流石に予算も考えて今回は買わなかったが、いつかの記念日やイベントの時にプレゼントしようと思った。
店もある程度周って気づいた時には日は沈み飲み屋が盛り上がってきていた。旅行だし何軒か行くのはもちろんとして、またいつか、福島県に旅行に行こうとなったら思い出せるような店に巡り会えたらなと考え、一軒目は大衆居酒屋で飲んだ後、二軒目はマイナーそうなBARを探した。少し歩くと良さそうなところがあったのでそこに入った。そこは階段を登り薄暗い廊下を少し歩いた先にある小さなBAR。
店内に入ると意外にもマスターは気さくな人で、この街のことや近くの美味しい飲み屋、飯屋を教えてくれた。僕達と話しながらも常連さんらしき人達とも楽しそうに話ていて器用な人だなと思った。僕達はいくつか注文し、飲んで盛り上がった。ここはお酒がすごい美味しくて、なんていうか、味が濃かった。飲んで話していくうちに常連さんたちも話に入り始め、みんなで楽しく飲んだ。たわいもない会話しかしていないし、酔いも少しまわってきていたからなんの話をしていたのか正直思い出せないが、この店のみんなは凄く温かかった。東京とは違う人の温かさに触れると、なんだかじんわり心が満たされていくような気がした。
二軒目を出たあたりで日付が回りそうなのを確認し、酔もちょうど良かったので一日目はこれでホテルに戻った。ホテルに戻り僕達は順番にシャワーを浴び二度抱きあっってから眠りについた。朝、目が覚めると、浴衣のはだけた菜摘の姿を確認しまた抱いた。二回。
シャワーを浴びて朝食の時間に間に合うように下に降りて僕達は朝食専用ラウンジへ向かった。
ホテルの朝食がバイキング形式なのは本当にありがたい。僕は朝からたくさん食べるのが昔から苦手だったからバイキングだと自分の適量だけよそえば良いのだから楽で助かる。
ホテルにはカップルや子連れの家族、一人で泊まったであろう会社員らしき男性がいた。この中でカップルはみんな、朝からすることをしてからここにきているのだろうかと考えたらなんだか下が起き出した。朝食を食べ終えた後僕達はもう一度抱き合って、下が落ち着いたのを確認してから外に出た。




