32話
最近、彼の様子が何かおかしい。何度か話しかけようとするが目が合いそうになるとすぐに違う方に向きを変えていることに私は気づいていた。まあ深く考えなくても良いか。そう思った矢先、彼が声をかけてきた。
「菜摘先輩この前話た美味しいラーメン屋バイト終わりに行きません?」いきなり誘われて思わず呆気に取られたような顔になっていたと思う。私も彼のことは話しやすい後輩だと感じていたからすんなり受け入れた。
八月が終盤に差し掛かっていたバイト終わりの今日、私は彼とご飯に行く。
話しながらラーメン屋に向かう道中で彼は食べ終わってからも少し散歩をして近くの公園でお話ししようと誘ってくれた。私は正直少し憧れていた。話しやすい男の子と夜どこかで適当な話で盛り上がり、夜風に耽る自分を想像した時、少し成長できてる自分が見えた気がした。もちろん行きたかったので私は乗り気で、「行こう!」と返事をした。
彼の誘ってくれた店はすごく美味しくて、すぐに完食してしまった。隣を見ると彼はなんだか落ち着きがなくソワソワしていた。声を掛けようか迷ったけど口を開こうとした時、また食べ始めたので私はそっとしておくことにした。
店を出て私たちはコンビニでお酒を買ってから公園に向かった。道中で話して思い出したのだが、彼はバイトの後輩以前に歳も私より一つ下だった。まだ未成年だったのだ。
そんな彼の口から「高校生くらいからみんな飲んでますよ」とさぞ当たり前のように飲む彼の姿は私の過ごしてきた学生生活とは縁のないような、どこか遠くの世界に住んでいる人のように見えた。少し羨ましく感じた。
今の私たちは周りからはどういう風に映るのだろうかふと考える。カップル?それとも仲の良い友達?自然とカップルという文字が頭の中で濃く浮き出る。顔が赤くなりそうな私を、外の風が冷ましてくれたような気がした。公園で人一人いないベンチに腰を下ろし話こむ。気づけば電車の時間が迫っていて彼は私を送り届けてから解散してくれた。平然とそんなことをしてくれる彼の気遣いの温かさに心が少し動いた音がした。生まれて初めて男の人との思い出ができた夏休みがもうすぐ終わる。
「楽しかったなあ」私は一人部屋で呟いた。




