26話
あれから一ヶ月と少し経った今日、僕の誕生日を菜摘が祝ってくれる日。
今年も僕は、朝早くから菜摘の家へ呼ばれていたので電車で向かった。
玄関を開けると去年はもう二度と見ることのない景色だと思っていたのが去年よりもバージョンアップしているのが容易にわかるくらい派手に彩られていた。ドアを開けるなり
「優弥くん誕生日おめでと〜!」と大きな爆発音のような音と共に迎えられた。クラッカーの数が去年よりはるかに多い。
「今年も一緒に祝えて嬉しいよ、来てくれてありがとね」いつしか僕が考えていた、あって当たり前の今に慣れないように感謝していこうと考えていた想いが菜摘も同じだったんっだと気づかせてくれてなんだか少し泣きそうになった。
「これプレゼント開けてみて」
中には時計が入っていた。
「カッコいいね時計。夏からインターン始まるから毎日付けるよ」
「よかったあ、趣味に合わないんじゃないかって心配だったんだ」
「シンプルで好きなデザインだよ」
「就活でめげそうになったらこれきて元気出してね」
「そうするよ、ありがとう」
毎日身につけれるものですごく嬉しかった。
インターンが始まったら会える頻度が減ることはわかっているから身につけてるもので菜摘を思い出せるものがあるのは正直かなりありがたい。夏休みまであと二ヶ月。僕は時計を見て心の準備を始めた。
あれからインターンの時期まで何気ない日常が流れその時期はすぐにやってきた。
「今日からインターンだね、頑張ってね!」
「時計見ながらなんとか乗り切るよ」
僕は菜摘の地元にも部署がある割と名前の通った企業を受けるつもりだった。数年は東京で働くが結婚する時が来たらいつでも行けるようにしたくて探した結果、ここが一番可能性がある企業だったからだ。
インターンが始ま会社の役員の話を聞いたり一緒に少し仕事をしたりと目まぐるしく進む日々が始まった。その間もずっと僕は腕時計を見て気を入れ直し頑張った。土日は会えるがそれ以外は連絡はするけど次の日が早かったり課題や準備に追われて思うように話せない日々が続いた。冬のインターンシップは菜摘とガッツリ会える大学最後の長期休みでもあったから参加したくなく、僕は夏休みのほとんどの期間を会社に注げていた。
どれだけ大変でも終わりは来るもので最後の日には社員さんから「来なよ」と声をかけてもらえるまでになり会社を後にした。
夏休みも終わりを迎え、秋にもう少しだけ顔を出しに行き確実に安全圏内に入った確信ができたのは二年記念日の一週間前だった。
「優弥くん、お疲れ様」
「二年記念日前には間に合ってよかった」
「頑張ったね。偉いよ」
「腕時計のお陰でめげづに頑張れたよ。これも全部菜摘のおかげだよ、ありがとう」
僕達はお互いに会えてなかった期間を埋めるように距離を縮めた。




