18話
「懐かしいね。初めて二人で来た時は私緊張してたんだよ」
「ええ、菜摘も緊張してたの?僕は食べてたけど食べてなかったんじゃないかってくらい味わかんなかったよ。緊張し過ぎて」
「優弥くんから勧めたのに味分かんなかったの?初耳だよそれ」菜摘が微笑む。
「恥ずかしかったからずっと言わないでおこうと思ってて」
「今日は味わかるといいね」
「流石にわかるわ!あの時は緊張してたからなの」
何気ない会話とよくある冗談の言い合い。
当時の僕には想像すらしていなかった今が目の前に広がっている。前は付き合いたいなとか、もっと欲をなくすと、とりあえず会えるだけでもと、ここまでの感情しか抱いていなかった僕が最近では隣にいて当たり前の存在になっていることに気づき、感謝の気持ちと同時になぜか菜摘に申し訳なさが襲って来た。隣にいて当たり前とかそんな日々が続くなんて誰にもわからないのに。
ラーメン屋で二人のお腹も満たされ時刻は午後三時くらい。外での買い物にも満足した僕達は最後にテイクアウトをできる店に行き、チキンやピザなど、いかにもパーティーしますと買った品々から伝わる量を購入し家へ向かった。
「じゃあ、はいこれ。一年記念日おめでとう!いつもありがとね。これからもよろしくお願いします」思いの外お互い深々と頭を下げ先ほど店で買ったマグカップと服をプレゼントし合った。
「折角だしプレゼントし合った服に着替えてマグカップで飲み物も飲もうよ」
「いいね。記念日って感じでなんか楽しそう」
僕達は服を着替え、マグカップに飲み物を注ぎ、二人とも最大限にリラックス出来る位置に座り最近ハマっているゲームを起動させた。
付き合いたての頃はお互いの家で膝枕をしたり理由もないけどくっついたりと、付き合いたてあるあるだと思うが、とりあえず一緒に居れる場所で離れることを拒んだ。そんな僕達も、一年も経ち何度身体を重ね合ったのかも思い出せないくらい一緒にいると同じ環境にいるだけで落ち着く関係に変わっていきていた。今ではお互いのベストポジションが確立されている。とはいっても二十歳の性欲なんて底知らずなのは言わずも知れていて僕が近づくと菜摘もその気になって身を寄せてくれるから助かっている。
ゲームでひとしきり盛り上がり少し小腹が空いてきていた。僕はスマホを開き時間を確認する。時刻は十八時を廻ったところだった。
「お腹空いてきたし買ってきたの広げだそっか」
菜摘のナイスタイミングの提案で重くなった腰を上げ僕達は買ってきた品々をレンジの前に集約させた。ゲーム中座りっぱなしで何にも考えてなかったためか考える体力を使うことすらめんどくさく、お皿に盛れるだけ盛って五百Wで三分ほど温めた。一人暮らしの賜物ではないが、盛った量でなんとなく温める時間を予測できるようになったのは、生活する上で特別なスキルが身につくより大きな功績だと思っている。
チキンやピザなどひとしきり温まったものを机の上に置きマグカップにジュースを。それともう一つ、雰囲気のあるグラスを持っていった。
「このグラス何に使うのー?」もう座って待っている菜摘の声が聞こえる。僕は去年買ったワインを持って菜摘の横に座った。
「特別な日に飲みたいねって話してたワイン。今日飲むのピッタリかなと思って」
「福島で買ったワインか。確かに今日飲むのピッタリかも」
「酎ハイも沢山あるからワインは一杯でいいよね」
「うんうん。お口に合わないかも知れないしね」
そんなことを話しながらワインを一杯グラスに注ぎ二人で乾杯した。
「一年記念日おめでと〜!」
ワインを口にして僕達はすぐに顔を見合わせた。




