15話
今日は絶対楽しくなる日だろうからと、この熱量で家には帰りたくなくなるだろうと踏んでホテルを予約しといたのは正解だった。
少し離れたところのホテルで値段的にも距離的にもちょうどいい場所があり、そこを予約していた。
ホテルから少し歩いたところに飲み屋街があり、割と遅い時間だったが何軒か灯が見えたので僕達は雰囲気に惹かれたケバブBARに入った。店に入ると外国人の店主が接客してくれてその人がとても温かかった。「こんな時間までやってると有難いですね」と言ったら、
「今日は花火大会があったでしょ。夜はお客さんの余韻を残して楽しんで欲しいから開けてるんだ」と言っていて素敵だった。
東京は良くも悪くも人に干渉しない街だと小さい頃から思ってたし、菜摘も東京は刺激が多いし楽しいけど、それと同時に冷たい人も多いと話していたことがあったから驚いた。
もちろん、みんながみんな冷たい訳じゃないし心が温かい人は東京にだって勿論普通に居る。ただ、夜にこんなに温かい気持ちに東京でなったのは初めてだった。
今日は嬉しくなること、驚くことが多い。何気なくイベントが欲しく、誕生日を祝ってもらった時に提案した花火大会がこれほどまで大切にしたい日になるなんて想像してもなかった。この気持ちになれるのも全部提案を肯定から入ってくれる菜摘とだからできたことだと改めて僕は彼女に感謝した。
ケバブにもいろんな種類があり僕達は悩んだ末、ポテトとお肉に特製のソースがかけられてある料理と二人で飲む時は決まって頼むレモンサワーを注文した。お腹を空かしていたのを察していたわけでは無いはずだけど、夜なのにテキパキ作ってすぐに持ってきてくれた店主を見てまた温かい気持ちになる。
ケバブは味が濃くレモンサワーも甘味が強くて相性がピッタリだった。場所の雰囲気も相まって普段一緒に食べる料理より美味しく感じた。
「優弥くん今日ありがとね凄く楽しかった」
「こちらこそだよいつもありがとね」
僕も菜摘も気づいたら日頃の感謝の言葉を言い合っていた。普段なら面と向かっては伝えることができない感謝の言葉を今日の雰囲気ならなんだかお互い伝えれる気がした。
僕達はBARでひとしきり盛り上がった後、カラオケで少し歌った。
二人でなんか一緒に歌おうよと提案した時菜摘は今日なら、と「aiko」の「花火」を選曲していて僕も同じのを入れようと思っていたから凄く嬉しかった。夏の思い出に耽りながら歌う花火はもうすぐこの時間が終わってしまう切なさを兼ね備えていたがそれでもよかった。僕は今日の日をずっとずっと忘れないだろう。なんとなくではない、確かにそう思った。




