14話
「浴衣歩きにくくない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね。ってか優弥くん東京住みなのに来たことなかったんだね」
「ずっと東京に住んでるといつか行けるしなと思って行ったことないとこ幾つもあるよ」
「あーわかるかも。私も自分の地元の祭りは行ったことあるけど市の大きい祭り結局行かずに東京来てるから人のこと言えないね」
「あって当たり前だと逆に行かないのって結構あるよね」
バンッ!!
菜摘と坂を登り話している時後ろからでっかい音が響いた。
「優弥くん花火!」
「え、どこどこ。、、あ!」
後ろを向くと一発目の花火が打ち上げられ出していた。
「ここ座れそうだよ。座っちゃおうよ」
坂の途中だったが僕達は横の小さな段差のスペースに腰を下ろした。
「綺麗だね。花火」
「そうだね」
花火は止まる勢いなく上がり続けている。
赤色、緑色、青色、混合色とたまに何かをモデルにした形の花火が真っ暗な空を鮮やかな色に塗り替えていく。
「綺麗だ。凄く」僕は誰にも聞こえない声で僕はそう呟いた。
花火の勢いは更に増し段々と終わりが近づいてきたのが全体の雰囲気で察することができる。僕達はみんなが花火に見入っている中こっそりとキスをした。いつまでもこの時間が続きますようにと小さな願いを込めて。
花火が終わりみんな同様僕達もゆっくり坂を降りはじめた。それぞれが各々の帰路に向かう中、僕達はコンビニで花火セットを買い二人だけの花火大会もしようよと小さな公園に向かった。公園は少しだけ人がいたが各々のスペースがあり、僕達も花火をしても迷惑が掛からなそうな場所を選び花火セットを広げた。
「線香花火でどっちが長く持てるか彼氏と勝負するの憧れてたんだ」菜摘の顔が笑顔という笑顔で埋め尽くされていて思わず僕も笑みが溢れる。
「色々種類あるから線香花火は最後にして順番にしようよ」
「うん!そうしよ」
僕達は順番に目玉であろう回転花火や音物花火、手持ち花火を楽しんだ。夜の公園が花火の光で鮮明に遊具を照らし出す。日中に見る遊具とはなぜか違うものに感じる。錯覚を引き起こす綺麗さだった。これも全部菜摘と一緒だからだと思った。男友達とも家族とも違う菜摘といる時に見る世界の映し出され方が僕は好きだ。
大体の大物花火たちの出番は終わり線香花火の出番がやってきた。
「やっと本命ですよ」
「これが一番小さい花火だけど世のカップルの一番の目玉はいつでも線香花火だよ」
「偏見がすごいけどなんとなく言いたいことはわかるよ」
「青春って感じじゃん線香花火は」
「もう名前変えちゃえば良いのにね青春花火とかに」
「んー青春花火もいいけど、線香花火だからなんかいいんじゃないかな。青春って学生を連想させるけど線香花火って昔から馴染みある方が全世代馴染みやすいじゃん?」
「まあ確かにね、火、付けよっか」
自分でも青春花火にすればいいんじゃないかなとか何を言いたいのか分からなかったけど、ただ僕は、このどんな言葉でも言い換えられない青春の時間が終わってほしくなかったんだと思った。線香花火中、菜摘の横顔ばかり僕は見ていた。彼女の横顔は顔の輪郭がハッキリしていて鼻筋は高くてただ本当に美しかった。ずっとそばにいてほい。この思いを日頃から軽く伝えてなくて心から良かったと思う。今。
大切な感情の時に伝えたい。今がその時だと思った。
「菜摘ちゃん、これからも一緒にいてね」
彼女はこちらをしっかり見て「うん」と一言だけ頷いた。頷く瞬間に見えた一滴の涙と共に線香花火も終わりを告げた。菜摘のこの時の儚げな表情は今の僕にはわかっていなかった。




