13話
「菜摘、今年の夏は花火大会に行こうよ」
「いいね。東京だとどこかな」
「板橋とか?江戸川とかかな?」
「今調べてみたけど板橋の方が迫力あるらしよ」
「じゃあ、板橋行こうよせっかくならでっかい花火見たいし」
「良いね決まり。今年の夏も楽しみだなあ」
菜摘に誕生日を祝ってもらったあの日部屋に入った時のクラッカーを見た時、菜摘と花火を観たいなと思った。誘ったらなんでも「良いね」とか「楽しそうだね」と肯定から入ってくれる彼女は我ながら出来過ぎた彼女だと思う時がある。でも、付き合う前から決して話を否定から入ったことのなかった優しさにも惚れた自分がいたのでこれからも僕は惚れ増し続けていくんだろうなと思う。
夏の花火大会の楽しみを残してお互いの誕生日祝いイベントは幕を閉じた。
「優弥くん、浴衣どう?」
「似合ってるよ。凄く」
「ほんとに!嬉しいなあ、楽しみだなあ」
板橋花火大会の日がやってきた。僕達は菜摘の部屋でお互い浴衣に着替え花火大会に行く準備をする。思いの外僕よりも菜摘の方が楽しみだったらしく、僕が家に着いた時からずっと上機嫌で楽しそうだ。
「髪の毛凝りたいから時間かかるかもしれないけどごめんね」
「ゆっくりで良いよー、更に可愛くなるの楽しみ」
「あんま変わんないよ、期待しないで」
よく恋人の話題で彼女のメイクが遅くてイライラするだとか、彼氏がゲームにばかり夢中でイライラするという話題を耳にするが、僕は彼女のメイク時間を待つ時間がどれだけ可愛く変身するのか考えてる時が好きだし、ゲームも二人で出来るやつしか買わない。
そもそも、一人でネット通信でするゲームがあまり得意ではないのがあるが、いつしかこういう話題を二人で話した時に価値観が似ている人と付き合えたり繋がれたりするのは実はすごくレアなんじゃないかという結論に辿り着いた。僕は彼女のメイクを待つ時、よくこの話を思い出す。僕は今も懐かしさに浸り楽しみに待っている。
「終わったよー、お待たせ」
「お!すごいねお団子?可愛いね」
浴衣にお団子ヘアーはなぜこんなにも可愛く目に映るのか分からないが人間の本能的な部分が作用していると思っている。
僕達は吉祥寺駅から板橋駅を目指し、いくつかの乗り継ぎを行い、向かった。板橋駅が近づくにつれ人混みの多さは増していった。
「座れてて良かったね、こんな混むと思ってなかったよ」
「結構早い時間に乗ったけどもう混み出すんだね」
普段ならそこまで乗車率が高くないであろう駅からでも今日は驚くほどの人数が押し合い乗車してくる。彼女は地元から東京に来た日を思い出すと言っていた。「東京の洗礼」と呼んでいるらしい。板橋駅につき警備員の指示に従いながら僕達は改札口を目指す。これほど混むと階段まであとどのくらいの距離なのかも見えない。菜摘と話しながら改札口が近づくのを待ち、やっと降りれた頃には十五分が経過していた。降りて交差点を渡ってすぐ近くにあるコンビニに入る。僕達は飲み物を買い、花火会場に向かった。
会場までのルートは調べてなかったが、前にいくつもの集団が先導しているかのように歩いていたため、ついて行くだけで目的地までは容易に着くことができた。ある程度まで近づいたところで警備員さんたちの誘導ゾーンに辿り着いた。そこからは進みが少しゆっくりになった。
「人の量すごかったね」
「ここまで混むんだね僕も初めて来たから知らなかったよ。」




