12話
菜摘の誕生日祝いから一ヶ月と少しが経ち次は僕の誕生日がやってきた。昨日の夜、菜摘から電話が掛かってきて電話越しの声はやけに張り切ってた。
朝から菜摘の家へ呼ばれ、僕は電車で向かった。
家へ入ると玄関から部屋まで風船やらキラキラしたモフモフの装飾品が部屋を占領し、ザ・誕生日祝い部屋ですみたいに彩られていて圧倒された。部屋のドアを開けるなり、
「優弥くん!ハッピーバースデイ!」と掛け声と共にクラッカーがまるで花火のように舞い上がった。
追いつけない感情と同時に僕は、もう二度とこんな経験が出来ないだろうと瞬間的に思ったがそんな考えは菜摘の「今年の祝い方はこんな感じでーす!」という声に掻き消された。
菜摘は冷蔵庫からケーキと、部屋の隅から隠れる気のないラッピング袋に包まれたプレゼントを渡してくれた。袋には僕が好きなジャンルの古着が二着も入っていた。
「気に入ってくれると良いんだけど、、」
「ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい」
「ほんと!良かったあ」
菜摘から安堵の表情と声が溢れる。普段着ない系統だったから、選ぶ時ずいぶん悩んで迷って探してくれたんだろうなと思うとそれだけで胸がいっぱいになりそうだった。
「私の時に手紙まで渡してくれたけどごめんね。渡さないといけない時にちゃんと渡すつもりだから今回は書かなかったんだ」
菜摘は手紙を渡さないことに謝ったが、プレゼントだけでもこんなにも愛情を感じたのだから僕は謝る必要なんて全然ないのにどうしたんだろう、と思ったが特には気にしなかった。
プレゼントで貰った服に着替え、一緒にケーキを食べて、一緒にゲームをして、その日は解散した。帰り道、梅雨に入る前に現れる雨の混ざった香り、風の匂い。
僕は二十歳の誕生日を二度と忘れないだろうと思った。




