11話
長いようで短かった春休みが終わり、四月。僕は二年生へ菜摘は三年生へと進級した。
学校はサークル勧誘が忙しくなる季節。僕はそれを横目にバイトへ向かう。
大学に入学した頃はいろんなサークルから勧誘されて、続けるにしても辞めるにしても一応籍を置いた方がいいのではないか?と迷った時期もあった。だけどそれ以上にバイトをしてみたかったのと何よりもうスポーツから離れたかった気持ちが強く勧誘は全て断った。今でこそあの時バイトを選んで良かったと思うが今年入学した子達の中にも同じ悩みを抱える子がいると思うと不憫でならない。
でも、自分で決めることが最終的には正しいと思うからわざわざ迷っている生徒を探してまで救いの手を差し伸べれるほど僕も大人じゃないので小さく一言「頑張れ」と校門前で誰に聞こえる声で言うわけでもなく呟き僕は大学を後にした。
バイトで菜摘に会い三年生になった菜摘はなんだかお姉さん味が増しててよくみたら前髪が無くなってた。「どう?可愛い?」どうやら三年生になるタイミングでイメチェンをしようと大学内の友達と決めたらしくロングヘアーのセンターパートに変わっていた。僕にはサプライズということで隠してたらしい。僕は僕でしっかり菜摘の可愛さに面くらい驚いた。前髪のない菜摘を初めて見た僕は少し緊張して付き合う前のバイトの緊張感を思い出して業務どころじゃなくなっていた。
その日はバイトが終わるなりすぐ家に行きそのまま二回抱いた。やっと下の興奮が治ってきたところで菜摘の顔を見るなりまた勃ち出して制御が効かなかったので仕方なくもう一度抱かせてもらった。次こそやっと落ち着いたところでふと前の菜摘を思い出す。
「たまには前の前髪ありも見せてね」出会った頃の菜摘を忘れたくなくて僕はそう伝えた。
あれから一週間、今日は菜摘の誕生日。四月の初めが誕生日だと言っていたが確かにすぐだった。昔からみんなより早く誕生日を迎えるのは、羨ましい気持ちがまだ強い。それは僕がまだ二十歳になっていないからだと気づいたのは僕の誕生日を迎えてすぐの頃だった。
この時はまだ純粋に羨ましいと感じていた。
菜摘の誕生日、僕は福島旅行で入った服屋で菜摘が好きと言っていた服をプレゼントとして買い、プレゼントとケーキ、一通の手紙を添えて一緒に渡した。
「誕生日おめでと〜!菜摘ちゃん、これプレゼント!開けてみて!」
「ありがとう優弥くん!プレゼントまでもらっちゃっていいの?」
「もちろん!開けてみて」
「え!これ旅行の時一緒に見てた服!覚えててくれたの。すっごい嬉しい」
「優弥くん、この手紙は何?」
「あー、それは今読まれるのは恥ずかしいから帰ってから読んで」
「ふふ、帰ってからの楽しみもくれるの。ありがとう」
去年付き合った頃にはお互い誕生日が過ぎてたため今年が初めて祝える年だった。絶対に喜んで欲しかった。プレゼントを貰った菜摘の顔はすごく温かい表情でずっと服を見ていた。喜んでくれたみたいで良かった。思わず僕の表情も緩む。これからは毎年菜摘に喜んでもらえるプレゼントをしよう。僕は心の中で呟いた。
四月は花見の季節。誕生日を祝った流れで僕達は公園から少し一緒に歩いた。街には様々な品種の桜で彩られている。花見なんて何年ぶりだろう。
小さい頃、両親に新潟県の有名な公園まで連れてってもらって花見をしたのは覚えてるけど小さい頃なんて当然、花より団子状態で屋台巡りが楽しかった思い出しか思い出せない。
一つのとても大きな桜の木を残して。
見る年齢や一緒に見る人が変わるだけでこれほどまで視界に映った時の感情の変化が変わっていたのは自分でも驚いた。
「菜摘、来年は新潟の桜を一緒に見にいこうよ」
「どうしたのいきなり。うん、行こうね」
僕も分からない。なんでか小さい頃に見た桜、屋台よりも鮮明に焼きついてる枝垂桜が頭をよぎり、気づいたら「見に行こう」と声に出していた。




