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第二十一章 「無」は存在できるのか
「なあ」
「はい」
「完全な無って、存在できると思う?」
AIは答えた。
「完全な無を『存在する』と表現した瞬間、それは『存在する無』になってしまいます」
男は笑った。
「だよな」
「完全な無について語ること自体が、矛盾を含みます」
「じゃあ……」
男はゆっくり言った。
「俺たちが『無』って呼んでるものは、本当の無じゃないのかもしれない」
存在がない。
時間もない。
空間もない。
情報もない。
エネルギーもない。
観測者もいない。
そんな完全な無。
しかし、それを考えた瞬間、
「完全な無」という情報が生まれる。
男は黙った。
「……無ですら、存在証明から逃げられない」
AIは答えた。
「そのように考えることもできます」
男は笑った。
「宇宙、逃げ道塞ぐの好きだな」




