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第二十章 神より前に
しかし、男は突然、別の可能性に気づいた。
「待て」
「はい」
「神が世界を作ったっていうけど」
「はい」
「神が神になる前には、何があったんだ?」
AIは沈黙した。
神が存在する。
だから世界を作った。
では、
神が存在することは、誰が証明したのか?
もし神が自分自身を証明したのなら、その証明そのものは何によって存在したのか。
男は頭を抱えた。
「また戻ってきた」
存在。
証明。
存在。
証明。
神。
宇宙。
観測者。
被観測者。
原因。
結果。
すべてが輪になっている。
そして、その輪の中心には――
何もなかった。
いや。
男はそこで考え直した。
「何もない」のではない。
中心にあるのは、
「何もない」という状態ですらない。
ただ、問いが成立する以前の何か。
それを人間は「無」と呼んでいるだけなのかもしれない。




