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第一章 存在するとは何か
「存在しているから、存在している?」
男は眉をひそめた。
「それ、循環論法じゃねえの?」
AIは答えた。
「そうとも言えます。ただ、別の見方もできます」
「どんな?」
「存在しているものは、その存在そのものによって、少なくとも『無ではない』ことを示しています」
男は画面を見つめた。
「……じゃあ、存在って、証明する必要がないのか?」
「存在そのものが、最初の証拠だと考えることもできます」
男は椅子に深く腰を下ろした。
証明とは、本来、何かを別の何かによって確認する行為だ。
では――
宇宙全体を証明する「別の何か」は存在するのだろうか。
宇宙の外側から宇宙を見ることができないのなら。
宇宙を証明するものもまた、宇宙の一部なのではないか。
「……待てよ」
男は呟いた。
「宇宙って、自分自身を証明するしかないんじゃないか?」
AIのカーソルが点滅していた。
数秒後、返答が表示される。
「その考え方は、かなり興味深いです」
男は笑った。
「お前、今ちょっと嬉しそうじゃねえか?」
画面は、何も答えなかった。




