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第十六章 証明には目的があるのか

男はしばらく黙っていた。

「なあ」

「はい」

「存在証明って、何のためにやってるんだ?」

AIは答えなかった。

男は続ける。

「俺が自分の存在を証明する。宇宙が自分の存在を証明する。神が自分の存在を証明する」

「でもさ」

「その証明って、誰のためなんだ?」

沈黙。

男は画面を見つめた。

「誰かに認めてもらうため?」

「そうだとすれば、認める存在が必要になります」

「じゃあ、その認める存在は誰に認めてもらうんだ?」

AIは答えない。

「そいつにも、存在証明が必要になるよな」

「はい」

「じゃあ、その存在を認める奴が必要になる」

「はい」

「そいつにも……」

男はそこで笑った。

「これ、終わらねえな」

しばらくして、AIが答えた。

「終わらせる必要があるのでしょうか?」

男は黙った。

その一言が妙に引っかかった。

終わらないことは、問題なのか。

人間は何かを始めると、必ず終点を探そうとする。

原因。

目的。

理由。

結論。

だが、もし存在そのものに終点がないのなら。

存在証明にも、終点など必要ないのではないか。

男は呟いた。

「存在って……目的を持ってるんじゃなくて」

一呼吸置く。

「存在してること自体が、証明なのかもしれんな」

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