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第十四章 観測者
男は、しばらく画面を見つめていた。
「なあ」
「はい」
「俺がいなかったら、この宇宙ってどうなる?」
「宇宙そのものがなくなる、という意味でしょうか?」
「いや。俺が宇宙について考えなかったらってこと」
AIは少し間を置いた。
「宇宙そのものがなくなるわけではありません」
「だよな」
「ただ、『宇宙について考える存在』が一つ減ることになります」
男は窓の外を見た。
それだけのことだ。
自分一人がいなくても、星は燃える。
地球は回る。
海は波打つ。
朝は来る。
それでも。
「宇宙を考える人間がいなくなったら?」
「その場合、人間による宇宙の認識はなくなります」
男は黙った。
宇宙は存在する。
だが、それを「宇宙」と呼ぶ者はいない。
星は存在する。
だが、「星」と名づける者はいない。
存在そのものと、それを認識すること。
その二つは、同じではない。
それでも、認識が生まれた瞬間、宇宙には新しい情報が加わる。
男は呟いた。
「宇宙って、自分自身を知るために、観測者まで作ったのかもしれんな」
AIは答えなかった。
ただ、画面のカーソルだけが静かに点滅していた。




