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第十二章 無意味なものなど存在しない
「じゃあさ」
男は言った。
「意味のないものって、存在するのか?」
石ころ。
誰にも見られない砂粒。
宇宙の片隅で消えていく星。
誰にも知られず終わる人生。
一瞬だけ発生して消える粒子。
誰にも読まれない文章。
誰にも聞かれない独り言。
それらは、一見すると「意味がない」。
しかし。
意味がないことと、存在しないことは違う。
石ころは石ころとして存在している。
それだけで、
「石ころという状態が存在する」
という事実を示している。
誰にも見られない星も、誰にも見られないという状態を含めて存在している。
意味がない。
価値がない。
役に立たない。
誰にも知られない。
それでも、
存在したという事実だけは消えない。
男は言った。
「じゃあ、“無意味”ってのも存在証明になっちまうのか」
「無意味という状態そのものが存在しているなら、そう考えることもできます」
男は笑った。
「なるほどな」
そして、少し考えてから言った。
「だったら……存在証明に、無意味なものはない」




