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第十章 証明は証明する
男は、ふと妙なことに気づいた。
「なあ」
「はい」
「存在って、自分自身を証明してるんだよな?」
「そう考えることができます」
「じゃあ、その証明は一回で終わるのか?」
AIの返答が止まった。
「俺が『俺は存在する』って証明したとして、それで終わり?」
「……いいえ」
「なんで?」
「あなたが存在することを証明したという事実も、また存在しているからです」
男は黙った。
「……あ」
証明が存在する。
その証明には、「証明された」という状態がある。
その状態もまた存在している。
ならば、それも存在を示す。
そして、その存在証明を認識した自分も存在している。
認識したという事実も存在する。
その認識を記憶したなら、記憶も存在する。
記憶を言葉にしたなら、言葉も存在する。
その言葉を読んだ誰かが考えたなら、その思考も存在する。
「……証明が増殖してる」
「ある意味では」
「いや、待て」
男は椅子から身を起こした。
「増殖じゃない」
そして、ゆっくり呟いた。
「輪廻してるんじゃないか?」
存在が証明を生む。
証明がまた存在する。
その存在が新しい証明を生む。
証明は存在へ戻り、存在は再び証明になる。
それは、
存在証明そのものの輪廻だった。




