5・シールド棒じゃ駄目ですか?
セタ君とトーラス君が戻ってきてから、今まで調べたことをクラスに報告してくれました。
「……まさかそんなことになっているとは」
シャリアさんが落ち込んでしまいました。
そうですよね、王族が狙われたのですから。
私もお父様の伝言をサシャを通じて聞かされていました。
″殿下は誰かに狙われている可能性がある。 お前も気をつけるのだぞ゛と。
そんな悲しく落ち込んでいるシャリアさんになんと声を掛けてあげれば良いのでしょうか……。
「……胸板が厚い僕の替え玉ってなんなんだよ」
落ち込んでいる方向が違いましたね。
男子生徒はそんなシャリアさんに、「さぁ、僕の胸でお泣き」とか言って、近くの女子達に叩かれていましたわ。
私は気を取り直して声をあげました。
「さてみなさん、どうやら私たちのシャリアさんの素性がばれたわけではないので一先ず安心ですわね」
Aクラス一同が頷く。
「しかし、油断は禁物ですわ。 そのためにも皆様の協力が一層必要となりますの! 皆様、これを乗り越えて、晴れて進級をこの手にしましょう!」
私は拳を高らかに掲げると、Aクラス全員が雄叫びと共に拳を高らかに掲げました。
*
今日は訓練所にてSクラスと合同で魔法実技の授業になります。
Sクラスの五人はまだ来ていません。
魔法の実技といっても、個々で使える魔法に偏りがあったりするので、基本的に魔力循環とその扱い方について学ぶのです。
ある程度扱える人は特別に設けられた柵の中で、腕輪を着けて打ち合ったりしています。
あまりいませんが、回復魔法が使える人は、怪我人が出るのを今か今かと待ち望んでいるとかいないとか……。 噂話ですけどね。
私は魔力が少ないのであまり大掛かりなことは出来ません。 なのでシールド魔法を棒状にしたり、盾にしたりしていました。 この魔法は便利ですわ。 個人的な感想ですが、消費魔力も思いのほか少ないですしね。 まぁ、この魔法を教えてくださったマイラー先生が凄いのですけどね。
そういえばサシャはシールドを拳に纏わせてサーベルタイガーを殴っていたと、後で聞いたのです。 私にも出来るでしょうか。
私は魔法用の的に向かって身体強化を行い殴ってみましたが、流石に手が痛くなりますね。
では、シールド魔法を拳に纏わせてみます。
ぐにゃぐにゃした魔力が拳を覆っています。
輪っかや棒は出来るのに、何ででしょうか、わかりませんね。
「フィリア君、今度は何をしているんだい?」
後ろから声を掛けてきたのはシャリアさんでした。
「シャリアさんですか、これはシールド魔法ですの」
私は拳に纏わり付いてぐにゃぐにゃ動いているシールドだった物を見せると、凄く変な顔をされました。
「……僕の知っているシールドとは随分違うんだね」
私は自分の手を見つめながら、使い慣れた棒にしてみました。
「やはりこの棒状のが一番使いやすいですわね」
棒状にしたシールド魔法を手の上でくるくると回してみました。
「それ、本当にシールド魔法なのかい?」
シャリアさんは前と同じように興味を持って見ています。
「そうですわ。 以前にも畑で見ていますよね」
私はシールド魔法を輪っかにして見せました。
「草刈り魔法?」
「……シールド魔法ですわ」
なんで草刈り魔法なんですの?
「以前畑で見せて貰ったときに、君が言ったんだよ」
……記憶にございま……あ、言ってました。
「こ、これはですね、シールド魔法から生まれた草刈り魔法ですの! 危ないから取り扱いに注意ですわ!」
「そうか……僕にも出来るかい?」
シャリアさんは興味をもっているようですわ。
一緒に畑の雑草を根絶やしにしましょう。
そこから私はシャリアさんに草刈り魔法のやり方を教えるのでした。
教えること数分――
シャリアさんはあっという間に草刈り魔法を覚えてしまいました。
「流石ですわ、シャリアさん。 もう完璧ですわね」
シャリアさんもニコニコしながら輪っかを回しています。
「フィリア君、さっきの棒の奴もこれの応用なのかい?」
「そうですわ。 シールド棒ですね」
今度は棒に挑んでいるようです。
シャリアさんの吸収速度は凄いです。
あっという間ですわね。
「ふむ……、さっきの輪っかもそうだけど、魔力操作が肝なんだね」
シャリアさんは両手にシールド棒を作って打ち合わせてからこちらを見ました。
「フィリア君、これで少し打ち合ってみないかい?」
おもしろい申し出ですわね、私も興味あります。
「やりましょうシャリアさん」
私とシャリアさんは腕輪を装着して柵の中へ向かいました。
柵の中では魔法を撃ち合っている生徒達で勝ち負けを競っています。
私たちは邪魔にならないように端の方で向かい合いました。
「まずは軽く打ち合ってみようか」
シャリアさんの合図でシールド棒の打ち合いが始まりました。
果たして私の魔力が何処まで持つのでしょうか。
シャリアさんは静かな構えから、一気に詰め寄ってきました。
「え? ちょ、軽くではないんですか!?」
「あはははは! 君相手ならこのくらいが丁度いいかと思うけどね」
なんか楽しそうですわね。
ならば私も楽しみますよ!
シャリアさんの光るシールド棒が弧を描きながら迫ってきます。
私は半歩下がり、それを躱して胸を目掛けて左手に持った棒で突きを繰り出します。
シャリアさんは私の突きを右の棒で弾いた力を使い、その勢いを利用して右足を軸に回転しながら腰を落としました。
そこから左の棒で私の横っ腹を狙ってきます。
私は右手に持った棒を本来の形である盾に戻してそれを防ぎました。
「なるほど、そういう使い方も出来るわけだね!」
シャリアさんがそれはそれは楽しそうに攻めまくってきます。
「しかし、一つ残念な事があるよね!」
「え? なんですか? 何が残念なんですか?」
打ち合いながらの会話。
「それはね……」
「それは?」
お互いのシールド棒を押し合いながら、シャリアさんが言ったのです。
「名前のセンスが悪い事かな」
な! 私のネーミングセンスが悪い……!?
ショックを受けた私にシャリアさんのシールド棒が私の頭にコツンと当てられた。
「はい、勝負有りだね」
ニコリと笑うシャリアさんを私はただただ見つめることしかできませんでした。
シールド棒じゃ駄目ですか?




