4・何かあったんだ
セタ君とトーラス君が調査に出かけている間、私たちAクラスでは特別緊急会議が行われていたのです。
「シャリアさん、何か心当たりは?」
私の質問にシャリアさんが答える。
「ありません……っていうか、何でみんなに囲まれて僕一人が教壇に立たされているのかな?」
そう、シャリアさんは教壇に立たされ、質問という尋問が行われています。
「後ね、僕は王族なわけで、普通に考えたら替え玉を用意するよね」
そこで全員が手を叩いて納得する。
「なるほど、替え玉ですか。 確かにありそうですわね」
別の男子からも声が上がりました。
「こんな美少女の替え玉が他にもいるのか!」
ざわめく男子達。
「何てことだ! 恋文を書く紙が足りないではないか!」
その他の男子生徒も同じようなことを言っています。
「まさかと思うが、僕のロッカーに大量の恋文が入っていたのは君たちの仕業かな?」
じろりと睨むシャリアさん。
「違う、違うぞシャリアちゃん! 他のクラスからもだ!」
なるほど、最近知らない生徒がよくクラスにいたのはそのせいなんですね。
どうでもいいですが、みなさん殿下のことを完全にシャリアさん扱いですわね。 それに、誰一人として殿下の替え玉を立てられることなど考えもしていなかったようです。
*
「校舎内にはいないのかなー」
トーラスも同じ事を思ったのだろう。
「かもな、後は講堂、訓練場か校庭しかないな」
俺たちは今、校舎の入り口にいた。
俺の未熟な気配察知やトーラスの異常に感度が良い耳を持ってしても見つからなかった。
「とりあえず出てみようか」
まずは講堂へ行ってみることにした。
この時間の講堂は、人気もなく静まりかえっていた。
「いないねー」
「ああ、人の気配すらないな」
俺たちは講堂を小走りで一周したが、誰も見かけることはなかった。
今度は訓練場へ向かった。
そこには剣の訓練をしている生徒たちが互いに高め合っていた。
「こんなことがなければ俺も混ざりたい」
「そうだよね。 でも今の僕たちはそれどころじゃないもんね」
後ろ髪を引かれながらも探し人を探す。
椅子の下、壁の裏。
トーラスも聞き耳を立てながら遠くを眺めたりしている。
「セタ君、見つかった?」
「いや、ちっとも見つからない」
「こんな天井裏には来ないよね」
「……そうだな。 降りようか」
屋根がある部分の天井裏にも上がってみたが見つからなかった。
俺たちは訓練所を後にした。
後、行っていないところとなると……校庭と師匠の畑だな。
「トーラス、畑に行ってみよう」
「そうだね、校庭の方にも注意しながら行こうね」
トーラスの言う通り。
校庭にも注意を払いながら師匠の畑へと向かっていった。
フィリア畑――
師匠がなぜ畑をやり始めたのかは不明だけど、何か意味があるに違いない。
畑の一部に、いつの間にか建てられた小屋とテラスがある。
俺とトーラスが近づくと、テラスに人がいた。
俺はトーラスに目配りすると、トーラスが目をこらし、耳を澄ましていた。
「……うん、当たりだよ。 Sクラスの人たちだね。 なんか殿下に注意をしているみたいだね」
噂の殿下に注意か、なんだろう。
「それにしてもあの人、ランディル殿下にそっくりだねー。 違うのは胸板が厚いところかな?」
「胸板が厚い? 女性的な胸じゃないのか?」
「違うみたいだね……胸板だけだったらリド様と同じくらいだね」
あの殿下のスタイルで胸板が厚いだと? 凄いバランス悪いな……。
一体どんな訓練をしていたんだ?
「あ、殿下とメイドさん以外が離れていくね」
俺たちは見つからないように近くの茂みに隠れた。
しばらくするとSクラスの四人が俺たちの近くを通り過ぎていく。
「……ふぅ」
トーラスの安堵のため息が静かに聞こえて俺も緊張を解いた。
「見つからなかったか?」
「そうだな、俺様じゃなければ見つからなかったかもな」
いつの間にか俺の首筋に剣があてがわれていた。
俺は振り向こうとしたがそれをゆるさなかった。
「おっと、動くなよ。 まずはゆっくりと立てこちらを向け」
俺とトーラスは指示に従いゆっくりと立ち上がり、振り向いた。
「さて、お前らの目的は……って、セタじゃねーか。 それとトーラスだったか」
「リド様たちこそ、ここで何を?」
「あぁ、悪いがそれは言えねーな」
そこでクランゼ兄弟が話しに入ってきた。
「君たちこそこんな所で隠れて何をしていた?」
兄のサイラス様が睨むようにこちらを観て言う。
「返答次第ではただではすまないよ……」
弟のイコラス様が冷たい気配を漂わせながら懐に手を入れた。
「俺としてはお前らが何をしようが関係ないが、今回はちょっと間が悪かったな」
リド様の目つきが変わる。
そこでマイク様が歩いて近づいてきた。
「Aクラスの二人、まずはお前らの目的を吐いてもらおうか」
俺とトーラスは互いの顔を見て観念して事情を説明した。
「ぶははははは! なんだそりゃ!」
リド様は大笑いしている。
「……殿下は、殿下がどうされている」
マイク様が声を低くして聞いてきた。
「殿下、いや今はシャリアさんだな。 シャリアさんはクラスの人気者だ。 男子の極秘アンケートでは結婚したい女性ナンバーワンに選ばれるくらいだ」
俺がそう伝えると、トーラスが補足した。
「他のクラスからも人気絶大だよ」
それを聞いたマイク様以外が大笑いしだした。
「こらお前たち! 不謹慎だぞ! 殿下の身にもなってみろ!」
マイク様は殿下の身を案じて言っているのだろう。
「くくく……そうだなマイク……お前の言うとおりだな……くくくっ」
リド様がお腹を抱えながら笑いを堪えまくっている。 そんなにおかしかったのだろうか。
「しかし、Aクラスは面白いな。 殿下の身を隠し、しかもばれたら留年ってなんだよ」
サイラス様も笑っていた。
「みんな失礼だよ、彼らも頑張っているんだから。 ぶふっ!」
イコラス様もか。
…………一通り笑い転げたリド様達にどうしてここにいたのか、あの殿下は何者かを尋ねたが、それは答えられないと言われた。
まぁ、うちのクラスにシャリアさんがいる。
これだけで何かあったのだなと言っているようなものだ。
この後、俺とトーラスは解放され、Aクラスへ戻るのだった。




