8・サシャと私 1
学園生活が始まり二週間ほど経ちました。
今日の休日の過ごし方はどうしましょう。
私はいつも通りにベッドから起き上がって、着替え、顔を洗うのです……。
「お嬢様、なにベッドの中でモゴモゴ言ってらっしゃるのですか、早く起きてください」
サシャ~……
「今日はお休みの日ですよー」
ベッドの中で丸くなります。
しかし、無情にも布団が剥ぎ取られていきます。
「サシャ、寒いですよー」
「さぁさぁ、いつまでもそうしていないで、顔を洗ってください」
「起こして下さ〜い」
「今朝はお嬢様の好物、ハムエッグサンドですが……私が全ていただいても?」
「顔を洗ってきますわ」
ベッドから飛び降り、急いで顔を洗いにいきます。
ハムエッグサンドが呼んでいますから!
*
午前中に授業で出た宿題を終わらせてしまいました。
「サシャはこの後なにをしますの?」
「お嬢様の身の回りのお世話ですよ」
私は考えました。
「なら、街へ出かけてみませんか?」
「街でございますか?」
「はい。 サシャと二人でお出かけです」
サシャは少し考えてから、くすりと笑いました。
「そうですね。 たまにはお出かけでもしますか」
私は嬉しくなり、サシャを急かします。
「サシャもたまにはメイド服以外を着てはいかがですか?」
サシャは少しだけ悩んだようですが、承諾してくれました。
サシャの普段の服を見たことがないので楽しみです。
サシャの姿を想像します。
きっと素敵なお姉さんの様な格好です。
ワンピースに短めの羽織もの、肩にバッグを掛けている感じですわ。
ガチャ……
扉が開き、出てきたサシャの格好は、
黒いジャケットに黒いズボン、そして黒い靴。
黒いシャツに赤いネクタイ。
顔には小さな丸い色眼鏡。
束ねた髪を隠すように、黒い中折れの帽子を斜めにかぶっています。
そして私は見ました。
手に持っていた四つの穴の空いたリングみたいな物を、ズボンの後ろポケットにしまうのを。
……アレはなんですか?
「よかった……昔の服がまだ着れました」そう言いながらジャケットの襟を整えています。
私はただただ、呆然とサシャを見ていました。
「……あら? お嬢様、どうなさいましたか?」
私は首を振り「なんでもありませんわ」としか言えませんでした。
「折角のお嬢様のお誘いです。 時間を無駄にはできません」
「行きましょう」と言って、サシャは私の手を引き、部屋から出ていきます。
寮から出るときに寮母さんとすれ違いましたが、サシャが帽子を軽く上げる仕草をしました。
挨拶なのでしょうか。
それにしても、なぜみなさんは私たちから距離を取るのでしょうか。
わかりません。
*
街に出てきました。
通りには沢山の人たちが歩いています。
「サシャはどこに行きたいですか?」
私は尋ねてみました。
「お嬢様の行く場所が私の行く場所ですよ」
そうなんですか? 変わっていますのね。
「なら、お洋服でも見に行きましょう」
「お洋服ですか……なら、こちらの方が近道ですね」
サシャは慣れた感じで表通りから裏通りを抜けていき、あっという間にお店に着きました。
それにしても、後からサシャを見ていましたが、動きが洗練されていました。
そう、メイド姿の時とは違う洗練された動きでした。
店に入ると、そこには沢山のお洋服が飾られています。
「サシャ、サシャはどのようなお洋服がよろしいですか?」
「お嬢様に似合いそうなのは……」
「違います。 サシャご自身のですよ?」
「わ……私のですか!?」
少し驚いているサシャは新鮮です。
サシャは店内を見回して、何かを見つけたのでしょうか……
「あれは……」と言って移動しました。
サシャが目にしているのは男性物……
色は全て白。
今、サシャが着ている物の色違いです。
しかも、サシャはうっとりしながら眺めています。
「これがよろしいのですか?」
値札を見ると、金額は五十万エミリですか。
「あ……これは」と言いながら顔を赤らめています。
なんだか今日のサシャは可愛らしいです。
いつものサシャは、しっかりしたお姉様という感じですから。
私はお店の方をお呼びしました。
でもなぜか、お店の男性の方は引きつった笑顔でした。
「採寸を取って頂いてもよろしいですか?」
私は店員の男性にお願いします。
「は……はい、た……ただいま!」
声、裏返っていますよ?
それとも、サシャに見惚れてましたの?
採寸を終わらせて、お洋服が出来るまで数日とのことでした。
私は受け取り用紙と確認用紙に名前を書き込んだら、男性はさらに驚いていました。
賑やかな方ですね。
サシャとお店を出る時、後ろから声が聞こえてきました。
「……く、黒の女豹が……帰ってきた……」
よくわからないことを言われていました。
首を傾げてお店を出ます。
しばらく街を歩いていましたら、パンの焼けるいい香りがしてきました。
「サシャ、凄く美味しそうなパンの香りがします」
「そうですね……あちらのパン屋みたいですね」
サシャが指を指します。
そこには沢山の方が並んでいました。
私たちが並ぶと先ほどまでの賑わいが消えてしまいました。
そこへ冒険者の方がこちらへやってきます。
サシャが私の前に出て左腕で守るように立ち、右手はズボンの後ろに入れています。




