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7・Aクラスのお友達

 翌日の教室。


 教壇の近くで考え事をしていると、


「フィリア様、どうなされたのですか?」


 私を心配してくれているのはラザリア様。


「なんでもありませんわ」


 私は昨日の騒ぎのせいで——悪役令嬢たる者、冷静であれ——の精神に背いてしまいましたわ。


 これは、私自身の問題ですわね。


 もう少しスマートなやり方もあったのではと考えてしまうのです。


 ……でも、一方的にやられていた方が無事で何よりでした。


「おはようございます。 フィリア様、ラザリア様」


 セタ君がやってきました。


「フィリア様、昨日は僕のせいで負けてしまいすみませんでした」


「そんな事ありませんわ。 私の方こそ魔力が切れてしまっていましたから」


 そうなんです。


 私は魔力を使い果たし、倒れそうなくらいにふらついていました。


 その状態で試合を行い、私たちは負けてしまいました。


 いえ、言い訳ですね。


 相手の方の作戦勝ちです。


「そうですよね、相手がまさかあんな手で来るとは思いませんでした」


 ラザリア様も悔しそうです。


 あまりにも突然のことで、驚きのあまり旗を守り切れませんでした。


「まさか旗を持って突っ込んで来るとは思わなかったし……」


 セタ君も、先生にあれ反則ではと聞いたのですが、


 逆に何が反則なんだと返されましたからね。


「確かに先生は先に旗を取った方の勝ちとしか言われていませんものね」


 三人でお話をしていると、チャーニさんが教室に入ってきました。


「みんな、おはようございます」


 息を切らしながら挨拶をしてきます。


「チャーニさん、息を切らしてどうしましたか?」


 ラザリア様が尋ねました。


「ほら、うじうじしていないでこっちに来なさいよ」


「う……うん」


 ドアのところからこちらを覗き込んでいる男子生徒がいました。


「彼、昨日フィリア様が助けた人よ。 かなり内気なのよね」


 チャーニさんが男子生徒の事を教えてくださいました。


 男子生徒はおずおずとこちらに歩いています。


 私の前まで来ると、


「フィリア様! 昨日は助けていただき、ありがとうございます!」


 頭を下げながら大きな声で感謝の言葉をいただきました。


「お怪我がなくて何よりですわ」


 私は笑顔で答えました。


 男子生徒は頭を上げ、言葉を続けました。


「申し遅れました。 僕はトーラスといいます!」


「トーラス君ですね。 同じクラスですもの、よろしくお願いしますわ」


 トーラス君は嬉しそうに笑いました。


「チャーニも、ありがとう」


 チャーニさんが何か言おうとしたら、トーラス君が他の男子生徒に連れて行かれました。


「トーラス抜け駆けか!? うらやまけしからん!」


「そ、そんなんじゃないよ」


「フィリア様と話しやがって! こいつは……で、どうだった!」


 そんな男子生徒の声が遠ざかって行きました。


 また教室のドアが開きました。


「先生が来たぞー」


 オーブル先生は自分で言いながら現れました。


 私たちは席へと移動をしました。


「授業を始める前に言っておくぞ」


 真剣な顔で全員を見渡すオーブル先生。


「マズウェルだが、あいつはやり過ぎたため、一ヶ月間の自宅謹慎の停学処分となった」


 その言葉を聞いて、クラスは静まりました。


「ハメを外すなとは言わん。 だが、一線は超えるなよ」


 それだけ言うとオーブル先生は教科書を開き、授業が始まりました。


    *


 授業も終わり、学校生活初めてのお昼休みです。


 いくら立場は関係ないという学園でも、食堂では貴族と平民が無意識に分かれているみたいです。


「フィリア様、ラザリア様、私とセタは向こうで食事してきます」


 チャーニさんがそう言って離れようとしましたが、


「なぜですの? ご一緒しましょう」


 私はみなさんと一緒に食事を楽しみたいのです。


「フィリア様、見てください。 食堂では分かれて食事しているみたいなので……」


 セタ君も、気後れしているようです。


「そんなこと言わずに、食事を貰いにいきましょう」


 三人は顔を見合わせてから、ついて来てくれました。


 食事を貰い、空いている席へ座る私たち四人。


 そこは貴族と平民が、分かれている真ん中に位置していました。


「さあ、いただきましょう」


 私とラザリア様が食事をとり始めると、チャーニさんとセタ君がこちらをじっと見ています。


「どうかなさいましたか?」


 私が聞いてみると、


「お二人とも、ナイフとフォークの使い方が綺麗だなと思いまして」


 チャーニさんが興味深そうに語りました。


 セタ君も頷いています。


 私はチャーニさんとセタ君の食事を見て思いつきました。


「もしよろしければ、テーブルマナーを教えて差し上げましょうか」


 突然の申し出に、二人は大変驚いています。


「自分たちがマナーを覚えても、使うかわかりませんし……」


 セタ君はああ言いますが、


「セタ君、貴方が将来冒険者になって、ランクを上げたとします。 その時は必ず必要になりますよ」


 私が言うと、


「そうなんですか?」とセタ君が聞いてきました。


 以前、お父様から聞いたことがある話をしました。


「高ランクになると、大きな商会や貴族相手にすることが多くなるそうです。 食事をする機会だってあります」


「チャーニさんもです。 パン屋を営めば大きな商会と付き合うことがあるかもしれません」


「フィリア様の言うとおりですね」


 ラザリア様も感心して聞いていました。


 ふふふ、この様にたくさんのお友達を集めていけば、悪役令嬢への凄みが出るに違いありませんわ。

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