6・測定とチーム戦 2
「ラザリア、すまないがこれを待機している全員に配って置いてくれ」
先生がラザリア様に腕輪の入った箱を渡しています。
「この腕輪は?」
ラザリア様が尋ねますが、後で説明するとだけ言っていました。
「よし、準備ができた者からはじめろ」
「俺様が一番だぜ」
マズウェル様が一番初めにやるようです。
「燃え尽きろ! ファイアーボール!」
手のひらから火球が放たれ、的へ命中し、終え上がりました。
「へっ、こんなもんだぜ!」
「はい、次」
オーブル先生は相変わらず淡々としています。
「次は私ね」
ルッツ様です。
「貫け! アイスニードル!」
的を貫通していきました。
ルッツ様はマズウェル様に向かって、不敵な笑みを浮かべています。
他の方も次々に的へ、魔法を当てていきます。
次はセタ君の番です。
「ライトニング!」
雷が的を貫きました。
先生も含め、誰もが黙り込んでしまいました。
それもそのはずです。
限られた者しか扱えないと言われる魔法ですから。
セタ君、凄いです。
周りからも歓声が上がっています。
「次はフィリアか」
オーブル先生が始めろと合図をしました。
「いくよ」
私は魔力操作で花瓶ほどの大きさの空気の塊を極限まで圧縮してから障壁で囲み、その周囲を炎で包み込みます。
そして十を数えてから、
「行け! ファイヤーボム!」
指先ほどの火の玉を弾くように的へ撃ち出しました。
マズウェル様が笑いながら見ています。
「なんだあのちっこい炎は」
炎が的に当たり、
ボンッ!
音と衝撃により、的が消え去り、熱風が巻き起こりました。
全員が沈黙している中、一人私に駆け寄ってきた人がいました。
キルデ様です。
「君! 今の、今の魔法は間違いなくファイヤーボムなのだな!」
興奮しているのか、私の肩を掴み、揺らしまくります。
「キルデ主任、落ち着いてください」
オーブル先生が声を立てながら、キルデ様に駆け寄ってきます。
「おおお、落ち着いているとも! あの魔法理論が、マイラー老師が残された理論がああ……」
キルデ様はオーブル先生に引きずられていきました。
マイラー様、あの家庭教師のお爺様はやはり凄いお方でしたのね。
*
「全員配った腕輪をはめたな。 これより、二チームずつ試合をしてもらう。 試合内容は相手の旗を先に取った方が勝ち。 簡単だろ?」
オーブル先生のざっくりとした説明が終わりました。
「先生、ざっくりしすぎです。 この腕輪はなんなんですか?」
一人の生徒が手を挙げて尋ねました。
「それについては僕から説明しようか。」
キルデ様が前に出てきました。
「この腕輪についてだが、防御魔法と行動制御の術式が込められている。 攻撃を加えると青から赤へと障壁が変色するんだ」
キルデ様が腕輪の実演をしてくださいました。
キルデ様が腕輪の水晶を軽く押すと、青色の光がぼんやりと、キルデ様の周りに見て取れます。
「これだけは守ってもらいたい。 赤い障壁になった者への攻撃はやらない事。 腕輪が効力を失い、最悪怪我じゃ済まないからね」
キルデ様のお言葉でこの場が静まり返ってしまいました。
「安心しろ。 腕輪をつけている限り、この板でお前らの動きを止めることが出来るからな」
オーブル先生は一歩前に出て指示を出しました。
「一班と二班はここにある木剣を持って、グランドの枠の中に入って左右に別れろ」
グランドには四角い枠が引かれています。
「その枠の中から表には魔法は出ないから安心しろ。 あくまで魔法だけな」
「中の奴は……がんばれ」
「マジかよ!」
「先生ひどーい」
「信じてやってみろ。 ほい、始め!」
先生の合図で枠から薄い膜みたいな障壁が展開されました。
両チームとも、魔法が使える貴族が旗の守りについて、それ以外の人が敵陣に攻め入っていきます。
「今回から魔法が使えるようにはなったけど、今年の生徒は馬鹿正直だな。 そう思うだろクランツ君」
「そうです、基本に忠実すぎますね、先生」
近くにいたオーブル先生とクランツ様の会話が聞こえてきました。
「二班の方が優勢ですね」とクランツ様が言うと、
「先に攻め入った一班の二人が何もできずに沈められたのが効いたな」オーブル先生が戦況を語っていました。
「勝者ニ班!」
オーブル先生が一班の旗が取られた瞬間に二班の勝利宣言をしました。
「怖かったー」
「でも面白かったわ」
などの感想が聞こえてきました。
「続いて三班と四班の試合だ」
オーブル先生が次の試合の班を呼びました。
「よっしゃ! 叩き潰すぜ!」
マズウェル様の班は三班ですね。
マズウェル様が枠に入った時、クランツ様の呟きが聞こえました。
「……あのガキ」
どう言うことでしょうか?
「始め!」
「一匹ずつ、潰していくぜ!」
マズウェル様が叫びながら、宣言通りに一人ずつ倒していきます。
そこで事件が発生しました。
旗を守っていた生徒は平民の生徒……マズウェル様が容赦なく魔法を浴びせ続け始めました。
「マズウェル! あなた何やっているの!」
旗の守りについていたルッツ様が走り出しました。
魔法を浴びせられている生徒の障壁の色が赤になり始めましたが、男子は震えて立ち上がれずに身を丸めてしまっています。
「先生、あいつを止めろ!」
クランツ様が先生に指示を出しました。
オーブル先生は板を操作して止めようとしましたが……
「くそっ! 止まらないぞ!」
「キルデ主任、聞くが腕輪を外したあいつの動きは止まるのか?」
「止まらないね、あくまで身につけた時のみだからね」
「あのクソガキ! 入る前に腕輪を外していやがったからな!」
「なんですって!?」
キルデ様が、驚いています。
「いかん! 彼が危ない!」
オーブル先生も焦り出しています。
流石の私もあの行為には許せず、
気がつけば持てる魔力を全て使って身体強化の魔法を発動し、駆け出しました。
サシャ、約束を破ります。
瞬間的にマズウェル様の懐に入り込み——
「なんだ貴様! いつの間に!」
「やりすぎです!」
私はマズウェル様の顎を蹴り上げました。
マズウェル様は宙に浮き上がり、
背中から地面に落ちていきました。




