↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
79/84

2・シャリアさん

「よーしみんな席に着けー」


 オーブル先生が教室に入ってきました。


「今日は転入生を紹介するぞ、喜べ男子……いや、女子かな? まあいいや、入ってきなさい」


 扉を開けて入ってきたのは赤みの掛かった金色の短髪。 姿勢の整った女生徒だった。


「は……初めましてみなさん。 ラン……んんっ! シャリアと言います」


 ぺこりとお辞儀をするシャリアさんでしたが、クラスの中は騒然としていました。


「あ、あの先生……どうして殿下が女装してこのクラスに?」


 男子にバレバレでした。


 嫌がる殿下の栗色の髪の毛も染めたのに……。


「あー、みんな良く聞け。 殿下では無いぞ、シャリア君だ。 間違えないように」


 オーブル先生も困ったように頭を掻いています。


「先生、無理がありますよ。 このクラスで殿下を知らない人はいないじゃないですか」


 他の生徒も頷いています。


「しかたない……これよりこの件を口外したら、全員来年度の新入生と一緒に勉強だぞ? 連帯責任だぞ? 噂でも立ったら即だぞ? いいのかな?」


 それを聞いた私は、心の中で(冗談じゃありませんわ! そのようなことになれば、サシャから毎日お鼻をぐりぐりされたり、お家では幽閉状態で勉強させられますのよ!)


 そのような未来像が頭をよぎり、私は鬼気迫る勢いで立ち上がり、宣誓しました。


「先生! 我々はこの件に対して何も言わないことを、ここに誓いますわ!」


 クラス全員、一斉に立ち上がり『誓います!』と声を高らかにしました。 思いは同じだったようです。


 物語でよくある、みんなで強敵に立ち向かうでも、この間の演劇でも無く、ただ留年させられるかもしれないという脅しが――、Aクラスの心を一つにしたのです。


「やめてくれえええええ!」


 女生徒の制服を着た殿下だけが頭を抱えてしゃがみ込んでいました。


「聞き分けが良くて助かるよ。 あと、シャリア君はフィリア君の親戚だからね、間違えないでよね」


 シャリアさんは項垂れながら私の隣の席へ腰掛けました。



 その頃、Sクラスでは――。



「お前は確か、今年騎士団に配属されたセイラクールだったな」


 セイラクールの姿はランディル殿下そのものだった。


 ただ一つ違うのは胸の膨らみだけだった。


「はい! 騎士団長にはよくしてもらっています、リド様! それと私のことはセイラで構いません」


「わかったセイラ。 でだ、見た目は殿下に似てるが、その胸はどうにか出来ないか?」


「胸、でございますか?」


 セイラクールは自分の胸を下から持ち上げて言う。


「なっ、馬鹿なことをするな! 恥じらいを持て!」


 赤くなって彼女に注意するマイク。


「イコラス、舞台の時にお前が肩から掛けていたシーツの切れ端、あれ使えないか?」


「ああ、あったね兄さん。 確かにあれは長いから、胸に巻き付ければ隠せるかもね」


 イコラスは収納箱からシーツを取り出し、控えていたメイドに渡した。


「俺たちは外に出ているから、終わったら声を掛けてくれ」


 廊下に出た四人は安堵のため息をついた。


「あれで大丈夫か?」


 リドが話し始めて三人は頷いた。


 その横を、よそのクラスの生徒達が通り過ぎていくのであった。


    *


 お昼。


 私たちAクラスはいつものように食堂の真ん中のスペースにあるテーブルに座り、食事を始めました。


「僕は初めて来たけど、食堂とはいつもこんな感じなのかい?」


 シャリアさんが物珍しそうに見回しています。


「そうですわね、いつもこんな感じですわ」


 私がそう説明すると、ルッツ様が一言付け加えました。


「フィリア様が進んでやったことですよ。 他のクラスだと、見ての通り貴族と平民が別れています」


 なるほどという感じで再び見回していました。


「今ではここが一年Aクラスの場所になりましたからね。 まさに特等席です」


 ラザリア様もシャリアさんに教えています。


 シャリアさんはパンを千切り、口に入れながら頷いていました。


 しかし何故でしょう、周りからの視線がAクラスに集まっているような気がします。


「見られていますね」


「うん、見られているな」


「俺たちは見世物か?」


「いや、違う。 俺たちじゃない」


「ああ、視線が一点に集中している」


 Aクラスの男子の視線が一点に集中しました。


 シャリアさんです。


「みんな、どうかしたのかい?」


 スープを飲んでいたシャリアさんが小首をかしげています。


 気がついていないのは本人だけなようでした。


 ていうか、なんなんですか殿下は! 女の子の格好をしているからでしょうか、仕草が可愛いんですよ。


 これなら何もしなくても悪い人が寄ってきますわ!


 要注意ですわね!


 この日はAクラスはお昼休みが終わるまで雑談に花を咲かせていました。


「あんたたち、そろそろ授業が始まるんじゃないのかい? 私が困るわけじゃないからいいけどね」


 食堂の責任者である料理長様が注意してくるまで、時間を忘れていました。


 私たちは慌てて教室まで走って戻る羽目になりましたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。