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31・演劇会始まります

「お嬢様、朝ですよ」


「うさぴょんがとろけてとてもジューシーですわ……」


「お嬢様……」


「あ……ああ、サシャがとろけたうさぴょんと泳いでます……わたしも~……」


「……」


「ああああ……ああああ! 世界が回っています! 何事ですの!?」


 私は何故かベッドの上空でくるくる回っていました。


 そのままベッドへ落ちていく。


「ぼへっ!」


「お目覚めですか? お・じょ・う・さ・ま」


「はい、お目覚めになりました」


「本日はいよいよ演劇の本番です。 サシャも楽しみにしていますよ」


 布団を丸めながら楽しそうにしています。


 そうです、今日は演劇の本番です。


 貴族階級の家なら殆どの人が見に来ます。


 更に今年はランディル殿下もいますので、王様も来るはずですわ。


 今更ながら緊張してきました。


「フェリオ様とアリサ様、それにアレス様も観にいらっしゃいますよ」


 そうでした、お父様とお母様、弟のアレスも来るのでした。


 張り切りましょう!


 そういえばクランツ様にもお声を掛けていましたわね。


「お嬢様、なんだか楽しそうですね」


 サシャが私の身だしなみを整えながら話しかけてきました。


「そうですね。 みんなが観に来てくださいますからね」


 フフフと笑みが漏れました。


    *


 朝日が葉の隙間から地面を気持ちよく照らす並木道。


 いつもの学園とは違い、大勢の来賓の方たちが来ています。


 いつもの登校の道には貴族の馬車が何台も通り過ぎていきます。


 歩いてくる人は庶民の方で、生徒と一緒に来ている人も大勢見かけます。


 なんといっても今日の主役は一年生の生徒達ですから。


 校舎から講堂までの道では、出店の準備をしている上級生たち。


「今日はかき入れ時だ! がっぽり稼ごうぜ!」


『おおー!』


「出店の物は!」


『お客様のために!』


「お客様の財布の中身は!」


『俺たちの物!』


「馬鹿やってないで早く準備しなさいよ男共!」


 などと息巻いて、やる気が漲っている男子上級生たちが女生徒に叱られている場面も。


 他の上級生も来賓の方々の整理をしています。


「ここからは関係者以外立ち入り禁止でーす。 矢印に従って移動してくださーい」


 整理も大変そうです。


 私たち一年生は教室に向かいます。


「ごきげんよう」


 挨拶をしながら教室に入ると、みなさんからも挨拶を受けました。


 教室でも、今日という日に緊張している人が大勢います。


「やべー、俺緊張して眠れてないぞ」


「私もよ」


「フィリア様は緊張されていませんか?」


 突然私にも話が振られましたよ。


 答えはもちろん――。


「ええ、私も緊張していますわ」


 澄まし顔で落ち着くように深呼吸をしてみせました。


 内心汗をだらだら垂らしながら。


 ……ごめんなさい、本当はサシャに起こされるまでぐっすりでした。


 そうこうしているうちに、講堂へ向かう時間となり移動を開始します。


「さぁ、講堂へ向かいますよ」


 ラザリア様が音頭をとってクラスを引率します。


 校舎から講堂へ向かう通路の脇には上級生の出店が並び、来賓の方が連れてきていた小さな子供達が食べ物を頬張っていたりしています。


「おいしい!」


「ははは、よかったな」


 仲の良さそうな親子があちらこちらで出店を見ながら歩いていたりしています。


「パパ、私の欲しいものちゃんとわかってますよね」


「もちろんだ! パパに任せなさい、ミランゼちゃん!」


 他にも「僕もあれ欲しい」と子供が親にせがむ様子がちらほら見えますね。


「おねえちゃん、演劇頑張ってね」


「うん、がんばるよ。 ちゃんと見ててね」


 と、他のクラスの生徒の兄弟も応援している姿もありました。


 私たちはそれらを横目に、講堂へ入っていきました。


 講堂では一年生達が指定されている席で、学園長やカトラス生徒会長のお言葉を聞かされ、開演する運びとなりました。


 最初はDとEクラスの演劇からです。


 講堂内も人が詰めかけ、あっという間に満席となりました。


 講堂内の明かりが落ち、ナレーションが始まりました。


 お話は一冒険者が旅先で色々な事件に遭遇し、やがて事件の裏にいる魔族を倒す話です。

 一人で旅立ち、冒険者となって仲間を増やして、モンスターと戦い、街では感謝されたりと、大勢が一丸となって楽しんでいるのが感じられました。


 特に最後の魔族との戦いが面白かったですわ。


 光魔法を使った疑似的な火魔法や水魔法。


 剣戟などが見応えでしたわ。


 観客も惜しみない拍手を送っています。


 なかなかどうして、心躍るお話でした。


 次のBとCクラスの準備が終わるまでの間、休憩時間となります。


「次の話はどんな話なのでしょうね、楽しみですわ」


「はい、私も楽しみです。 フィリア様」


 私の前に座っていたレコラさんも振り向きながら目を輝かせ、楽しみにしているようです。


 次の演劇の開演時間です。


 明るい音楽から始まり、演者達が舞台せましと飛び回っています。


 お話は、ある街の男女の叶わぬ恋の物語です。


 笑いあり、涙ありと観客を沸かせています。


 そんな劇に私も夢中になっていきます。


 しかし、最後は二人は別々の道に進むことになります。


 主人公達の最後の台詞が印象的でした。


「僕たちはこれで良かったのだろうか……」


「私たちは何処で間違えたのでしょうか……」


 それぞれ違う場所、立場で昔を思い出すシーンには涙しましたわ。


 劇が終わってしばらく静まりかえっていた中、小さな拍手が響き、それがやがて大きな拍手となり、幕が下りました。


 凄かったですわ!


「感動しましたわ!」


 隣に座っていたラザリア様がハンカチで目元を拭っています。


「はい! 次は私たちの番です! 頑張りましょう!」


 レコラさんがやる気に満ちあふれていますわ。


 私も負けないよう頑張りますわ!


 私たちは準備を始めるために、舞台へ向かいました。

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