30・通し稽古終了です
通し稽古二日目。
実際に舞台の上で演じます。
魔導具を使用して、明かりを当てたり、場面が切り替わるときには明かりを全て消して、係の人たちが道具を配置していきます。
舞台の下では道具係だった生徒達がルッツ様の指示で鉄の棒を剣に見立てて打ち合っていたり、雄叫びを上げています。
音楽担当の生徒数名もラザリア様が指揮を執り、弦楽器や太鼓、管楽器を使って色々な音を奏でています。
私たちのクラスはSクラスと合同ですが、他のクラスと違い人数的に不利なので大掛かりな物は出来ませんが、そこはレコラさんとラザリア様達が巧いことその場面の特徴的な物を配置していきます。
なので、演技に掛かっていると言っても過言ではありません。
責任重大ですわ。
「フィリア様、そろそろ次の出番です」
レコラさんが呼んでいます。
「今行きますわ」
私は台本を置いて、舞台に上がります――。
「アルマーク家は取り潰しだ!」
リド様扮するダラント王が謁見の間での台詞をいうと、兵士役の人が返事をしました。
場面が変わりアイラの実家、アルマーク家と移り、兵士に連行されるアイラの両親。
「私たちは知らん!」
父親役を演じる兄サイラス様。
「そうよ! 私たちは無関係です!」
母親役を演じる弟イコラス様。
なかなかの演技力ですわ。
その後登場したマイク様扮するエリアル王子。
以前より巧くなったマイク様。
そして中盤の私と殿下の場面を迎える。
殿下はこの練習中は適当なカツラを被り、衣装は劇で使う衣装の長袖長ズボンに身を包んでいます。
私もカツラを被り、殿下と同じ衣装を身に纏っています。
ここでは剣による殺陣を行いました。
なかなか巧く立ち回れたと思います。
舞台上での練習は順調に進み、ラストシーンまで行われました。
レコラさんやラザリア様による些細な注意点のみ言われて劇は完成間近となりました。
そして通し稽古三日目。
最後の通し稽古が行われ、問題なく終了しました。
「みなさん、後は本番を迎えるだけとなりました。 これまで頑張ってきましたので、本番は今までの成果を出し切って、劇を成功させましょう! 本日はお疲れ様でした」
『お疲れ様でした!』
クラス全員の挨拶と共に、三日間の通し稽古が終わりました。
後は舞台の後片付けを行うだけです。
「手分けして片付けてしまいましょう」
ラザリア様のお言葉で全員片付けを始めました。
「これ何処に仕舞うんだ?」
「あっちじゃないか?」
「こいつ向こうまで運ぶんで誰か手を貸してくれ!」
「俺の台本何処行ったんだ?」
「仕舞い込んだんじゃないの?」
「小物はこっちまでお願い!」
講堂の袖裏に繋がる物置部屋。
割り当てられた場所に次々と積まれていく箱。
部屋はオーブル先生が確認後、扉に施錠して終了です。
すべてが終わり、全員で教室に戻るとオーブル先生が教壇に立ちました。
「全員おつかれさん。 後は本番を迎えるだけだぞー」
先生はクラスを見渡して続けました。
「当日は外部から人が来るからな、面倒ごとは起こさないように。 はい今日はお終い、解散」
オーブル先生は教壇を降りて教室を出て行きました。
教室では「終わったー」などの声が上がっていました。
「フィリア様お疲れ様でした」
レコラさんや他の方達も何故か私の周りに集まってきました。
「ええ、みなさんもお疲れ様でした。 当日も頑張りましょう」
私の言葉にみんなも頑張ろうと言ってから帰って行きます。
「私たちも帰りましょうか」
隣にいたラザリア様とルッツ様に声を掛けてから寮へ帰りました。
*
「お帰りなさいませ。 お嬢様」
サシャが部屋の中で出迎えてくれました。
「ただいま、サシャ」
サシャに返事をしてからの大の字になりながらベッドへ飛び込む。
この瞬間がたまりませんの!
ぽよんぽよんと弾力のあるベッドに両手足を広げていると、サシャから小言を言われました。
「お嬢様はしたないですよ、お客様の前で」
何か言ってますが気にしません。
「う~……今だけ~ですわ~」
枕に顔を埋めながら言うと、頭に何かが覆い被さってきました。
「わっ! 頭が重いです、なんですか?」
覆い被さってきた物に手を当てると、それはもふもふしていました。
「キュー」
「なんだ、うさぴょんですか」
私はうさぴょんを頭から離してからの抱きしめ。
ベッドの上でごろごろ転がり回りました。
「ハァ……」
なんだかサシャがため息をついていますが、今はうさぴょんのもふもふを堪能するのです。
「普段の彼女はいつもこんな感じなのかい?」
おや? 聞き覚えのある声がします。
「恥ずかしながら、概ねこんな感じです」
サシャは誰と話しているのかしら?
「忘れ物を取りに来たら面白い物が見れたね」
なんか笑われています……。
転がるのを止めてチラリと声がする方を見ると、そこには呆れたサシャと笑っている殿下が目に入りました。
私は何事も無かったかのようにうさぴょんを置き、ベッドから降りて身だしなみを軽く整えてから椅子に腰を掛けてカップを手に持ち口にしました。
「お嬢様、まだお茶は入っていませんよ」
私は顔を真っ赤にしながら恨めしそうにサシャを見ました。
「サシャ~……」
一部始終を見ていた殿下はお腹を抱えてひたすら笑っていました。




