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28・殿下のトラウマ

 翌日――。


 私とレコラさんは用紙を持ってSクラスへ向かっています。


 講堂での練習予定表です。


「フィ……フィリア様、私なんかがSクラスへ行ってもいいんですかね……」


 確かにレコラさん一人だと気が気ではないんでしょうね。 私だってこの劇がなければお近づきにもならなかったでしょうし。


「大丈夫ですわよ、みなさんなんだかんだでお優しいですし」


 話しながら歩いていると、あっという間にSクラスに到着しました。


 私は教室のドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえてきましたので、扉を開けて中へ入りました。


 中は豪華絢爛。


 椅子なんてソファーですか。


 物を書くとき大変でしょうね。


 天井にはシャンデリア。


 移動式の黒板。


 床を見ると一面柄物の絨毯。


 とても勉学をする環境とは思えません。


「おや、今日は二人揃ってどうしたんだい?」


 殿下が聞いてきました。


 私はレコラさんから用紙を人数分受け取り、それぞれに渡していきます。


「講堂の使用許可取れたのか……ふむ」


 Sクラスの面々は用紙を眺めています。


「レコラ君、説明お願いできるかな?」


 突然の殿下からの説明の催促。


 レコラさんはカチコチになっていますが、なんとか説明を始めました。


「は、ひゃい。 にに、日程は……書いてある通りです。 講堂使用きき期間は、三日間です」


 緊張しながらも、大事なことを伝えたレコラさん。


 殿下もニコニコしながら「ありがとう」と言っていました。


 私とレコラさんは用事が済むと、Sクラスの教室を後にしました。


「き、緊張しました……はぁ」


 流石にレコラさんは殿下たちの前で説明するのが大変だったようです。


「お疲れさまです。 レコラさん」


「フィリア様は平気なのですか?」


 そうでした。 平民であるレコラさんなら特に、この国の王族と直接話す機会なんて殆どありませんよね。


「生まれた家が家ですから、それでも、最初はランディル殿下と話すときは緊張しましたよ。 レコラさんもある意味凄い事ですわよ。 学園生活で、王族と話せるのですから」


 私、いいこと言いましたわ。


「そ、そうですよね。 そう考えると楽になります。 うちのクラスにいると、その辺が鈍ってくると言うかなんというか……考えてみれば、フィリア様も伯爵家の人でしたよね。 フィリア様は最初から他の方とは違うから話しやすいというか、そこの感覚がどうも鈍ってしまって……」


 は、話しやすいなら良いことですわね。


 私はレコラさんと話しながら教室へ戻りました。


 教室に戻ると全員劇の話をしていました。


 どうやら、ラザリア様とルッツ様が道具や背景作りの進行をしていてくれていたようです。


 私とレコラさんは貰ってきた用紙を全員に配り、レコラさんによる注意点などが説明されました。


 私はその隣で人形のように立っているだけでしたわ。


    *


 講堂での通し稽古の日――。


 場面ごとに配置される道具や背景。


 これにはセタ君やトーラス君といったクラスの男子生徒が頑張っていました。


 女生徒達は小物や衣装などの準備が進めていきます。


 主演の私たちも衣装に袖を通したりしていましたが、殿下だけは別の場所で合わせると言って衣装を借りていました。


 その殿下がこちらへ向かってきます。


「フィリア君、今日そちらに行っても良いかな?」


 小声で話しかけてきました。


 そう言って、殿下の視線がとある人物に向きました。


 ――マイク様です。


 はい、納得しました。


 どうやらこの件に関して、苦手意識が芽生えてしまったようですね。


 私は殿下から衣装を預かり、レコラさんに話しかけました。


「レコラさん。 本日の練習が終わりましたら私の部屋に来てもらえますか?」


 レコラさんは私を、そして後ろにいる殿下を見て、顔が強ばりました。


「ああ、あの、私何かイケないことをしましたか?」


 ああ、勘違いさせてしまいましたね。


「違いますよ」


 私はレコラさんの耳元で小さな声で話しました。


「ランディル殿下の衣装合わせですが、一応レコラさんにも確認して欲しいのです」


 それを聞いたレコラさんは、首をかしげながらも了承してくれました。


 そうですね、レコラさんだけだと心配ですから、チャーニさんにも声を掛けましょう。 チャーニさんは以前にも私の部屋へお越しになられたことがありましたからね。


 チャーニさんはラザリア様と一緒にいました。


 そして、ラザリア様はこちらをじっと見ています。 正確にはレコラさんを――。


 私はそこは気にもせず、事情を説明してから二人にも一緒に来てもらえることになりました。


 殿下の方は、リド様が一緒に来ることとなりました。


 クランゼ兄弟は、マイク様のお手伝いという名目で監視役だそうです。


 最近のマイク様の扱いが……。


 私が気にしても仕方ありませんわね。


 舞台の方は順調に進み、初日にしては良い感じで終わりました。


 そして私は皆を連れて寮へ向かいました。


 寮ではリド様の臨時入館の手続きをして、入ってもらいました。


 最初の頃のマイク様は、どうやら強引に入ってきてしまっていたようですが……。

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