27・少し打ち合います
翌日の放課後、いつものように畑に行くと、そこには豪華な小屋と、テラスが設置されていました。
そういえば登校前にサシャが言っていました。
「放課後には出来上がっているはずです」と。
それにしても、とても立派ですわね。
サシャから貰った鍵を使って扉を開けると、中も素晴らしい物となっていました。
「着替えもここで出来ますわね」
着替え用のクローゼットの横には細長い収納棚があり、中には農作業用の道具が仕舞われていました。
そして、お湯を沸かす魔導具まで設置されて、尚且つ、折りたたみ用の椅子やテーブルまであります。
「流石サシャですわね」
入り口の横に、小さな扉があるのを見つけました。
気になって表に出て見ると、そこには更に小さな小屋が一つありました。
「サシャが言っていたうさぴょん用の小屋ですね」
私は少し離れて小屋を眺めました。
「いいじゃないですか」
私が感心していると、後ろからセタ君に呼ばれたことに気がつきました。
「師匠、今日はどのような訓練をするのでしょうか」
訓練や修行もいいのですが――。
「セタ君は劇の準備の方はよろしいのですか?」
「はい! 大丈夫です! 僕の出番は通し稽古になってからです。 それまでは配置を記憶しているだけですから」
なるほど、設置係ですか。
畑の方も、雑草は取り終わっていますし、剣の打ち合いくらいなら、少し付き合いましょう。
「今日は私と打ち合いしてみますか?」
それを聞いたセタ君は嬉しそうでした。
私はアイテム袋から剣を取り出し、地面に円を描きました。
「この円の中で打ち合います。 決して外には出ないでください」
セタ君はその円を見て顔が引きつっています。
「師匠……円が小さくないですか? これだと避けられないような……」
円は二人が入って剣を伸ばし合えば必ず当たる距離でしかないのです。
「もちろんですわ。 打ち合うのに逃げる必要ないですわよね?」
セタ君は黙って円を眺めています。
あれ? サシャから昔、こうやって剣を覚えさせられましたわよ?
「とにかくやってみましょう。 いいですね? セタ君は剣二本持ってください」
私とセタ君は円の中に入り、お互い木剣を構えました。
「セタ君から来てください」
合図をすると、セタ君は二本の剣を振りかざしてきました。
それを私が打ち返します。
セタ君は二本とも打ち返されたのに驚きつつも、変則的に攻撃を繰り出してきました。
(サシャより遅いですね)
「セタ君、私からも攻撃しますので巧く捌いてください」
セタ君の攻撃をいなしてからの反撃。
「うわっ!」
私の剣がセタ君の右手を掠めました。
「まだまだですわよ」
先ほどより速度を上げて剣を振るうと、セタ君も当てられないように必死で私の剣を弾き返していきます。
流石に左手の動きが悪くなってきましたね。
まだまだ慣れが必要なようです。
「セタ君、左腕をもっと鍛えましょう」
彼の剣を一撃で弾き飛ばして、一旦終了です。
後ろから拍手の音が聞こえ振り向くと、いつもの五人組がいました。
「フィリア君は凄いね。 圧勝じゃないか」
殿下が感心していました。
「フィリア! 俺ともやろうぜ!」
リド様はとてもやりたそうにしています。
「リド、君はこの前負けたばかりだろ?」
マイク様がメガネを指で押し上げながら言います。
「何言ってんだ? こんな面白そうなことやってんだ、やらなきゃ損だろ」
相変わらず楽しそうに言いますよね、リド様は。
「わかりました。 ここでの打ち合いは、防御魔法の無い場所なので、基本的に寸止めをしてください」
私は注意点だけ言いました。
「そういやフィリアはセタみたいに二刀流いけるのか?」
そんなことを言ってきました。
「出来ますが、いいのですか?」
聞き返すと、即答で返ってきました。
「それで頼む、俺も二本でやる」
私とリド様は円の中に入ると殿下が近づいてきて、僕が合図をするよと言いました。
「はじめ!」
殿下の合図でリド様が右手の剣を振り上げてきたので、それを私は左の剣で受け止め、すかさず右の剣で横っ腹目掛けて振りました。
リド様は即座に左の剣で受け止めます。
「相変わらずその細い腕で、重い攻撃してきやがる。 どうなってんだよお前」
そんなことを言われても……。
とりあえず、今はリド様と打ち合いましょう。 徐々に速度を上げて。
「ちょ、ちょちょちょ! はえーよ!」
リド様の剣を二本とも吹き飛ばしました。
リド様は息を切らせてその場にしゃがみ込んでしまいました。
「なんで、息も切らせてないんだよ」
サシャとやり合っていたらこんな物ではありませんでしたが、これが普通なのかしら。
「リドも満足したようだし、劇の練習をしようじゃないか」
殿下が言うと、横にいたマイク様とクランゼ兄弟も始めようかと言っています。
そうですよね、演劇が優先ですからね。
私は畑と、しゃがみ込んでいるリド様とセタ君を見ました。




