25・リド様との対戦です
クランツ様たちが帰られてから、殿下が私に話しかけてきました。
「この前、僕もキルデから聞いたんだよ。 直接名前を聞いたわけじゃ無いけど、まさか君だったとはね」
殿下は何故か楽しそうに話してきます。
「アルベン領はここ一年、大変な目に逢っていたからね。 一ヶ月ほど前にキルデが赴いたことを、彼が帰ってきてから聞いてね、色々奇抜な発想をする興味深い令嬢がいて、それに触発されてアイデアが色々沸いたと話していたからね」
なんですかそれ、私は普通ですよ。
「それよりもランディル殿下もこれから練習ですか?」
私は殿下がここに来た理由が練習だけとは思えなかったので聞いてみました。
「そうだったね。 実はリドが彼に用事があったみたいでね。 僕はついでさ」
そう言って殿下の顔はセタ君に向きました。
「え、俺ですか?」
驚いたセタ君に、リド様が木剣を持ちだし、
「おうよ! お前と剣を交えたくてな! それとついでに、王様の役の練習だ!」
まさかと思いますが、剣の打ち合いをしながら役の練習ですか?
私は殿下を見ると、殿下と他の三人も「またかー」と言っていました。
セタ君が私を見てきます。
もう、仕方ありませんね。
「セタ君、左腕だけでやってみましょう。 これも修行ですわ」
私の言葉にリド様が不思議そうな顔をしました。
「ん? なんでフィリアがそんなことを言うんだ? それに修行ってなんだ?」
そうなりますよね。
私はリド様に話しました。
「彼、セタ君は私の弟子となりました。 なので修行もかねていますの」
そう言うとリド様が少し考え込んでから私を見ました。
「気が変わった。 フィリア、俺と勝負しろ!」
えええええ!?
何でそうなるんですか?
殿下助けてください!
私は助けを求めるように殿下を見ましたが、殿下も興味があったみたいで、
「今から訓練場に行ってみようか」
はい、みんなして訓練場に行くことになりました。 はぁ~。
*
「勝負は三本勝負。 魔法無しで剣のみで」
殿下がルールを決めました。 ですが……。
「殿下よ、流石に魔法無しじゃフィリアに不利だろ。 せめて身体強化有りにしようぜ。 俺は使わないからよ」
自信満々に言うリド様に対して、セタ君が助言をしました。
「リド様、それではリド様が危ないです! せめてリド様も身体強化してください!」
そんなセタ君の助言にもリド様は、
「大丈夫、大丈夫。 所詮女の力だ、負けはしねーよ!」
少しむっとしましたわ。
私もリド様に向かって言っておきます。
「では、危なくなったら迷わず使ってくださいませ」
私の台詞にリド様もにやりと笑いました。
「言うじゃねーか……なら俺に身体強化を使わせるくらいの攻撃をしてみな」
言いましたね。
「言質とりましたよ? ですよね、ランディル殿下」
「ああ、聞いたよ」
殿下からも確認がとれました。
久しぶりに私の知らない人との対戦です。
少し楽しみですね。
「リドもそれでいいね?」
殿下がリド様に確認を取りました。
「おう!」
その言葉を合図に試合を始めます。
「では、三本勝負、はじめ!」
殿下の手が振り下ろされました。
まずはリド様がどんな物か見てみましょう。
「俺は遠慮はしないぜ!」
勢いよくこちらに突っ込んできます。
「くらいなっ!」
剣を上段から振り下ろしてきます……が、随分遅いですわね。
私は片手に持った剣で受け止めます。
リド様は剣に体重も乗せてきました。
まさか受けきられるとは思っていなかったのでしょう、驚いた顔をしています。
「や、やるじゃねーか」
一旦退いたリド様が再び斬りかかろうとしましたが、私はすかさずリド様の懐に入り込み、下から剣を弾き飛ばしました。
「勝負あり! まずはフィリア嬢の一勝だ」
殿下の審判が下りました。
「まぐれだろ……次から勝てると思うなよ」
これから本気で来るのですね、では私もそれに答えましょう。
「リド、準備はいいかい?」
「ああ、いつでもいいぞ」
リド様の飛ばされた剣を殿下が拾って渡しています。
「二本目、はじめ!」
合図と共に、リド様が魔力を込めました。
身体強化ですね。
なら、私も魔力を纏わせます。
「くらえっ!」
一瞬で私の懐に入り込んだリド様。
剣が真横から私の胴目掛けてきました。
私は素早くリド様の頭上を飛び越え後ろに回り込み、肩を目掛けて剣を振り上げましたが、リド様が読んでいたのでしょうか、ギリギリで体を反らし、私の剣を回避して、距離を取りました。
「……まじかよ。 こりゃ、セタの言った通りに本気でやらねーとやばいぞ」
次は全力で来るようです。
しかし、勝負は勝負。
負けませんわ。
私は距離を詰め、相手に剣で防がせるように剣を振るいました。
「これでどうでしょうか」
剣を上下左右から繰り出します。
その都度リド様が後ずさりながらなんとか躱していきます。
これで終わりです!
再び剣を弾き飛ばし、剣先を喉元にあてました。
「勝負あり。 これでフィリア嬢が二勝したわけだが、リドはどうする?」
殿下の言葉にリド様は悔しそうに私を見てきます。
「まだだ。 まだ、三本取られたわけじゃねえからな」
流石に見学していた人たちからざわめきが起き始めました。
「誰だ? あの農作業服を着ている奴は」
「この学園の生徒?」
「いや、外部からのお客じゃない? リド様が剣を交えるくらいだもの」
・・・・・・そうでした。 私着替えていませんでしたね。
長引かせると面倒になりそうなので、次は一瞬で終わらせましょう。
「三本目、はじめ!」
殿下の合図と共に、私は闘気を纏い、一瞬で懐に飛び込み、剣をリド様の首に当てました。
「な……い……いつのまに」
リド様は頬から一滴の汗をたらしながら驚愕しています。
それに静まりかえってしまった訓練場。
「しょ、勝者フィリア嬢」
殿下も驚いてしまっています。
「おお! 流石師匠だ! 凄すぎる!」
セタ君が興奮してしまいました。
「うそ……フィリア様ってこんなに強かったの?」
ルッツさんまで、トーラス君は目を見開いたままですよ。
「あああああ! くそっ! 負けたあああああ!」
うがーっと叫びだしたリド様、大丈夫でしょうか? 私、闇討ちとかされませんよね?




