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20・掴んだようです

「お嬢様、前に練習していた時のようになされたらいかがでしょうか」


 サシャが練習の時に見ていたあれですか。


 あれは台詞合わせの時に失敗してませんでしたか?


「あの時のお嬢様と、学園でやられていたのは全くの別人と感じました」


「そうなんですか!?」


 私は驚いてしまいました。


 そんな事があっていいのでしょうか!


「そうだったのですか?」


「はい、全然違いましたね」


 サシャが言うなら違うのでしょうね。


「サシャ君、その練習の時とは全然違うというのは?」


 殿下がサシャに尋ねました。


「私が知る限り、学園の台詞合わせの時より断然良かったですね」


 だ、断然ときましたか! そこまで違いましたの!?


「も、もう一度やりますわ!」


 今度こそ——。

 

 もう一度思い出してみましょう。


 あの、疲れた感じのクランツ様を……。


 …………。


「……これで、どうだろうか」


 サシャと殿下は「ほー」と感心してくれているみたいです。


 チャーニさんも笑顔で頷いてくれています。


 ラザリア様は……。


 顔を伏せて体を震わせていました。


 私は気になったので、近づいて尋ねました。


「ラザリア、どうかしたのか? 俺の演技に何かおかしなところでもあったか?」


 私はラザリア様の顎を手で持ち上げると——、


 顔を真っ赤にして震えているラザリア様でした。


 私はサシャや殿下の方を向いて、ラザリア様はどうしたのかしらと聞いてみたら、二人して「あぁ〜」と何か悟った言い方をするのです。


 もう一度ラザリア様を見ると、チャーニさんの背中をばしばし叩いていました。


 ほんと、どうしてしまったのかしらラザリア様は。


    *


「フィリア君とラザリア君もまともになった事だし、練習を再開しようか」


 殿下がひらひらのドレスを翻しながら言いました。


 ラザリア様はチャーニさんにハリセンで叩かれて普通になりました。 手にはいつか見たノートを抱えて。


「そ、それではお二人の稽古を始めたいと思います。 よろしいですね?」


 私と殿下は「お願いします」と挨拶をして始まりました。


 舞台はゴミ捨て場から、私の台詞からです。


「……おい、そんな所に座られているとゴミが捨てられないんだが」


 いい感じにできたと思います。


 続いて殿下の台詞ですわ。


「申し訳ありません」


 舞台説明はチャーニさんがやってくれます。


「ザックに言われて、ゴミ箱の上から降りるアイラ、ザックはゴミを捨て、その場を立ち去りましたが、アイラの表情が気になり振り向くと、アイラは倒れていました。 ザックはアイラが着替えたであろう衣類とアクセサリを手に持ち、アイラを抱えて自宅に戻りました。 そしてアイラは目を覚ましました」


「……ここは?」


「やっと目が覚めたようだな……」


「あなたは?」


「……ザック」


「ザック……。 あ、失礼しました私は……」


「興味がない。 飯を用意してやったから食ったら出ていってくれ」


「申し訳ありません。 しかし私にはお礼をするお金もありません……。 そうだ私のアクセサリを売れば……あら、どこへやったのかしら?」


「お前の持ち物らしいものはそこのテーブルに置いてある」


「そうです、これを売れば多少お金ができます。 迷惑ついでにもう一つお聞きしたいのですが、これを売れる所はありますか?」


 ここでチャーニさんのナレーションです。

 

「ザックはアイラの発言に面倒臭さを感じて、とにかく今は飯を食っておけ、それとお前が行っても安く買い叩かれるだけだと言って、アイラについて行くことになります」


 そこで聞いていたサシャが言ってきました。


「お嬢様、ザックの言葉にもう少し面倒臭さを入れてみてはどうでしょうか?」


「お、サシャ君。 いい所に気がついたね。 僕も薄々感じていたんだ」


 殿下もですかー。


 ラザリア様はしきりにノートに何やら書き込んでいます。


 チャーニさんも台本に書き込みを入れています。


 みんな頑張っていますので、私も頑張りますわ!


    *


 ランディル殿下とフィリア様の台詞合わせが始まりました。


 お互い女装や男装をして。


 滅多にお目にかかれないシチュエーションですよこれは。


 進行役のナレーションは私、チャーニがやることになりました。


 ラザリア様だと心配なので……。


 フィリア様は一度役を掴めば順調に台詞を言っていきます。


 それにしてもランディル殿下は、普通に女の子にしか見えません。


 本物の女性だったら、さぞ求婚の申し込みが殺到したことでしょう。


 そろそろ私のナレーションの番です。


 ……なんとか言い切ることが出来ました。


 ラザリア様を見ると、何やらノートに書き込みを始めていました。


 ランディル殿下とフィリア様は順調に進んでいます。


 そして私のナレーションを言った後に、メイドのサシャさんがフィリア様にアドバイスをしていました。


 私は台本に今の言葉を書き込みました。


 ラザリア様は……先ほどから何を書いていらっしゃるのか気になり、後ろからコッソリ覗き込んでみたら、フィリア様のお姿がいっぱい描かれていました。


(なんですか!? その無駄に高い画力は! しかも描くのが速いです!)

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