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17・指導役に名乗り出ました

「マイク、これは劇なんだ。 しっかりやってくれたまえ」


「しかし……しかし殿下! 殿下に対して追放などと……」


「マイクがそれだと、皆に迷惑がかかるんだよ。 わかってくれ」


「……殿下」


 思ってしまっても不敬かもしれませんけど、ランディル殿下とマイク様の三文芝居を見せられているAクラスの面々と、笑いを堪えているオーブル先生。


 ど、どうしよう……平民の私が止めに入っていいの?


「あー、二人とも。 進行役のレコラ君が困っているからちゃんとやろうか」


 流石オーブル先生!


 こんな時は役に立ちます!


「レコラ君、すまなかった。 マイクには後で言い聞かせておくよ」


「い……いえ」


「最初からやり直すよ。 レコラ君、合図を頼むよ」


「は、はい!」


 ランディル殿下が優しい方でよかった〜。


「では、初めてください」


 私が合図をするとマイク様が台詞を言います。


「アイラ・イル・アルマーク! き、きき貴様が貧民をそそ、そそのかし、こここの国を混乱に貶めようとした罪! こここ、この場で私が断罪しようではないか!」


 マイク様はなんとか台詞を言いました。


 続いてランディル殿下です。


「待ってくださいませ! わ、私には身に覚えが」


 上手いですね。


 これで声がもう少し高ければ完璧!


 アイラが退場してからの王様の台詞、リド様の台詞。


「むぉっほん! 息子よ先ほどの話、誠か?」


 意外です、リド様上手いですね!


 なんだかんだ進んでいき、舞台はアイラの実家へ。


「こぉぉぉんのぉぉぉ! アルマークェエの恥晒しもんがああああ!」


 父親役と母親役、クランゼ兄弟は直前まで言い争っていましたが、兄のサイラス様が父親、弟のイコラス様が母親役をやることに決まりました。


 それにしても……あの言い方は面白いですね。


「うちからこんな子が出るなんて、もう顔も見たくありませんのよ」


 意外にも弟のイコラス様の方が演技が上手いです!


「……そんな、私はどうなるのですか?」


 ランディル殿下は淡々としています。


「お前なんかもぉぉぉうちの人間ではないわはぁ! 出てゆけぇぇぇ!」


 これ、この言い方採用しようかしら。


 そんなこんなで貧民街の裏手の場面です。


 ここでザックとアイラの出会いのシーンです!


 まずはフィリア様のザックの登場シーン。


 ザックがゴミを袋に詰めて捨てにいくところからです。


「うぁ〜……だりぃ〜……」


 ………………。


「ん? おいテメー、そんな所に座ってると邪魔なんだよ、メンドクセ〜……」


 …………………………。


「……すみません」


 ランディル殿下の演技は可もなく不可も無いですね。


「……あっ」


 ここでアイラが倒れます。


「バタリ」


 ザックがアイラに近づいて、拾い上げて帰ります。


「あぁ〜、変なもん拾っちまったぜ〜」


 …………………………酔っ払いですか?


 はっきり言って、フィリア様の台詞の言い方が一番酷いですね。


 殿下も笑いを堪えるのに必死なようです。


 他の人を見てもみんな肩を震わせています。


    *


 なんとか最後まで台詞合わせを終えました。


 思いの外悪くはありませんでした。


 ……1人を除いては。


 私は申し訳なさそうにフィリア様を見ました。


 本番までになんとかなるのかな?


 そんなフィリア様は、授業が終わるとお付きのメイドに連れていかれ、帰ってしまいました。


 あれ? 普通はメイドを連れて帰るのではないですか?


 授業中もそうでしたが、メイドの方が立場が上なのかしら?


 貴族様の世界はわからないわ……。


「レコラ君、少しいいかな?」


 私は先生に呼ばれました。


「なんでしょうか?」


「フィリア君だけどね、もう少しどうにか出来ないかい?」


 言わんとしていることは伝わりました。


 私も同じ気持ちです。


 私と先生の言葉が重なりました。


『あれは酔っ払いだよ』


 そんな時、先生と私の会話に入ってきた人がいました。


 ラザリア様です。


「お二人とも、私にフィリア様の台詞や演技の指導をさせてもらえないかしら? 悪いようにはしません」


 ラザリア様はいつにも増して真剣な眼差しで先生と私を見ています。


「ラザリア君、任せても大丈夫かい?」


「問題ありません。 フィリア様は昔からのお友達ですから」


 ふふふと微笑むラザリア様の後ろで、何故か頭を抱えているチャーニさんがいました。


    *


 チャンス到来!


 我が世の春ですわ!


 これでいつでもフィリア様のお側にいられますわ。


 そしていつでも私の前で麗人姿のフィリア様に……うふふふ。


 それにしてもオーブル先生も、レコラさんもあんなに美味しい話を私の側でしてくれてとても感謝しています!


「ラザリア様? まさかとは思いますが、邪な考えをお持ちじゃないでしょうね」


「な! チャ、チャーニさん何を仰いますの!?」


 ジト目で私を見てくるチャーニさん。


 最近チャーニさんがペナに似てきました。


 全然違うのに、どうしてかしら。


 私の考えを読んでいるようです。


 チャーニさんが一歩一歩近づいて来て、私からずっと視線を逸らさずに見て来ます。


 私は視線をほんのちょっとだけずらしました。


「…………やっぱりですか」


 チャーニさんが何かを悟ったみたい。


 最近のチャーニさんは遠慮が無くなってきたように感じます。

 

 それでいて妙に勘が鋭い。


 フィリア様麗人計画の発案者なのに……。


 おかしいですね、味方のはずが……味方ですよね? ねっ?

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