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15・君に決めた!

 その日の夜。


 ベッドに腰を下ろし、私は台本を広げてもう一度傭兵ザックの人物像を思い描きます。


 以前、殿下の前で演じた男性は、荒くれ者扱いでしたからね……。


 何がいけなかったのでしょうか。


 そこで私はギルドを思い出しました。


 イジメのような愛の鞭というのにも気にはなっていましたし、ギルドならザックみたいな男性がいるかと思い、セタ君たちに頼んでギルドまで赴きましたが、しっくりくるお方はいらっしゃいませんでしたし。


 もう一度、台本を読み直しましょう。


 見落としているところがあるかもしれません。


 私は台本をペラペラめくりました。


 お城のパーティーから始まりますわ。


 パーティー中に王子様が、アイラに貧民を唆して、反乱を招いたといわれ、追放処分を言われ追い出されてしまいます。


 王子は笑いながら連れ出されていくアイラを眺めるのです。


 王子は暇つぶしの余興で行ったのです。


 最低ですわね。


 アイラは家に帰ると、今度は両親からも家を追い出されてしまいます。


 城からの使いが先に来て、王子の不興を買ったとか言われて。


 アイラは王都の外に知り合いと呼べる人たちはいないので、貧民街の裏路地に行きつき、その場で泣き崩れて朝を迎えるのですね。


 そこでゴミ箱の中からボロボロの服とナイフを見つけ、着替えるのですね。


 ここから場面が変わってザックが登場です。


 城の門の周りは何やら揉めているようなので、近寄らないようにして家に戻る。


 そして朝を迎え、ゴミを出しに行くのですね。


 面倒臭がる割にはマメですね。


 そこで、ゴミ箱の上に座っている、ボロボロの服を着た女性が、刃こぼれのひどいナイフで自分の髪の毛を切っているのを見てしまうと。


 ザックがゴミ捨てたいんだが、どいてくれと言ってアイラを退かす。


 アイラは謝りながらその場に倒れると。


 ザックはめんどくさそうにアイラと、脱いでいたドレスや宝石を、自分の家に連れ帰るのですね。


 しかし、めんどくさがり屋のザックにしては面倒見がいいですわね。


 心は清い方なのですね。


 その後、アイラはザックから自分は反乱軍のメンバーだという事を聞かされ、アイラも加わることに。


 ザックから剣を教わり、代わりに貴族の情報を流すようになる。


 反乱軍にアイラがいると知った王子は、アイラの家族を打首にしてしまうんですね。


 アイラは自分の家族が王子に殺された事を知るが、何も言わなかった。


 完全に心を閉ざしてしまったのですね。 グスッ。


 この頃、反乱軍に加担する貴族も変わってきているのです。


 それはアイラをよく知る人たちだったのです。


 舞台は最終局面で王の間。


 そこでアイラと王子が斬り合うのです。


 アイラの剣は王子を貫き、王子の剣はアイラの肩から胸へ振り下ろされてしまう。


 二人は倒れ、その場にザックが駆け寄り、アイラを抱きしめる。


 アイラは何も言わない。


 ただ微笑むだけ。


 それを見ていたザックの頬に一筋の涙が落ちていく。


 悲しいですわ。


 ザックはアイラをその場に寝かせ、まだ続く戦乱の中へ身を投じるのでした。


 おしまい。


 悲しくて、涙が止まりませんわ。


 ハンカチで涙を拭います。


 さて、気を取り直して——。


 最初は傭兵であることで、先入観がありました。


 読み直して見えてきたこともあります。


 ザックは面倒くさがりですが、面倒見がいい人ですね。


 私の周りで例えますと……。


 オーブル先生?


 ……試してみましょう。


 最初のセリフ、『おい、そんな所に座ってると邪魔だ』ですね。


 では。


「おーい、そんな所に座ってると邪魔だぞー」


 ……………………全然ザックじゃありませんわ。


 私は他にいないか思い出してみます。


 !!


 もう一人いました!


 カトラス生徒会長です!


 面倒くさがりではないでしょうが、面倒見は良いはずです。


 やってみます。


「そこの君、そんな所で座っているとみんなの邪魔になるから、ここに座るといいよ」


 …………………………ぜ、ぜんっぜん違いますわ!


 あとはあとは………………。


 そうですわ!


 クランツ様はどうでしょうか。


 あのお方は常に疲れていました。


 それを再現してみましょう。


 いきますよ〜。


 少しだるそうに。


「はぁ、おい。 そこに座られてると邪魔だ。 どいてくれ」


 …………いい感じではないですか?


 あの方、疲れている様でしたし、何となく距離をとっていた感じもありましたからね。


 いいんじゃないですか?


 私は何となくザックを掴んだ様な感じで嬉しくなり、立ち上がってその場でクルクル回りました。


 この役はクランツ様を真似て演じます。


 貴方に決めましたわ!


 その様子を椅子に座りながらお茶を啜っているサシャが、うさぴょんと共にジーッと私を見ていました。


「サ、サシャ! いつからそこにいたのです!?」


 サシャはお茶を啜りながら言いました。


「最初からいました、お嬢様の百面相が面白くて、つい見入ってしまいまして」


 何事もなかったかの様に、ズズズとお茶を啜っています!

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