12・セタ君とトーラス君について行こう
「失礼しますオーブル先生いらっしゃいますか?お願いがあります」
私は職員室の扉を開けて、先生にお願いをします。
「フィリア君。 落ち着いて、扉のノックからやり直してください」
注意されたので、ノックからやり直しました。
「失礼しますわ」
ノックして挨拶、ここまでは完璧です。
「オーブル先生、演劇についてお願いがありますの」
「僕も君の格好について聞きたいことがあるよ」
「おかしいでしょうか?」
畑から直接来たのですよ?
何もおかしなことはありませんわ。
「まず、ここは学園内の職員室なんだよ、わかるよね?」
「もちろんですわ」
「学園内は制服、もしくは運動着なのも知っているよね?」
「もちろんですわ」
「さて、今の君の格好は?」
「作業服ですわ。 これも運動の一環ですわ。 私、農業の過酷さを知りましたからわかりますの。 なので体操着で間違いありませんわ」
オーブル先生はため息をつき、周りの先生からクスクスと聞こえて来ます。
変な事言ったかしら?
「この件について、後で君のところのメイドさんに手紙を送っときますね」
頭を抱えながらオーブル先生は言いました。
サシャに手紙ですか。
悪いことは書かれないはずですから大丈夫ですね。
「それより、先生は具合でも悪いのでしょうか? 先ほどから頭を抱えていますが……」
私が心配して、先生のおでこに手を当てると、隣の席に座っている先生が反対側を向き、肩を震わせているのが見えました。
職員室は楽しいところみたいですわね。
「……君ねぇ、まぁいいや。 それで? お願いというのは何かな?」
そうでした!
大事なことですわ。
「私、男の人の役をやるのはご存知ですよね?」
「……あぁ」
「ですので、これからは男性の格好をして毎日過ごそうと思いますの!」
「……」
「そこでお願いがあります」
「却下」
「お願いというのは……」
「却下」
「なぜですの!?」
「……嫌な予感しかしないから」
「はぅ」
「取り敢えず着替えて帰りなさい」
「……はいですわ」
残念です。
職員室を後にする際、先生たちの話し声が聞こえて来ました。
「オーブル先生も大変ですな」
「一学期はみんな大人しかったんだよ? あの子は最初から何か変だったけど、ここまでじゃなかったはずだよ」
「そうなんですか?」
「今年のAクラス、何人か休みが終わってから本性を現した感じがするんだよな」
なんか先生も大変ですわね。
*
僕はルッツ様と職員室の前を通りかかった。
職員室の中からフィリア様の声が聞こえたんだ。
「ルッツ様、職員室の中からフィリア様の声が聞こえたよ」
僕の言葉を聞いたルッツ様は目にも止まらぬ速さで扉にこびりついた。
「……いないじゃないの。 いるのは薄汚れた格好の人じゃないの」
ルッツ様は違うというけど、僕にはハッキリ見えているんだ。
「あれが、フィリア様だよ」
「そんなわけないでしょ。 伯爵令嬢があの様な格好で職員室に来るわけないでしょ」
見間違いよ、見間違いと言って僕を引きずって歩き出していく。
「僕、目もいいんだよ?」
そんな僕の言葉なんて聞いちゃいなかった。
「お、トーラス。 またルッツ様に連れられてるのか?」
そこにセタ君が通りかかった。
「セタ君、助けて」
セタ君は僕とルッツ様を交互に見て言ったんだ。
「なんか二人の邪魔をしたくないかな?」
「何で!」
「何でよ!」
僕とルッツ様は同時に叫んだ。
「え? いや、二人ともなんだかんだで楽しそうだから……」
僕とルッツ様はお互いの顔を見て、ルッツ様が僕の背中をペシペシ叩いてきた。
痛くはないけど、何で叩かれるの?
「それより二人とも、チャーニ見なかった?」
セタ君はチャーニを探しているようだった。
「見てないわね」
「僕も見てないよ」
「そうか、なら帰りにでもチャーニの家に寄るかな」
そんな時、職員室から出てきたフィリア様が僕たちを見てこちらに歩いてきた。
「セタ君にトーラス君。 良いところにいましたわ」
僕とセタ君はフィリア様の格好は気にしなかったけど、ルッツ様の目が丸くなっちゃったよ。
「まさか……本当にこの様な格好をなさっているなんて……」
未だに信じられないでいるルッツ様はそっとしておいて、フィリア様の要件を聞くことにしたんだ。
「フィリア様は僕たちに何か用があるんですか?」
「そうです! お二人は明日のお休みもギルドに行かれるのですか?」
フィリア様はそんな事を言ってきた。
「俺もトーラスも行きますよ」
「フィリア様、それがどうかしたの?」
僕は聞いてみました。
「明日、私もご一緒してもよろしいですか?」
だそうです。
僕とセタ君は少し話しをして決まりました。
「俺たちは構わないけど、フィリア様は大丈夫なんですか?」
「サシャには話を通しますわ」
サシャ?
「ああ、あのやたら強い人が?」
セタ君は知っているみたいだね。
「なので問題はありませんわ」
嬉しそうに話すフィリア様に対して、少し震えているセタ君。
「取り敢えず、明日の朝ギルド前でいいのかな?」
セタ君に代わりに僕が話を続けたよ。
そして待ち合わせはギルド前に決まったよ。




