9・メイクアップです
レコラさんの言われた通り、私と殿下の動きを同じようにしてみます。
「それでは、私が殿下に合わせてみますわ」
その方が殿下に気を使わせなくて良いですよね。
「そうかい? では基本的な動きからやってみるから、まずは見ていてくれたまえ」
殿下が言うと、剣を構えてから流れるように剣を振るっていきます。
流石王族の剣は違いますね。
「こんな感じかな。 ついて来れそうかな?」
「はい。 大丈夫ですわ」
私は殿下の動きに合わせて剣を振ります。
流れるような剣の動きですが、これだと魔物とか倒せませんね。
基本的な動きだからですかね、これは見せる為の剣ですね。
「フィリア君、このままもう少し実践的な動きにしようか」
殿下が私の動きを見ながら提案したので、私は返事をしました。
「では、お願いします」
私は殿下の動きを横目で見ながら合わせて行きます。
「ふっ……フィリア君、流石だね」
「お褒めに預かり、光栄ですわ」
殿下の言う通り、かなり実践的な動きですわね。
しばらく殿下と同じように剣を振っていましたが、殿下から終わりと言われ、終了することになりました。
私は近くで見ていたレコラさんに聞いてみました。
「ランディル殿下と私の動きはどうでしたか?」
レコラさんは目を輝かしながら感動していました。
「流石、ランディル殿下とフィリア様です! 完璧です! 傭兵ザックがアイラに剣を教えますので、これは良いですね!」
殿下と私はレコラさんの期待に応えられたようで満足しました。
「来週、お二人には台詞合わせをしてもらいますね!」
殿下の顔が途端に曇って行きましたわ。
*
「と言うわけでサシャ、殿下のメイクをお願いしますわ」
私は殿下を部屋へ連れてきて、サシャに瞬間メイクを施されました。
相変わらずの手際ですわね。
「ま……またコレを着るのかい? このままでも問題ないのでは?」
殿下は顔を引き攣らせながら拒絶しているようですが、サシャが力説し始めました。
「お言葉ですが、ランディル殿下! 役を演じるのに何故そのままだと言い切るのですか? 慣れない演技だからこそ、普段から演じるのです!」
ドレスを持ったサシャが殿下に詰め寄って行きます。
殿下は私に助け舟を出して欲しそうにこちらを見て言葉を失っていました。
私は殿下に合いそうな靴と帽子を手にしています。
殿下は両手を上げて降参し、サシャからドレスを受け取り、浴室の方へ向かって行きました。
その間、サシャは嬉しそうにテーブルにお菓子とお茶の用意を始めました。
*
おかしい……。
剣術の授業が終わってからの記憶が曖昧で、気がついた時にはフィリア君の部屋で、メイドのサシャがドレスを持って迫ってきていた。
僕は着替えるために浴室を借り、再びドレスを身に纏うのだった。
このドレスは、前の紐で縛るので一人でも着ることができる。
流石に女性物なので、胸の辺りに違和感があるが……。
着替え終わり、鏡に映り込む自分の姿に何故か胸の奥がドキドキするのだった。
「なんなんだ……、この感情は」
鏡に映る自分の顔が、みるみる赤くなっていった。
「落ち着け僕! これは演技のためだ、決して変な気持ちなんかじゃない! ……はずだ」
覚悟を決めて、二人のいる部屋へ戻ってきた。
サシャがいつの間にか僕の後ろに立ち、ドレスの乱れがあるのか、手際よく整えてくれた。
「す……すまない」
「違います」
サシャは違うと言ってきた。
「既に演技の稽古は始まっているのです。 すまないではありません。 ありがとうございますと、微笑みながら言うのです!」
そ、そうだったのか!?
では、フィリア君の口調を真似てみるか。
そして、微笑みながら。
「あ……ありがとうございますわ」
その姿を見たサシャは、また例の部屋へ入って行き、中からあの音が聞こえてきた。
「殿下、さっそくテーブルに座ってみましょう」
フィリア君がテーブルへ招いている。
よし!
今度はヘマをしないぞ。
「わ、わかりま……したわ」
「ぎこちないのは仕方ありませんわ。 さ、どうぞこちらへ」
フィリア君は椅子を引いてくれたので、僕はその椅子に座る。
なるほど、いつも僕が椅子を引く側だったが、女性の立場ではこのような感じなのか。
……ためになるな。
例の部屋からサシャが戻って来た。
「失礼しました。 これよりお茶の稽古と、女性らしい言葉遣いの練習を致します」
先ほどまで付けていなかったメガネをクイっと上げるサシャ。
……それにどんな意味があるんだ?
「殿下、余計なことは考えないでください」
は? わかるの!?
サシャはカップにお茶を注いで、僕とフィリア君の前に差し出した。
良い香りだ、悪くない。
僕がカップに指を通して持ち上げようとしたらサシャから止められた。
「ランディル殿下、指を曲げて持つのは上品ではありません。 指で挟み伸ばして持つのです。 お嬢様、手本をお願いします」
「わかりましたわ」
僕はフィリア君がお茶を飲む仕草を観察した。
カップを指で挟み込んで持ち上げ、静かに口をつけお茶を飲む。
しかし、女性の飲む姿をじっくり見ると、ドキドキしてくる……。
しっかりしろ、僕!
これは演技だ! 稽古だ!
……とにかく頑張ろう、




