8・剣術の授業です
「やあ、フィリア君。 今日はよろしくね」
「ランディル殿下、こちらこそよろしくお願いしますわ」
ここは学園の闘技場。
今日の剣術の授業はSクラスも一緒です。
なんでもランディル殿下が『我々SクラスとAクラスは演劇をする仲間。 仲間意識を深めるという意味でもやって損は無いですよね』などと提案したら通ったそうです。
中でも一番喜んでいるのがリド様ですね。
父親は騎士総長、この国にある騎士団の一番上にいる人でしたね。
「誰か俺と手合わせしないか?」
対戦相手を求めていますね。
「お、お前。 ちょっと相手しろよ」
「リド。 少し落ち着けないのかい? そんな誘い方じゃ誰も近寄らないよ?」
「ははは! そう言うなよ殿下、誰かと剣を交えないとなまっちまうからよ」
そんな中、歩いて来たセタ君とトーラス君。
リド様はセタ君に目を付けたようです。
「おい、お前! ちょっと俺と試合してくれよ」
「え? お、俺ですか?」
セタ君は自分を指差して驚いていました。
「そうだ、お前だ。 一丁前に剣を二本ぶら下げているからな」
「俺はまだ練習中なんですが……」
リド様とセタ君が話しているところへ、殿下が歩いていきます。
「君、すまないが一度だけでいい。 試合をしてくれないかな? リドは言い出したら止まらないんだよ」
セタ君は断れずに、リド様の相手をすることになってしまいました。
「セタ君、剣二本使えるんですかね」
私の声が聞こえたのか、トーラス君が教えてくれました。
「セタ君ね、休みの間に知り合った双剣使いの冒険者に憧れちゃってね、少しの間だけ双剣の使い方教えてもらってたんだ」
双剣なんて、ダリア様みたいですね。
「そうなんですか?」
「うん。 僕も見ていたけど双剣をあそこまで使える人見たことないよ」
「興味深い話だね」
「で、殿下!」
話に突然混ざって来た殿下に、トーラス君は驚いてしまいました。
「ごめんごめん。 僕のことは気にしなくていいから」
「あ、うん……はい」
私はその人の名前が気になりました。
「その方のお名前は?」
「確か、双剣使いのダリアと呼ばれてたかな?」
やっぱりダリア様でした。
「あの二人の試合始まるみたいだよ」
二人は腕輪をつけて結界の中へ入って行きました。
「先生が審判を務めるぞー。 二人とも無茶だけはするなよ?」
リド様とセタ君はお互いに構えました。
「始めっ!」
先に動いたのはリド様です。
「先手必勝! 行くぜ! オラッ!」
リド様は豪快に剣を振り下ろして来ましたが、セタ君は相手の攻撃をよく見て、横に避けていきます。
「よくかわしたじゃねーか! これならどうだ!?」
リド様は左右に剣を振るい始めました。
一見するとがむしゃらに振っているように見えますが、防御の薄い部分を的確に狙って来ています。
「リド様凄いですわね。 それにセタ君もよく二本の剣で捌いていますね」
「そうだね。 リド相手によくやってるよ」
「あ、セタ君が攻撃に移ったね」
「彼、二本の剣を上手く持ち替えながらリドを翻弄してるね」
「僕もセタ君も、休みの期間にギルドで先輩たちに特訓してもらってたんだ」
「そうなのかい?」
トーラス君の話にランディル殿下が興味深そうに聞き入りました。
「うん。 依頼の後にね、訓練所に連れられて、先輩たちは入れ替わりで攻撃してくるんだよ。 僕たちはそれを避け続けるんだ」
『……え?』
私と殿下はなんとも言えない顔をして聞きました。
「なんでも愛の鞭だって言ってたよ。 僕たち、期待されてるのかな?」
「トーラス君! それイジメじゃありませんか!?」
私は思わず叫んでしまいました。
「本人たちがイジメと思ってなければイジメとは言い難いかな……。 それにギルドにはギルドのやり方があるからね」
ランディル殿下が苦笑いをしていますよ。
「でもね、先輩たちは最後にジュース一杯奢ってくれるんだよ。 優しいよね」
トーラス君とセタ君がそれで納得しているなら良いですけど……。
そこへレコラさんがこちらへ向かって来ました。
「ランディル殿下、フィリア様。 よろしいでしょうか?」
「どうしたんだい?」
私と殿下はレコラさんを見ました。
「ちょっと演劇に関係するんですけど、ザックがアイラに剣を教えるので、剣の型は同じようにしたいのです」
「でも、今は剣術の授業ですわ」
「大丈夫です! 先生には許可を取ってきました!」
フンスと両手の拳を力一杯握っています。
「許可があるなら問題ないね。 しかし、君は台本だけではなく演技の指導にも積極的だね」
殿下は感心しながらレコラさんを見ました。
「あ……は……はい。 将来は演劇関係をやりたくて」
「そうか、頑張ってくれたまえ」
「はい!」
レコラさんは将来なりたいものがあるんですね。
私と同じですわね。
「とりあえず、二人の勝負が終わらないことには危ないね」
「そうですわね」
私たちは二人の試合に再び目を向けました。
「おら! 左が疎かになってきたぜ!」
セタ君の左の剣を、リド様が弾き飛ばしました。
「これは勝負あったかな」
殿下が発言すると、対戦していたセタ君も降参したようです。
「お前、中々楽しませてもらったぜ……えーと」
リド様は何かを思い出そうとしています。
「俺……いや、僕はセタと言います。 リド様」
何かを察してセタ君は名前を言いました。
「そうか! セタだな、覚えたぜ」
リド様は笑いながら殿下の方へ歩いてきて、その後ろからセタ君もついてきました。
「二人とも、良い動きだったね。 リドはともかくセタ君だったね、もう少し練度が上がればリドに勝てるんじゃないかな」
殿下がセタ君を称賛しています。
「ありがとうございます」
セタ君は何処となく悔しさを滲ませていましたが、殿下の言葉には素直にお礼を言いました。
「さて、今度は僕らの練習だね。 フィリア君」
「そうですわね、ランディル殿下」
殿下と私は腕輪を装着して、闘技場の中へ入って行きました。




