5・ランディル殿下の悩み事です
翌日の放課後——。
ランディル殿下たちが、私の席の前に集まってきました。
「君が僕の相手役となるんだね?」
「はい。 フィリア・モンティーレと申します」
「君はモンティーレ家の……キルデから話は聞いたことがある」
「そうなのですか?」
「ああ。 だが今は劇の方だ」
なるほど、演劇のことで集まってきたのですね。
ここでマイク様が一歩前に出てきました。
「殿下は役を演じるにあたって悩んでおられる。 相手役のお前、知恵を貸せ」
「……マイク、僕は頼みに来ているんだ。 そんな態度じゃ駄目だろ」
「しかし殿下……」
「ここは学園。 城の中ではないんだよ」
「うっ……。 わ、わかりました」
「フィリア君、マイクがすまなかったね」
私は気にしていないと伝えました。
「それで、どのような悩みなのでしょうか?」
私は殿下に尋ねてみました。
「これを後で読んで欲しい。 詳しく書いてある」
「えーと、マイク様たちに聞くことはできないのでしょうか?」
ランディル殿下は言いにくそうにして、
「こればかりは……すまない」
私は手紙を見ながら「わかりましたわ」と返事をしました。
殿下たちはAクラスを後にしました。
今までのやりとりが気になっていた女生徒たちが突然集まり出してきました。
「なになに!? 恋文ですか!?」
「秘密の特訓!? それが記されている場所なんですか?」
「凄く興味があります!」
捲し立ててくる女生徒たち。
「ちょ、え? そういうのではありませんわ! それに、書いてある内容はきっと言えない物だから、私の口からは言えませんわよ!」
それでも気になるものはどうしようもないですわね。
……それにしても先ほどからラザリア様がこちらをじっと見つめ、「コー……ホー……」と変な息づかいが聞こえてきますが大丈夫でしょうか?
*
私は一人で落ち着ける畑までやってまいりました。
殿下の手紙を読むためです。
私は封を開け、中に入っていた手紙を読んでみました。
最初の一文目。
“女性のことが知りたい。”
……はい?
私はもう一度見直しました。
幻でもなんでもありませんでした。
とりあえず、先を読んでみましょう。
その後は謝罪から入り、演劇をするにあたって、どう演技すればいいのかわからないから手を貸して欲しいとのことでした。
流石にメイドたちに聞くわけにもいかないらしいですわね。
噂が広がってしまうらしいです。
口止めできないのかしら?
でも、わかりました。
お力になりましょう、できる限り。
……でも最初の一文、消すか新しい紙に書き直しましょうよ、ランディル殿下。
これではマイラー先生みたいになってしまいますよ?
手紙の内容で、私の中で殿下に相応しいアイデアを思いつきました。
「まずはオーブル先生に許可を頂きにいかないといけませんわね」
私は急ぎ足で職員室へ向かいました。
*
「たのもーですわ!」
挨拶と共に、職員室の扉を勢いよく開けて入りました。
「フィリアくーん、ここは職員室だぞー」
オーブル先生に注意されたので入り直しました。
オーブル先生のところまで行き、許可を求めました。
「オーブル先生! 許可が欲しいのです!」
「フィリア君、落ち着きたまえ。 僕は君の言っていることがさっぱりわからないのだが」
私はハッとして、一度軽く咳払いをしました。
「失礼しました。 少々取り乱していましたわ」
「それでどういったことかな?」
「そうですね、演劇に関することなんですが」
「ほうほう」
「ランディル殿下から、直接相談に乗って欲しいと言われましたので」
「ふむふむ」
「殿下を女子寮へ招き入れる許可をですね」
「ぶほっ」
「どうしましたか?」
「本気か?」
「本気ですわ」
私は大声で言えないので、オーブル先生の耳元で理由を説明しました。
(女性の振る舞いがわからないそうなので教えて欲しいと頼まれましたの。 お城の中だとそれができないみたいですのよ)
説明を聞き終わると、オーブル先生は唸りながらも演劇が終わるまでの期間で許可書を書いてくれました。
「わかってると思うが、変なことはするなよ」
「しませんわ」
私はオーブル先生にお礼を言って、職員室を出て行きました。
*
私はオーブル先生聞きたいことがあるので、職員室を訪れたら、フィリア様が入っていくのが見えました。
それを見てピーンと来ましたね。
ドアから職員室の中を覗いてみます。
「あれ? ルッツ様、扉に張り付いて何してるんですか?」
私に話しかけてきたのは、トーラスでした。
前は贅肉たるんたるんの男だったけど、この休みの間に随分と逞しくなったものね。
それに、背もだいぶ伸びたようですし。
「こんなことしている場合ではないわ!」
私は扉の隙間から中を覗きます。
「職員室の中に何かあるの?」
トーラスは私の上から中を覗き見します。
私は目的の人物、フィリア様を見つけました。
するとフィリア様がオーブル先生の顔に、自分の顔を近づけていき……。
くっつきましたああああ!
私は空いている手で、トーラスの体をバシバシ叩きました。
「痛い、痛いよルッツ様。 一体どうしたの?」
「やっぱり間違いありませんわ! この恋愛ハンタールッツの目は誤魔化せませんことよ!」
「そんなハンター聞いたことないけど、フィリア様はオーブル先生に何か耳打ちしただけじゃないの?」
「そんなことはありません! 職員室で堂々と破廉恥ですわね!」
「行くわよ! トーラス!」
私はトーラスを引っ張りながら、職員室を後にします。
「えええ! 僕、これでも耳はいい方なんだよ?」
トーラスが何か言っていますが、関係ありません!
「楽しいですね!」




