4・台本と畑です
オーブル先生は私とレコラさんについてきなさいと言いながら教室を出て行くので私たちも後を追いました。
教室に残った生徒たちには、内容を知っているラザリア様が物語を説明するそうです。
「レコラが準備をしていてくれた台本を人数分複製するからな。 今ならどのクラスも魔導具を使ってないから早く終わるだろ」
オーブル先生に続いて、魔導具を置いてある部屋に入っていきます。
「用意するからちょっと待ってな」
オーブル先生は小箱に台本を入れて、水晶板で操作をすると、大きな箱がガタガタ揺れて唸り出しました。
チーン。
何とも可愛らしい音がすると、オーブル先生は大きな箱の蓋を開け、出来立ての台本を一冊取り出して、中身を確認しています。
「うん、問題無さそうだな」
そう言って、残りの台本を箱の中から取り出しました。
それを私とレコラさんが箱へ詰めていきます。
それを持ったオーブル先生が言いました。
「あー、しまった。 重いから男子生徒連れて来ればよかったかな」
レコラさんも手に持ち、唸っていました。
「確かに私も全部は持てません」
「なら、私が持ちますわ」
「フィリア様、いくら何でも持てませんよ」
「無理はするなよ」
私は軽々と持ち上げてみました。
「これくらいなら問題ありませんわ」
二人は私を見て驚いています。
「フィリア様……よく片手で持てますね……」
「フィリア君、君は女性であることを辞めたのかな?」
「レコラさんはともかく、オーブル先生は酷くないですか!?」
ただ、闘気を使った身体強化の練習をしているだけですのに。
*
教室に戻り、私とレコラさんが手分けをして台本を配りました。
そしてレコラさんが物語について簡単に説明をしてくれました。
「この物語は、王子様から追放を言い渡された令嬢が反乱軍に加わり王子に復讐する話ですね。 追放されたアイラを傭兵ザックが拾うところから、物語が進んでいきます。 反乱軍は国内で、王政に加担している貴族たちを始末しているのです。 最終的には城の中まで反乱軍が入り込み、その中でアイラとザックが王の間へ辿り着き、アイラは王子と相打ちになります。 切り付けられ、命の火が消えようとしている時に、ザックは彼女に恋していたことがわかるの。 ザックは涙を一筋流すだけ。 アイラはただ微笑むだけで、おしまい。 あとは台本を読んでください。 主役の二人、アイラはだんだん無口に、ザックは基本的面倒くさがりです。」
レコラさんの話は終わりました。
「よーし、各自役割が決まっているみたいだから、準備を進めていけよー」
オーブル先生が言い終わると同時に、
カラーン
コローン
授業を終える鐘の音が響き渡りました。
「僕たちも一旦教室へ戻るとしよう」
殿下の言葉で他の四人も教室を出て行きました。
殿下たちが部屋を出て行くと、緊張していた生徒たちが一斉に力を抜くのがわかります。
「き、緊張したー」
「先生! もっと早く言ってくださいよ!」
男子生徒からの糾弾もありましたが、女生徒からは「でも、殿下は凄く美形よね〜」など、うっとりとした声が聞こえてきました。
「すまんな、先生も休みボケだ」
笑いながら生徒たちと話しているオーブル先生。
「今日は終わりにしよう」と言って教室を出て行きました。
あ、オーブル先生に確認しておきたいことがありましたわ。
私は先生の後を追いました。
先生の歩みはゆっくりでしたので、すぐに追いつけました。
「オーブル先生」
「ん? どうしたフィリア君」
「先生にお願い……いえ、許可を頂きたいのですが」
「なんの許可だい?」
「敷地内のどこでも構いませんので、畑を作らせていただけないでしょうか」
「……はい?」
オーブル先生は最後まで聞いておいて、変な顔をしないでください。
「えー……フィリア君、言っていることはわかった。 だがなんで君が畑を作るのかな?」
いずれ来るかも知れない将来のための準備ですから。
「はい、土いじりを通じて、作物を育てるということを学ぼうと思いまして」
先生、額に手を当てながらため息をつかないでもらえますか?
「おや、オーブル先生に……君は確かAクラスの」
そこに現れたのはカトラス生徒会長でした。
「お、いいところに来たな生徒会長。 後のことは君に任せた!」
そう言ってオーブル先生は先ほどよりも速く歩いて行ってしまいました。
「突然任されてもねぇ。 どういうことかな?」
カトラス生徒会長は私を見ながら首を傾げています。
私は先ほどの話をもう一度聞いてもらいました。
「君は面白いことを言うね」
私的には普通のことを言ったのですが、なぜか笑われています。
「いいよ、作っても。 前から空いている場所があるから案内しよう」
ついてきてと言われ、生徒会長の後ろをついて行きます。
——そこは学園の敷地内の外れにありました。
「去年まで使われていたんだけどね、ここは好きに使って構わないよ」
案内された花壇は中々広く、花壇というよりは花畑だったようですね。
「随分と広いですわね」
「花好きの先輩が卒業してから、誰も使っていない場所だったからね」
「ああ、花壇以外の場所は使用禁止なので、そこだけは注意してね」
カトラス生徒会長は手を振りながら去って行きました。
生徒会長のお陰で畑を手に入れることができました。
「演劇の稽古もそうだけど、こちらも頑張りますわ!」
畑を見回し、必要な道具を揃えないといけませんわね。
後でサシャにお願いしましょう。
*
その夜、うさぴょんを膝の上に乗せ、撫でながらサシャに話をしました。
「演劇の話から、なぜ畑になるのか私には理解できません」
と、なぜか呆れられてしまいました。
それでも、道具は明日には揃えてくれるそうです。
流石はサシャですわ。
「そうそう、演劇では主役の一人を演じることになりましたの」
「ほう、それは素晴らしいですね。 主役というならお嬢様はさぞ美しい役を演じることでしょう」
サシャは喜んでくれています。
「ええ、私が演じるのは傭兵の男性ですわ」
サシャは笑顔のまま動かなくなってしまいました。




