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3・Sクラスが来ましたわ

「では、ラザリア様の提案受け入れるので、フィリア様は自動的に傭兵のザックになります。 フィリア様はよろしいですか?」


 何ということでしょう、私追放されてみたかったのに。


「返答がないので了承と判断いたします」


 レコラさんの声が意識の外、遠くから聞こえてきましたが、時すでに遅しで、決定してしまいました。


「あ、Sクラスの事、いや忘れていたなー……。 まあいいか」


「どうしましたか? 先生」


 オーブル先生とレコラさんが話している時に、クラスのドアを勢いよく開けて入ってきた五人の男子生徒たちがいました。


 その人物たちを見たクラスのみんなは固まってしまいました。


「合同演劇会なのでAクラス諸君、我々Sクラスが来てやったぞ」


 取り巻きらしい一人がメガネを上げながら言いました。


「主役は勿論、殿下であるランディル様が演じる。 文句はないな」


 オーブル先生が黒板の主役のところにランディル殿下の名前を書き加えました。


 主人公の追放令嬢アイラ役=ランディル。


「はい、主役も決まったぞー。 後の残りも決めちまえよ」


 オーブル先生……殿下相手でもぶれませんね。


 黒板に書き込まれた名前を見たSクラスの五人は固まりました。


 自分の主たる殿下の名前が主役の令嬢ということに黙り込んでしまったのです。


「見間違いかな? 僕の名前が主役の令嬢の所に書かれているみたいですが……」


「見間違いじゃありませんよ。 ランディル殿下」


「先生、僕のことはランディルで構いませんよ。 僕も学園の生徒ですから」


「そうか。 ではランディル、すでに話は進んでいてね、申し訳ないがこのまま進めるよ」


「待て! 我々はその場にいなかったではないか!」


「君たち、来るのが遅いんだもんな。 授業時間は厳守だよ?」


 何だかオーブル先生が言いくるめています。


 先ほど忘れたと言っていましたのに。


「お前たち、少し落ち着け。 遅れたのは僕たちのせいだ」


「しかし殿下……」


「……うん、黙ろうか」


「しっ、失礼しました」


 他の三人に比べて、彼はすごく殿下を持ち上げますね。


「マイクが失礼した。 そうだ、とりあえず自己紹介しておきなさい」


 マイクというのですか。


 ……マイク、確か宰相様のお子様もマイクと記憶していましたが。


「失礼しました。 私は宰相の息子のマイク・ヒュールクだ。 よろしく頼む」


 自己紹介をしながらメガネを上げました。


 やはり宰相様の息子様でしたか。


「俺はリド。 リド・ラッセル。 父は騎士総長だ」


 腕を組みながら、いかにもという感じですね。


「俺はサイラス・クランゼ。 公爵家の生まれだ」


 前の二人に比べておとなしめですね。


「イコラス・クランゼ。 サイラスの弟です」


 よく見ると、右目の下にホクロがあるのですね。


 それ以外はよく似た兄弟ですわね。


「そして僕がランディル・ラル・エルディア。 現王の弟です」


 改めて見ますと、線が細くて女性と言われても信じてしまいそうですね。


 いきなり豪勢な顔ぶれが揃いましたわ。


 この物語の王族をやる生徒が現れなかったため、王子役はマイク様、王様役がリド様が演じることとなり、主人公アイラの父親役と母親役はクランゼ家の兄弟が演じることになりました。


 母親と父親をどちらが演じるか、少し揉めていましたが。


「うん、まあーいいんじゃないの? レコラはどう思う?」


「はい。 問題ありません! むしろ新たな創作意欲が湧きます!」


「なら、これから台本の複製をするぞー」


「あ、重くなるので誰か手伝いがいると助かります」


 なら私がお手伝いしましょうか。


「オーブル先生。 私が手伝いますわ」


「お、フィリア君。 手伝ってくれるか、頼むぞ」


「はい」


『ちょっ……。 ちょっと待ったあああ!』


『先生! どういうことだよ!』


 そういえばクラスの大半が、金縛りにあったように動いていなかったですわね。


    *


 ほら見なさい!


 早速フィリア様はオーブル先生に接触を始めました!


 殿下たち率いるSクラスが来た時は驚きましたが、そんなことは関係ありませんでしたわね。


 これこそが愛の力なのです。


 ……そういえば、オーブル先生は結婚しているのかしら?


 気になったらなったで落ち着かないわね。


 やはりここは、突撃インタビューしかありませんね!


 少しでもフィリア様のお力になれれば。


 楽しみですね。


 人の恋路を応援するのは。


 オホホホホホ!


    *


 先程からルッツさんから何やらいけない気配を感じます。


 うかうかしていると、また私の計画が危なくなりますね。


 今の彼女は要注意ですわね。


 私も次の段階へ進まなければいけません!


 麗しの麗人のフィリア様を拝むためには、私は鬼にだって成り果てて見せますわ!


 そうと決まれば、後でチャーニさんに相談をしてからですね。


 彼女は、今の私にはなくてはならない存在です。


 Sクラスだろうが殿下だろうが、私のフィリア様への想いの邪魔はさせません!


 フフフフフフ。


    *


 何だか先程から鳥肌が立ってきてしまいますわ。


 風邪でも引いたのかしら。


 レコラさんのお手伝いが終わり次第、今日は早めに帰りましょう。


 病気になって寝込むとみなさんに申し訳が立ちませんから。


 それにですね、令嬢の役では無くなりましたが、男装をして世を忍ぶ仮初の姿という路線もありますから!


 私の憧れの道は無限大ですわ!


 それはそうと、後でオーブル先生に学園の端でもいいから畑を作らせてもらえないか聞いてみましょう。


 いつの日かやってくる、辺境でスローライフのためにですわ!


 頑張れ私! ファイトよフィリア!

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