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2・演目を決めましょう

「よーし、全員揃っているな?」


 オーブル先生が教室に入るなり、話し始めました。


「最初に言っとくぞ。 マズウェル・ラストン君だが、家の都合で転校することになった。 以上」


 オーブル先生、それだけですか?


「ほら、時間も無いし講堂に移動しろ。 そうだな、ラザリア君がまとめなさい」


「わかりました、先生」


 ラザリア様が教壇のところまで出て行きます。


「それでは私の指示に従って移動を開始してください」


 オーブル先生はうんうんと頷いています。


「それではみなさん、オーブル先生の後をついていきましょう」


「……は?」


 ラザリア様は不思議そうに、驚いているオーブル先生を見ました。


「え? 行き先は同じですよね?」


「いや、そうなんだが。 そうじゃなくて、ラザリア君、君がクラスをまとめて移動することに意味があるんだよ」


「そうなんですか。 仕方ありませんね、みなさん行きますわよ」


 移動を開始した生徒たちを見ながら先生は、変なのはフィリア君だけで十分だよと嘆いていました。


 私、変ですか?


    *


 学園生活が再び始まり、数日後。


 この学期で一年生による演劇会が行われることになります。


「えー、演劇の物語を決めるぞ。 何かある奴は挙手して発言しろよー」


 オーブル先生は教壇の上から全員に向かって意見を求めました。


 ある生徒が挙手をしました。


「はい!」


「よし、言ってみろ」


「私の好きな作品なんですが、追放令嬢の終焉はどうでしょうか? これは追放された令嬢が反乱軍に所属して復讐していくお話なんです」


「おー、暗そうで面白そうだな。 他にはないか?」


「はい!」


「そこのお前、言ってみろ」


「フードファイター肉! ひたすら食べまくる話です!」


「それはお前が食べたいだけだろー」


 クラスに笑いが起きる。


 そのせいか、他の生徒からも案が出て来ました。


 ……


 いくつか候補が上がっていきましたが、最終的に決まったのが、最初の女生徒の追放令嬢に決まりました。


「よし、話が決まったので、えーと……」


「レコラです、先生」


「おお、すまない。 俺もまだ休みボケだな。 ではレコラ、配役とかどうするかはお前に任せた。 俺その話知らないからな」


 レコラさんはとても喜んでいました。


「は、はい! 頑張ります」


 レコラさんは配役を黒板に書き出しています。


 主な配役はこのようになるそうです。


 主人公の令嬢アイラ。

 もう一人の主人公、アイラを拾う傭兵のザック。

 その親友のロイン。

 その他の兵士。

 アイラの両親。


 追放を行使した王子エリアル。

 取り巻きの三人。

 エリアルの父、王ダラント。

 その他の兵士。


 ざっとこんな感じだそうです。


「演劇用に、脚本は既に私が用意していますのでよろしくお願いします」


「ではレコラ用意……用意してあるんかい!」


 レコラさんはお辞儀をするとオーブル先生が突っ込みました。


 オーブル先生はレコラさんから台本を受け取ると、すごい勢いで読み進めています。


 追放令嬢、どんなお話でしょうか。


 悪役令嬢にも、追放は定番ですわね。


 もし、もし役をやらせてもらえるなら、追放されてみたいですわ!


 私は黒板に書かれた配役に勝手な思いを巡らせていました。


    *


 私は未だにやる気が起きなかったのですが、フィリア様を見ていたら思い出してしまったのです。


 そう、終業式の日。


 オーブル先生に呼ばれた時にとても嬉しそうに喜び、私に抱きついてきたくらいですしね。


 そして今、黒板の横にいるオーブル先生に手を合わせながら見つめている姿を。


 フフフ……


 このルッツ様の目は誤魔化せませんわよ。


 なんか楽しくなってきました。


 これは何としてもこの恋の行方を見届けなくては!


 ならば主役なら、常に先生の近くにいられるのではないですか?


「はい! 推薦でもいいのですか?」


「おー、構わないぞ」


 オーブル先生が仰るなら。


「主役のアイラ役にはフィリア様を推薦します」


「ふぇ! わ、私ですか! よろしいのですか!?」


 フィリア様、すごく嬉しそうですね!


 私の発言はクラスのみんなを納得させられるものでした。


「フィリア様なら似合いそうですね」


「ああ、いいんじゃないかな? フィリア様は美人だし」


 でも何でしょうか、隣のラザリア様から変な圧が飛んできている気がするのですが……。


    *


 なんて事でしょう!


 思わぬところに伏兵がいたなんて!


 急いで策を練らないと、決まってしまいます!


 落ち着け、落ち着け私!


 そうこうしていく間に脇役から徐々に決まっていきます。


 焦るな私……!


 閃きました!


「はい!」


「ラザリアはどんな役をやりたいんだ?」


「いえ、役ではなく提案を一つ」


「言ってみろー」


「先生、ありがとうございます。 では」


 私は咳払いを一つしてから話し始めました。


「私もこのお話を読んだことがありますからわかります。 しかし、このままだと観客の方に楽しんでもらうにはいささか暗すぎますので、提案を一つ。 それは、主役の男女の配役を入れ替えてはどうでしょうか」


 クラスからは「それはいい」と笑いが起きました。


 中にはフィリア様の演じるアイラを見れなくて悲しむ人もいましたが、レコラさんは……。


「あり……ですね。 それは盲点でした」


 レコラさんは真剣に考え始めました。


「……お前らがそれでいいなら俺は何も言わないが」


 先生が言い終わると、レコラさんは顔を上げてきました。


「ラザリア様! それでいきましょう!」


「よろしいのですか? レコラさん」


「はい! 楽しい劇にしましょう!」


 危なかったですわ……。


 これでフィリア様の麗人のお姿が拝めますわね。


 フフフ。

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