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1・二学期ですわ

憧れの悪役令嬢、1話と5話に出てきた第二王子の表記を王弟殿下に変更しました。

 清々しい朝。


 私は部屋の窓を開け空気を入れ替え、身体をほぐします。


 ここは学園の寮。


 今日からまた通うのです。


 前の学期はみなさん大人しく、これといった事は何も起きませんでしたわね。


 今期も同じように、静かに過ぎていくのでしょうか。


 そんなことを思いながら私は私服に着替えて部屋を出て行きます。


「お待ちなさい!」


「グヘッ!」


 突然襟首を掴まれて、少女が出してはいけない声が漏れました。


「サシャ、一体何事ですの?」


 私は襟首を掴まれた状態で部屋へ連れ戻されました。


「何事ではありません。 今日から学園が始まるのですよ」


「もちろんわかっていますわ」


「なら、今着ている服は何ですか?」


 服ですか?


「お気に入りの服ですわね」


 サシャはデコピンをしてきました。


「い、痛いですわ」


「もちろん痛くしました」


「なんて非道なことを」


 サシャはため息をつきながら私に制服を目の前に出して来ました。


「これは何に見えますか?」


「学園の制服ですわ、そして今日から新学期……あっ」


「わかったなら、とっとと着替えなさい!」


「す、すぐに着替えますわ」


 休みの感覚がまだ抜け切らないようです。


 しっかりしないといけませんね。


「着替え終わりましたわ。 改めて行って来ます」


「まて!」


「ぐぇっ!」


 今度は何ですの!?


「その背負っているものは何ですか?」


「……鞄、かしら?」


「私にはウサギに見えるのですが」


「私、これがないと寝付けなくて」


「学園は寝に行くところではありません! 没収です!」


 そんな……私の癒しが……。


    *


 寮から学園に続く並木道。


 木々の間から溢れる日の光が気持ちの良い朝。


 行き交う生徒たちは互いに挨拶を交わしていきます。


「ごきげんよう」


 私も顔見知りの方達に挨拶をしていきます。


 とある木の下で、ラザリア様が立っていました。


「あ、フィリア様。 ごきげんよう」


「ラザリア様、ごきげんよう」


「フィ、フィリア様はお休みの間どちらに?」


 私とラザリア様は歩きながら休みの間の話をしました。


 アルベン領のことは、あまり言わない方がよろしいですわね。


「私は少し他の街を見学に行っていましたわ」


 よし、無難ですわ。


「……そうなんですか。 その街が羨ましいですわね」


「?」


 なんかラザリア様から一瞬笑顔が消えたようでしたが、気のせいですよね。


 二人で歩いていると後ろから声をかけられました。


「フィリア様、ラザリア様おはようございます」


『おはようございます』


 チャーニさんと、体格の良い男の方が二人、こちらに走って来ました。


「チャーニさん、ごきげんよう」


 私はチャーニさんに挨拶をして、その後ろの二人を見て首を捻りました。


「えっと……、ごきげんよう。 失礼ですがどちら様でしたでしょうか?」


 私が聞くと、チャーニさんが笑い出しました。


「ほら、やっぱり気づかれなかったじゃないの」


「俺たちそんなに変わったのか?」


「僕もわかんないよ」


「あっ、その声は……セタ君にトーラス君ですか?」


 あまりにも体格や身長が違いすぎます!


 これだと変な人たちは近づかないと思いますよ。


 セタ君はもう少し痩せていたし、トーラス君は申し訳ないですがお肉がタプタプしていたはずです。


「休みの間、俺とトーラスはギルドの強制依頼を毎日こなしていたからね」


「そうそう、あれは大変だったよね」


「そのような依頼があるのですか」


「そうなんだよ、でもそのおかげで俺たちEランクになったんだよな」


「そうなんだ。 嬉しいよね」


 二人とも、とても嬉しそうです。


「チャーニさんはいかがお過ごしでしたか?」


「私? 私はもっぱら家の手伝いをしていましたよ」


 チャーニさんらしいですね。


 また、パンでも買いに行きましょう。


「フィリア様は?」


「私ですか? 私は他の街に見学を少々」


「そうなんですか、私は王都から出たことないから羨ましいですね」


 チャーニさんは顔を輝かせていました。


「……他の街が羨ましいですわね」


「ラザリア様、頑張りましょう!」


 チャーニさんがラザリア様を元気づけています。


「そ、そうですわね。 ありがとうチャーニ」


 明るい雰囲気に戻ったラザリア様。


 二人の距離が近くなっているように感じますわ。


 四人で歩いていくと、前に元気のないルッツさんを見つけました。


「ルッツさん。 ごきげんよう」


「えっ、あっ! ご、ごきげんよう、フィリア様、ラザリア様」


「どうしましたか?」


「いえ、特に何もないです。 無さすぎて気が抜けているだけです」


「あら、実家に帰っていたのではありませんか?」


 ラザリア様が尋ねました。


「勉強はしていましたよ。 後は趣味の乗馬くらいで、それで毎日過ごしていたら、休みが終わってしまいました」


 かなりショックを受けているルッツさん。


 彼女は暇だったのでしょうか、今度どこかに誘ってみましょう。


「そういえばラザリア様は休みはどうでしたの?」


 私はラザリア様だけ何をしていたか聞いていませんでした。


「私ですか? 休みの間、たまにチャーニさんのお店にお邪魔したりしていましたね。 後は今後の予定を組んでみたり……ですね」


「素晴らしいですわ。 今後の予定を立てるなんて、几帳面なラザリア様ならではですね」


 私が感心している横で、複雑な顔をしていたチャーニさんがいました。

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