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17・ラザリアの相談

「はぁ……、この長い休みが恨めしいです」


 そう、休みに入ってからずっと、あのお方に会いたいと思う気持ちが膨れ上がるばかり。


 お茶会に誘ってみたものの、旅行に出掛けているみたいで、連絡の取りようがありません。


 会いたい、お会いしたいです。


 私の理想の殿方。


 フィリア様。


 仲の良いお友達でしたのに。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」


 私はベッドに顔を埋めながら悶えていました。


 あの日からずっと、麗人となったフィリア様のお姿が目に焼きついてしまって、もう離れません。


 学園にいる間は良かったのですが、会えない日が二日以上続くと……おかしくなってしまいそうです。

 

 なぜ貴方は女性なのですか!?


 ……はぁ。


「また、あのお姿になってもらえないかしら」


 そんな事を考えていたら扉をノックと私を呼ぶ声が聞こえてきました。


『お嬢様、ラザリアお嬢様』


 私はベッドから飛び降りて、素早く椅子に腰掛けました。


「ど、どうぞ」


 入ってきたのはメイドのペナでした。


「先ほど変な声が聞こえましたが、何かありましたかぁ?」


「なんでも……何にもありません」


 ペナは軽く部屋を見回してからジト目で私を見ました。


「本当ですかぁ?」


 ペナは乱れたベッドを見ながら「ふ〜ん」と言い、「ま、いいでしょう」と、ベッドを整えてから部屋を出て行きました。


「……はぁ。 驚きました」


 部屋に篭っていては碌でもない事を考えてしまいます。


 なので——。


「気晴らしに出かけますか」


 その時扉がノックされて、ペナが入ってきました。


「お出かけになるならこちらのお洋服がよろしいかとぉ」


 手にはよそ行き用のお洋服が大量に積まれていました。


「……何で今出かけようとしたのにそんなに準備が早いのです? それより、話してもいませんでしたよね!?」


 驚くわたしを気にもせず、


「メイドの嗜みにございます」


 ケロリと言ってのけるペナでした。


 なんですかそれ、怖いのですけど……。


    *


 街には歩いて出てきています。


 護衛の方は、付かず離れず私が見える位置に、常に四人はいます。


 街を歩いていると、とてもいい匂いがしてきて、お腹が可愛らしい音を立ててしまいました。


 匂いに釣られていくと、そこはパン屋で、とても繁盛しているようです。


 私もパン屋に入るために列の後ろへ並びました。


「それにしても、本当にいい匂いですね」


 列は直ぐに進み、お店にはさほど時間もかからずに入れました。


「いらっしゃいませー……って、ラザリア様!?」


 店員の方が、私を見て驚いています。


 ……あら、よく見たらチャーニさんではないですか。


「ごきげんよう、チャーニさん」


「あ、ご、ごきげんよう、ラザリア様」


 チャーニさんの慣れない挨拶、しどろもどろしている姿は可愛らしいですね。


「どうしたチャーニ。 問題でもあったか?」


 奥から男性の声が聞こえてきました。


「あ、問題はないよ。 お父さん」


 父親の声でしたのね。


「友達か? なら休憩がてら二階に行ってきな」


「迷惑でなければ二階に行きませんか?」


 断る理由もないですね。


「ではお呼ばれされますね」


 そうして私はパンを幾つか買ってから、チャーニさんの後をついて行きました。


 二階に上がり、部屋の中央にあるテーブルと椅子があり、私はその椅子に座らせていただきました。


 チャーニさんが飲み物を持ってきてくださり、私はカップに口をつけて喉を潤しました。


「あら、美味しいですね」


 いつも飲むお茶は熱いお湯で淹れてもらっているので、このように冷たくして飲むことはありません。


「お口にあったようでよかったです」


 チャーニさんも向かいの席に座り、お茶を飲んでパンをちぎって口にしました。

 

 私も、先ほど買わせていただいたパンを手に取り、口にします。


「このパンもすごく美味しいですわね」


 私は口に手を当てながら、感心しながらパンを口に運んでいきます。


 カップの中のお茶を飲み終えたら、チャーニさんがお茶を注いでくれました。


「改めてラザリア様の食事姿を見ると、やっぱりお嬢様なんだなって思ってしまいますね」


「どういうことかしら?」


「食事姿も、こう、なんていうか優雅なんですよね。 以前に来店してくれたフィリア様もそうでしたが」


 フィリア様!?


 フィリア様もチャーニさんのお店に来ていたのですか!?


 何と言うことでしょう、同じ場所を共有出来てしまったのですね。


「あの、ラザリア様? どうかなさいましたか?」


 そうだ!


 チャーニさんに相談してみてはどうでしょうか。


 どうしたらフィリア様にあの時のお姿になって頂けるのかを。


「チャーニさん!」


「は、はい!」


「ご相談したいことがありますの、よろしいかしら?」


「そ、相談ですか?」


「相談です」


「私で良ければ……」


 相談相手ができました。


 落ち着け私。


 まずは深呼吸です。


「相談というのは、男装の麗人、あのフィリア様のお姿をもう一度拝見したいのです!」


「……はい?」


「だから、あのお姿をもう一度! もう一度!」


「ラザリア様! 近い、近い!」


 私としたことが興奮のあまり、チャーニさんの顔に迫っていたようですね。


 落ち着け私。


「え……えっと、頼んでみてはどうでしょうか?」


「そんな恥ずかしいことできません」


 両手で顔を隠し、体をくねらせてしまいました。


「ええ……」


「他にはございませんの?」


 チャーニさんは学園で貰った予定表を見ています。


「あ、これなんてどうでしょうか」


「なんですの!?」


「ラザリア様、落ち着いてください」


「……はい」


「一年の演劇会がありますね。 そこでフィリア様に麗人の姿になってもらうのはどうでしょうか?」


 なるほど演劇会ですか。


 それなら無理はないですね。


「チャーニさんに相談して良かったです!」


 チャーニさんの手を取り上下に何度も振り続けました。


「……はぁ」


 チャーニさんはお疲れのようですから、後は私が上手いこと考えます。


 貴方の思いつきは素晴らしいのですよ。


 もっと誇ってくださいませ!

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