↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/56

15・ネタですか

 屋敷に戻る前に、私は書店に寄らせてもらいました。


 先程手に入れた不思議なキノコが気になってしまって、調べてみようかと思いました。


 マイラー先生曰く、薬の材料になるみたいで、鳴らすと魔物が寄ってくる、不思議なキノコです。


 書店に入り専門書がある所へ向かう途中、サシャが集めている悪役令嬢の本がズラリと並べられていました。


 こ、こんなにあるんですか!


 私は飛びつきそうになるのを我慢して、目的の書物を探してみました。


 私はキノコについて書かれている書物を、サシャやマイラー先生に尋ねてみました。


 サシャは知らないみたいですが、マイラー先生は知っていました。


「それなら、コレじゃの」


 一冊の専門書を手渡されました。


 それは、薬草だけではなく、食用になる物まで細かく書かれていました。


 食用だけでもこんなにあるのですか……。


 見ているだけでお腹が空いてきます。


 後は弟のアレスに何か買っていってあげましょう。


 剣術の書物が良いのかもしれません。


 基礎から育てる剣術なる書物を手に取りました。


 ふと、隣の棚を見ると絵本が並んでいました。


 私は気になったので八冊セットのそれも手にしていました。


 後はあれです。


 悪役令嬢の書物です。


 私はその中の一冊を手に、会計をしてきました。

 

 騎士や冒険者たちは、私の邪魔にならないように離れた所から護衛をしてくれていましたが、店内には私たち以外いないのですよね。


 サシャは、私の後から何かを買って、一枚の紙を貰っていました。


 マイラー先生は特別コーナーの中で「うほーっ」と声が聞こえて……詳しくは、私の口からは言えませんね。


 買い物を終えた私たちは、書店を後にしました。


    *


 屋敷に戻った私たちは、キルデ様とクランツ様を交えてお話をすることになりました。


「……という訳で、魔石が集まり、術式も書き終えました」


 キルデ様の説明が終わり、マイラー先生が話し始めます。


「ならば、儂らの役目は終わりじゃの」


「はい、マイラー様にはお世話になりました」

 

 クランツ様はマイラー先生に御礼を述べました。


「なら、これ以上ここに留まると、お主らの邪魔になるので、儂らは明日にでもここを経つことにしよう。 よいかの? フィリア嬢よ」


 マイラー先生が私に話を振ってきましたので、先生の判断に従いますと答えました。


「後は僕とクランツ君の仕事ですよ」


 キルデ様は笑っています。


 そのキルデ様が何かを思い出したように、ポケットから腕輪を取り出しました。


 その腕輪を持って、私のところまでやってきました。


 キルデ様は私の前にひざまづき私の手を取って言いました。


「これは貴方の髪の色と目の色に合わせて作りました。 どうかこの想いと共に受け取って欲しい」


 そして私に腕輪を取り付けました。


「ちょ……え? これは」


 私は突然の出来事に、ときめきと混乱をしてしまいました。


「キルデ主任、貴方まさかフィリア嬢を……」


 クランツ様が驚いています。


「ななな、なんということじゃ! まさかキルデの奴がフィリア嬢を!」


 マイラー先生も驚きを隠せていません。


 私は何も考えられず、ただキルデ様を見つめるだけでした。


「つかぬ事をお聞きします」


 サ、サシャ。


「キルデ様は既に奥様がいらっしゃるのではないでしょうか」


「うん、いるよ。 それがどうかしたのかい?」


 え! 奥様いらっしゃるのに!?


「……それはお嬢様を第二婦人として迎えると?」


 サ、サシャの顔つきが変わり始めてきました。


「何か勘違いをしているのかな?」


 キルデ様、勘違いってなんですか?


「理由を」


 サシャが尋ねました。


「女性に感謝の気持ちを伝え、贈り物する時に、先程のように言うのは常識なんだろ? 僕は親からそう教わったら間違い無いだろ」


 ……はい?


『……はい?』


 この場にいる人全員、私と同じように唖然としてしまいました。


「時にキルデよ。 お主過去にも同じ事をした事はあるのか?」


 マイラー先生が尋ねました。


「ええ、ありますよ。 僕の奥さんに」


 奥様なら、わかります。


「そう言えば、彼女にプレゼントしたら結婚まで凄く早かったな……うん。 翌週には式をあげたんだよな」


「挙式前!? ああ、なんとなくわかったのじゃ」


「マイラー先生、それは……」


 私も気になって聞いてみました。


「こやつ、見てくれと肩書は良いが、研究一筋じゃろ? 親はわかっておったのじゃろ。 こやつ、このままだと結婚もしないで歳をとると。 じゃからあのような事を言ったんではないか?」


「老師、さすがの僕も……いや、待てよ……それ以外知らないな……」


 その場にいた全員が、キルデ様の発言には呆れています。


「キルデよ、お前さんそれを奥さんには言うなよ」


 キルデ様は「何故?」と首を傾げています。


 どうでもいいですけど、私のときめき返してください。


 ……腕輪、貰いますけど。


    *


 多少のハプニングはありましたが、明日には王都に帰ります。


 お嬢様の身の回りを片付けてから私は空いた時間で買った本を取り出しました。


 その時一緒にしまっていたチラシが床に落ちてしまいました。


 拾い上げて見てみます。


 “あなたも作家になりませんか?

  体験、創作、その他。

  作品募集中

  応募先は……”


 作家募集ですか。


 あいにくネタになるような事は……。


 私は先ほどのやり取りを思い出しました。


 ……ネタ、身近にありますね。


 私はドアの向こうにいる、お嬢様に目を向けました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。