14・先生は別格です
うさぴょんが持ってきたキノコをアイテム袋へ仕舞い、もう一箇所の反応のあった場所へ移動しました。
「この下ですね」
先ほどの広場の近くでした。
「では、地面を盛り上げてやるわい」
そう言ってマイラー先生は地面に向かって魔法を使用しました。
「……危ないから少し離れておれ」
その直後、地面が背丈くらいまで盛り上がってきました。
私は識別魔法を使ってみると、丁度盛り上がった中から反応が出ました。
「反応ありましたわ、マイラー先生」
騎士たちが「では我々が掘って行きましょう」と言って、アイテム袋からスコップを取り出し、掘り始めてくれました。
掘り進めていく騎士たち。
「ん?」
ロック隊長が何かに気づいたようです。
「穴があるな」
「穴ですか?」
私もその穴を見せてもらいました。
するとその穴から灰色の長い毛玉が這って出てきました。
私は咄嗟にその生き物を掴み上げました。
「お嬢! いきなり手で掴むなど、毒でもあったらどうなさるのですか!?」
隊長の言葉はもっともです。
私が迂闊でした、反省しましょう。
……しかし、心地よい手触りですわ。
このまま首に巻いたら気持ちがよさそうです。
「これまた珍しいものを捕まえたようじゃな、フィリア嬢は」
マイラー先生が感心しています。
「この細長い毛玉もですか?」
「そうじゃ、そいつは蛇の一種でな、その血は気付け薬の材料としては一級品なんじゃが、なかなか見つからないので希少なんじゃ。 後、毒はないから安心せい」
そうなんですか、私達には必要なさそうですが……、あっ、いつも疲れてるご様子のクランツ様に丁度いいかもしれませんね。
あの方に差し上げましょう。
皮袋の中へ、毛玉の蛇をしまい込みました。
「それにしても、フィリア嬢の識別魔法は面白いものも見つけられそうじゃの」
マイラー先生が面白そうに笑っています。
そして、
「最後にサシャちゃんもやってみるかの。 結界魔法」
話はサシャに振られました。
「お嬢様とのやりとりは聞いていましたから、理解はしたつもりです」
「なら、やって……みるのじゃ」
マイラー先生は話しながらサシャの後ろへと回り込み始めました。
……また始まりましたわ。
マイラー先生が一歩、サシャに近づいた瞬間——。
「ベホッ!?」
変な声と共にマイラー先生が吹き飛ばされて行きました。
「なるほど、これが結界魔法ですか。 便利ですね」
そう言いながら、吹き飛ばされたマイラー先生を見ながら、
「対象としたゴミだけを排除出来るのですね。 これは掃除が捗りますね」
久しぶりにサシャが笑っていますわ。
「な、なんてことじゃ! この中に入れんわい!」
「結界は正常に発動しているということですね。 先生」
サシャが楽しそうに聞いてます。
「うんうん、そうじゃ、成功じゃよ! だから中に入れてくれんかの! さっきのキノコの音色のせいか、魔物が近寄ってくるんじゃ! うひゃー!」
マイラー先生、自業自得とは言え……、哀れすぎますよ。
*
響き渡る爆音。
燃え盛る炎。
魔物たちの雄叫び。
そして、マイラー先生の泣き叫ぶ悲鳴。
……流石マイラー先生です。
悲鳴を上げながらも、魔法で魔物を一掃してしまいました。
サシャも結界魔法を解除しています。
そしてマイラー先生が駆け寄ってきました。
「サシャちゃん酷いよ! 儂、もう少しで魔物の餌だよ!?」
涙ながらに訴えてきたマイラー先生。
「大丈夫ですよ。 先生なら余裕で魔物を蹴散らしてくださると信じていましたから」
サシャは笑顔を先生に向けています。
「そ、そうかのぉ」
「はい。 とても凛々しいお姿でしたよ」
「むほっ! そうじゃろ? そうじゃろ?」
マイラー先生、子供っぽいところありますよね。
あれで機嫌が治るのですから。
いつもこんな感じですから、サシャも慣れた物ですわね。
「マイラー先生、この後はどうなされますか?」
「そうじゃのぉ。 キルデの方も、後は一人で出来るじゃろうて、ぼちぼち王都に戻っても良さそうじゃな」
「ここに来て、まだそんな日にちも経っていませんが」
私はもう少しいるのだとばかり思っていました。
「なに、キルデの奴が知りたがっていたことは全て教えた。 それに、フィリア嬢の魔法を見た時に、何かを感じたらしくてな、仕事が速くなっていったわい」
「私、何かしましたか?」
記憶にありません。
何かしたかしら。
「ほれ、シールド魔法を使ってなんか色々やってたじゃろ?」
……あっ!
思い出しました。
「あ、あれは……その、出来れば忘れていただけたらなぁと……」
「それは無理じゃろ。 あの応用力がキルデの心に火をつけたんじゃからな」
なんということでしょう。
「おかげで儂も付き合わされる羽目になったがな」
わははと笑うマイラー先生。
笑う先生の後ろからキース様たちが歩いてきました。
先ほどマイラー先生が戦った場所を見にいっていたらしいのです。
「ダメだな。 骨すら残ってなかった」
「ああ、魔石も見事に無くなってた」
アラン様とカイ様がそんなことを言っていました。
私はマイラー先生を見ると、先生も聞いていたみたいです。
「す、すまんの。 久しぶりじゃったし、焦りもしたから……ついな」
確かにそこには草すら生えていない焼け野原になっていました。
やはり先生は別格ですわね。
……でも、キノコは危ないから布で包んでおきましょう。




