13・音のするキノコ
マイラー先生の授業の一環で、森へやってまいりました。
移動中の馬車の中で、マイラー先生から完成系の説明を受けてきましたが、上手くできるでしょうか。
サシャは早い段階で理解したみたいです。
私はうさぴょんを冒険者のリリア様とダリア様に預けました。
騎士や冒険者の方たちは少し離れたところで護衛をしてくれています。
「では、始めるとするかの」
マイラー先生が言うと、サシャがトレーにたくさんの魔力回復薬を並べて持ってきました。
「お嬢様、回復薬はご用意してありますので存分にやってください」
……あんなに飲んだらお腹が苦しくなります。
できるだけ早く完成させるようにしましょう。
まず、自分の周りに膜を貼るイメージでしたね。
続いて……。
頭の中で色々術式を構築していきます。
それを広げていくと、私の限界を迎えるわけです。
「ま……魔力がなくなりそうです」
「フィリア嬢の魔力量なら一度だけは発動できるはずなんじゃがな」
マイラー先生は私を見ながら、いえ、魔力量を計っているみたいですね。
「もう少し膜を薄くすると良くなるじゃろ」
薄く、ですか。
「……儂の計算上、フィリア嬢でもいけるはずなんじゃがのぉ。 魔力の使い方か、はたまた別の要因か……なんにせよ、様子見かのぉ」
それから数回試しましたがなかなか上手くいかず、休憩することになりました。
休憩しながら、先程言われた魔力を薄くする練習をしてみたところ、これは上手く仕上がりました。
ここからですね、まずは弾くではなく、何か判別できないかしら……。
試してみましょう。
薄く広げると、なんとか全員入れるくらいには広げられました。
そして、判別です。
私の魔力に反応して、みんなが薄い緑色の膜に包まれた感じに見えました。
そして、騎士の一人の足元に何か赤いものが見えました。
私は騎士の中で唯一の女性であるクリアに声をかけました。
「クリア、足元に何かいますわ」
それを聞いたクリアは剣を抜き、自分の足元に迫る影に剣を突き刺しました。
「これは、毒蛇……」
剣に刺さった蛇を見てから、クリアは私に礼を言いました。
危なかったですわ、ひょっとして赤いものは良くないものなのですね。
いまのやりとりを見ていたマイラー先生が尋ねてきました。
「フィリア嬢、今何をしたのじゃ?」
先生は、どうやら私の魔力を感じ取ったらしいです。
「魔力を薄くして練習してました。 休憩中にごめんなさい」
よくわからない魔法を使ってしまったので謝っておきます。
「いや、謝らんでも良い。 でな、今のおそらく識別魔法じゃろ」
聞き覚えのない魔法ですね。
「結界魔法よりも更に、膜を薄くしないといかんのじゃ」
マイラー先生は顎を撫でながら「うーむ……薄くしすぎたのか、珍しいケースなのかもしれん……」と何か呟いてから聞いてきました。
「よく、その魔法が使えたの」
「今の魔力の使い方だと、また失敗すると思ったので、今度は薄く、そして弾けないまでも、何かわかればいいなと思ってやってみました」
「……普通、それだけで出来んのじゃかな、識別魔法」
マイラー先生は面白そうに笑っています。
「なら結界魔法は宿題ということで、フィリア嬢や、どのくらいの範囲を見れるかな?」
あ、それ私も気になります。
「やってみますわ!」
ふんっと両手に力を込めて、やる気をアピールします。
「いきますわ」
私もマイラー先生も休憩中ということを忘れ、私は魔力を展開しました。
マイラー先生も私の後から同じように魔力を展開しています。
私は限界を感じ始めたので、魔力を広げるのをやめ、判別出来るように魔力を注いでいきます。
「ふむ、フィリア嬢の範囲はおよそ五百メルダというところか、後は精度じゃな」
私も精度が気になります。
自分の少ない魔力でどこまでわかるのかしら……。
集中して識別していたら、不思議な反応が二箇所から現れました。
「マイラー先生、変な反応があります。 不思議な反応ですわ」
「ほう、どんなじゃ?」
「緑とも赤とも言えない……、灰色っぽいですわ」
「はて? そんな反応、記憶にないわい」
マイラー先生にもわからないことがあるのですね。
「ちなみにどの辺りからかな?」
「一つは地面の中で、もう一つは大きな木の根のところですわ」
私は歩き出し、少し離れた場所の大きな木のところへやってまいりました。
「ここですね」
木の根に着いた時、リリア様が持っていた籠の中からうさぴょんが飛び出し、木の根の隙間へ入って行ってしまいました。
「……流石にここには入れませんね」
どうしようかと考えていると、木の根の奥からガランガランと音が近づいてきます。
木の根から、音と共にうさぴょんが飛び出してきて、口に何か咥えていました。
うさぴょんは咥えていたものを地面に置くと再び木の根の隙間へ入って行きました。
私はそれを手に取ってみるとガランと音を立てました。
「なんですか? これは」
「ほほぉ、珍しいの。 ガラガラキノコじゃな」
マイラー先生が言うには珍しいものだそうです。
「でも、こんなに音がするのでは、すぐに見つけられるのではないでしょうか?」
私は手にしたキノコを鳴らしながら聞いてみました。
「そうでもないんじゃ。 こうやって生えているところから取ると鳴り出すのじゃ」
「珍しいですわね」
「うむ、薬の材料にもなるのじゃが……、厄介なのは近くにいる魔物を呼び寄せるのじゃ」
「……はい?」
その言葉に護衛の方たちも驚いていました。
手にしたキノコを鳴らしながら……。
ガラン。
ガラン。
鳴らすたび、その間にうさぴょんは五つくらいキノコを運んできて、その一つを美味しそうに食べ始めていました。
うさぴょん、キノコ食べるんですね。




