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10・サムズアップ

 俺たちは依頼を終えてアルベンの街に戻ってきた。


「フィリア様……その、角うさぎは本当に連れて行くのですか?」


 カイが困惑しながら尋ねる。


「もちろんですわ! うさぴょんは私の癒しです」


 ご満悦のフィリア様。


 そんなやりとりを見ながらサシャさんを見たわけです。


 街の入り口で止められなければいいけどね。


「止まれ!」


 門兵が二人で、俺たちの前に立ちはだかった。


 やっぱり止められるよな。


「俺たちは怪しいものじゃないです。 依頼で外に出ていたんですよ」


 そう言いながら、俺はギルドカードを取り出し門兵に見せた。


「……ランクC、名前はキースか」


「で、です」


 門兵は俺ではなく、俺の後ろを見ていた。


 俺の横にいたフィリア様が少し大きな声で言った。


「わ、私のうさぴょんは関係ありませんわ!」


 フィリア様……多分あなたではありません。


 俺の後ろには、


 サーベルタイガーの首を担いだサシャさんがいるんですよ……。


 ちなみに顔の大きさはサシャさんを一飲みに出来るくらいの大きさだ……。

 

    *


 ギルド内は騒然としていた。


 無理もない……。


 その原因が今、


 受付で依頼達成の報告をしているのだから。


「どうですか? 色々な薬草をお持ちしましたのよ」


「……そうですね。 必要なのはこちらの束ですね」


 受付嬢さん、フィリア様の対応が疎かになってるよ。


 気持ちはわかるけどさ……。


 その隣にいるのはやっぱりサシャさんだ。


 首を担ぎながら依頼達成報告してるんだからな。


「あ、あの……本当にそれを討伐されたのですか?」


 わかるよ受付嬢さん。


 周りで見ている冒険者たちも「あれ、サーベルタイガーだよな」とか言ってるし。


 俺も知らなければ同じようなことを言ったと思う。


「間違いありませんよ? 容量の都合で首は出したままですが、身体はアイテム袋に入っています」


「で……では、こちらで全て買取ですか?」


「魔石だけは売れません。 後は買取でお願いします」


「は……はぁ」


「できれば急ぎでお願いします」


「わ……わかりました」


 サシャさんは依頼達成の報酬と解体依頼の書類を受け取っていた。


「キース、私たちの報告も終わったわよ」


 依頼達成報告をしてくれていたリリアが戻ってきた。


「あ……ああ、ありがとうリリア」


 ダリアがフィリア様のところへ向かって行った。


「……すまないが、このお嬢様が抱えている子の登録もしてやって」


 ダリアの声で正気に戻った受付嬢は慌てて処理を開始した。


「今すぐ登録しますね」


 書類をまとめ出す受付嬢。


「ありがとうございます。 ダリア様」


 フィリア様はダリアに礼を言い、ダリアは角うさぎを撫でていた。


 それを見ていた受付嬢は、


「随分と懐かれていますね」


 とても触りたそうな顔で見ていた。


 サシャさんの方は……。


 今から裏手の解体所へサーベルタイガーを持ち込むらしい。

 

「なぁ、俺たちも見に行かないか?」


 俺の提案にみんなも乗り気だ。


 フィリア様も登録が終わったみたいだ。


 それに受付嬢が嬉しそうに角うさぎを撫でている。


    *


 うさぴょんの登録も終わり、キース様たちはサシャの後をついて行くようです。


 私とダリア様も追いかけるようについて行きます。


 解体所は初めて入りました。


 壁にはハサミや何かを引き抜く棒みたいな物、


 それに色々な道具が置かれていますね。


 中にはお母様の隠し部屋に置いてある道具もありますね。


 ……何に使うのかしら。


 サシャが解体所の人と話をしています。


「こちらにお出しします」


 アイテム袋からサーベルタイガーの体を取り出しました。


「すげー! 本物だよ」


 周りの方たちが驚いています。


 サシャが受け取っていた書類を、体の大きな所員の方に渡しています。

 

「少し待ってろ」


 それだけ言うとサーベルタイガーの身体を確認してから解体を始めましたわ。


 別の職員の方が私の方へやってきました。


「お嬢さんの持っている角うさぎも解体ですかね」


「ち、違いますわよ! うさぴょんは違いますの!」


 ほら、うさぴょんも怯えているじゃありませんか。


「キュ……ギュー……」


 私はうさぴょんを力強く抱きしめ、庇いながら解体現場の恐ろしさを身をもって感じました。


「フィリア様、そんなに強く抱いたら、うさぴょんが苦しんでいますよ」

 

 リリア様の言葉にハッとなり、うさぴょんを見ると足がピクピクしていました。


 その時解体場で大きな歓声が上がりました。


「この魔石は凄い大きいな」


 解体にあたっていた大きな人が、魔石を掲げていました。


 あの大きさは所員さんの頭くらいありますね。


 それに、色も綺麗ですね。


 とても恐ろしい魔物から出てきた物とは思えません。


 その魔石をサシャが受け取りました。


「久しぶりにいいもの見させてもらったぜ、メイドさんよ」


 所員さんはいい笑顔をサシャに向けて親指を立てています。


 サシャも無言で親指を立てていました。


 ……そういうしきたりとかがあるのですか?

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