8・うさぎさん
魔力回復薬の空き瓶も数本綺麗に並び、薬草採取も終わりました。
サシャが確認をしてくれています。
「お嬢様、これは毒草ですよ。 それとこちらは……しびれ草ですね」
サシャは種類別に分けてくれています。
「では、ここに分けておきましたから、その草の山から分けてみてください」
「わかったわ」
私はサシャが種類別に置いてくれた草を同じように分けてみました。
「どうですか?」
サシャは「ふむ」と言いながら分けた薬草を確認してくれています。
そんな時、仕分けの済んでいない草の山から一匹のうさぎさんが飛び出してきました。
私はとっさに指先に小さなシールドを展開しました。
うさぎさんは私の指先で角が止まり、弾かれていきます。
私は指先を見て思いました。
指先だけなら魔力消費が少ない……と。
うさぎさんは再び私に突進してきましたが、私の指先で弾かれました。
「お嬢様、一体何を?」
サシャも驚いていました。
「とっさに指先だけにシールドを展開しましたら、おもいのほか魔力が消費しませんので、使えるかなと思いましたの」
サシャは感心したように私の指先の小さなシールドを見ていました。
「流石はお嬢様です。 これは色々使えますね」
そんな事を言い出したサシャです。
その間にもうさぎさんは、私に突進を繰り返しています。
「なんていうか……リズミカルで楽しくなってきますね」
ズンッ パンッ ズンッ パンッ
その繰り返しです。
——そして何度目かの突進で、
ポキンッ……。
うさぎさんの角が、真ん中から折れてしまいました。
「だ、大丈夫でしょうか?」
次第にうさぎさんは動きが遅くなり、最終的にお腹を出してひっくりかえってしまいました。
「あら、かわいいですね」
お腹を見せているうさぎさんのお腹を、私はわしゃわしゃと撫でてみました。
うさぎさんは暴れることもなく、
私のわしゃわしゃ攻撃を受け入れていました。
「今度は両手で行きますよ。 それー」
わしゃわしゃわしゃわしゃ……
うさぎさんは「キュー……」と鳴きながら、攻撃してくるわけでもなく体をよじるだけでした。
「フィリア様! 危ないですよ!」
そんな時離れた所からキース様の声が聞こえてきました。
「キース様、依頼は終わったのですか?」
私は声のした方を向いて話しかけました。
「それは滞りなく……じゃなく! 何をやっているんですか!?」
キース様たちは、うさぎさんをわしゃわしゃしている私を見ながら言ってきます。
「かわいいですよね。 ほら」
私は伸びきったうさぎさんを抱きかかえて、キース様たちに見せました。
「……普通、角ウサギはそんな風にならない」
ダリア様がぼそりと言いました。
「お嬢様」
サシャが私に話しかけてきました。
「なに? サシャ」
「キース様たちが戻られたので、私も依頼を片付けてきてもよろしいでしょうか?」
そうでした。
サシャも何か依頼を受けていましたね。
「わかったわ。 私はキース様たちとここで待っていますわ」
「では、すぐに戻りますので」
サシャはその場から忽然と姿を消しました。
「見えなかった……」
カイさんがサシャの動きを見ていたようですが、見えていなかったようです。
私は抱きかかえたうさぎさんを、指でこちょこちょしていました。
「フィリア様? その角ウサギは危険なんでは?」
リリアさんが私の抱えているうさぎさんを見て身構えています。
「おとなしいですわよ?」
みなさんが変な顔で見ています。
私はひらめきました。
「触ってみますか?」
どうです?
かわいらしいうさぎさんですよ?
男性陣は少し引いていましたが、リリア様とダリア様が興味があるみたいで、恐る恐る手を伸ばしてきました。
リリア様とダリア様がうさぎに触れた瞬間――。
「もふもふだわ……」
「……こ、これは」
二人は無言でうさぎさんをわしゃわしゃと触りだしました。
「癖になりそうね」
リリア様が真剣な顔で言いました。
「……確かに……止まらない」
ダリア様は顔が緩みそうでした。
うさぎさんは「キュキュキュキュキュ……」と鳴きながら二人のわしゃわしゃを受け入れていました。
「お、おい……大丈夫なのか?」
アラン様が警戒しながら聞いてきました。
「それ、テイムされているんじゃないか?」
ミシェッド様がそんな事を言ってきました。
聞いたことがあります。
魔物の中にはお仲間に出来るのがいるとか。
私はうさぎさんの顔を自分に向けて聞いてみました。
「私と一緒に行きますか?」
言葉が分かるとは思えないのですが……。
しかし、うさぎさんは返事を返すように鳴きました。
「キュッキュッキュッ」
かわいいです。
「やはりテイム出来てるみたいだな」
ミシェッド様は良く分かりましたね。 凄いです。
「ミシェッド。 そんなことあるのか?」
キース様がミシェッド様に確認しています。
「文献で見た事があるんだ。 圧倒的実力差がある時、稀に魔物が主人と認めるときがあるって」
そうなんですか。
「ということは、フィリア様はその角うさぎに認められたって事なのか」
キース様の言葉に他の方も納得したようでした。
「そうなのですか?」
私はうさぎさんに話しかけてみました。
答えは「キュー」でした。
そんな話をしていた時、サシャの向かった方から大きな音が聞こえてきました。




