7・薬草採取
「では、出発しますわ!」
受付で採取用の袋を受け取った私は、元気いっぱいにギルドを出ました。
「……フィリア様、張り切ってる?」
「はい! 初めての依頼なので楽しみです!」
あまり話さない印象のダリア様が話しかけて来ました。
「フィリア様は体力的には大丈夫なのですか?」
アラン様が聞いて来ましたが、答えたのはキース様でした。
「問題ないと思うぞ。 試験の時は普通にウルフ二匹相手していたからな」
「そうね。 あの体捌きは見事でした」
リリア様まで、褒めていただくのは嬉しいですわね。
「次はお嬢様に実践していただきましょうか」
サシャ!?
「サシャさん、それはどうかと……」
カイ様、そこは頑張って言ってやって下さい!
「大丈夫です。 お嬢様と同じ魔力量で実演しましたから。 ですよね? お嬢様」
サシャの中で何かのスイッチが入りましたわ……。
「は……はい」
今のサシャに私が何を言っても無駄なので、やむなく返事をしました……。
「なぁキースよ、あのメイドさん止めなくていいのか?」
ミシェッド様!
その調子でキース様を!
「ミシェッド……俺はあのメイド、サシャさんを止める自信はカケラもないぞ」
「……そうか」
二人とも諦めるの早すぎですわ!
*
「フィリア様の依頼なら、この辺りがいいんじゃないですか?」
キース様が辺りを見回して言いました。
「そうだな。 見通しもいいし、良いんじゃないか?」
アラン様や他の方も賛同しています。
そうですよね、見晴らしも素晴らしいですわ。
「いえ、もう少し奥の方がいいでしょう」
サシャだけ違いました。
「サシャ、他のみなさんも言っておられますし」
サシャは私に向き直り、
「いいですかお嬢様。 仕事は効率的に行うのです」
「そ……そうですわね」
「そう言うわけでみなさん、奥へ向かいますよ」
なんだかサシャが仕切り始めました。
他の人は……黙って頷いて、着いて行くのでした。
林の中をしばらく進みましたら、開けた場所へ出ました。
「お嬢様。 この辺りがよろしいかと存じます」
「確かに良さげな場所ですわね」
草は膝くらいまで生えていますが、良さげな薬草も多そうです。
「お嬢様、この辺りにはうさぎが出ますので、気を抜かないで下さいね」
「わかったわ、サシャ」
そう言って草むらに入ろうとした私に何か言おうとしたキース様が、サシャに止められているようでした。
「どうしましたか?」
「彼らはこれから依頼をこなして来るようです」
それにしては凄く驚いているように見えるのですが……。
「わかりましたわ。 私も素早く薬草を採取いたしますわ」
草むらに入る前に、ふと結界魔法を思い出しました。
「……やってみようかしら」
腕から護身用の棒を伸ばし、先端に薄い輪っかにした結界を固定し、棒の先を地面に向け、輪っかを回転させてみました。
シュババババ……
「いい感じで刈れますわね」
腰も痛くないし、とても良い考えでしたね。
振り返ると、サシャやキース様たちまで変な顔でこちらを見ています。
なんでかしら?
それより楽しくなって来たので、邪魔な草取りから始めますわ。
結界の輪っかが回転し、草が綺麗に刈れていきます。
シュババババ……
しばらく楽しんでいたら草むらから何かが飛び出して来ました。
私は飛び出して来た物を素手で掴み、見てみました。
「角が生えたうさぎですか? 危ないですわね」
私は角を地面に差し込んでおきました。
角うさぎは地面に刺されてジタバタするだけです。
「草刈りが終わるまでそこで待っていて下さいませ」
その後も、たくさんのうさぎが出て来たので、草刈りの邪魔にならないように、地面に刺してあげました。
*
「サシャさん……俺たちは何を見せられているのかな?」
俺の認識がおかしいのだろうか。
「キース様、お嬢様は薬草採取をしているだけですよ」
サシャさんの言うことが理解できない。
角うさぎだって危険な魔物だ。
それを素手で掴み取るお嬢様もお嬢様だ。
今日、俺の中のお嬢様とメイドの認識がおかしくなり始めている。
「さあ、ここは私が見ていますから、キース様たちも依頼をこなして来て下さい」
「あ……ああ、行って来ます」
俺たちは依頼をこなす為に奥へと向かった。
「あのお嬢様とんでもないな。 特に魔力操作が」
ミシェッドが感心したように話す。
「魔力操作?」
アランが尋ねる。
「ああ。 お嬢様から感じる魔力は少ないが、なんて言うか、少ない魔力を効率よく使っているんだよ」
「……わかるのか?」
ダリアも気になっていたようだ。
「魔力の無いアランとダリアにはわからないと思うが、あれは常に訓練をしている。 俺もやってはいるがあそこまでには至ってない」
ミシェッドが他人を褒めるなんて珍しいな。
「それより早く依頼をこなして戻ってお嬢様を護衛しようよ」
リリアがそう言うと全員が頷き、依頼の獲物と魔石を狩り始めるのだった。
俺は買ったばかりの盾の性能を確かめていた。
「これ、凄いな。 魔力を流すと盾に伝わる衝撃が和らぐぞ」
そばで聞いていたアランが「サシャさんに感謝だな」と、獲物を借りながら言ってきた。
本当にそう思う。
仲間と共に獲物を狩る。
ある程度狩りをしてから魔石を回収してお嬢様のいる所に戻ると、異様な光景が出来上がっていた。
地面に刺されて力尽きかけている角うさぎの山、その奥に積まれた雑草の山。
そして薬草を並べているお嬢様とサシャさん。
さらにお嬢様に飛びかかっている一匹の角うさぎ……。
「ど……どういう状況だ?」




